それでも三分の一は固いトランプ支持
- 2020年 10月 20日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
アメリカの有権者数は実質どれくらいなのか? アメリカの国勢調査では、選挙権取得年齢の十八歳以上のすべてを勘定しているから、ざっと二億五千万人ほどになる。そこには永住権は持ってるけど、選挙権は持っていない人もいるし、犯罪歴があって投票権を剥奪された人たちもいて、一〇パーセントほどの人には投票資格がない。さらに投票資格を持っていても、事前に有権者登録手続きを済ませなければ投票権を得られないというやっかいな仕掛けがある。この仕掛けが黒人や中南米系やアジアからの移民の投票を抑え込んできた歴史がある。端から選挙なんて面倒だという人もいるだろうから、今度の選挙の有権者数はざっと二億人程度になるのかと想像している。
十月十三日付けNew York Times OpinionでPaul KrugmanがFiveThirtyEight(調査会社)の大統領選挙の予想を伝えている。オハイオやウィスコンシンにペンシルベニアやミシガンやフロリダなどの接戦州でもバイデンの優勢が伝えられているが、トランプが再選される可能性は十三パーセントに過ぎないというのには驚いた。
英語の記事を読むまでもない。下記urlを開いてずっと下に下がっていけば、トランプとバイデンの似顔絵付きの図で示されている。それにしても十三パーセント、低すぎやしないか? 左傾の予想に過ぎないのではないかと心配になる。
https://projects.fivethirtyeight.com/2020-election-forecast/
ご存知のようにミシガン州知事を誘拐しようと計画していた極右集団が逮捕された。取り調べの過程でヴァージニア州知事の拉致も計画されていたことが明るみにでてきた。コロナウィルスの蔓延を抑えるべく発令されたロックダウンが自由を侵害するとしてというが、世界のテロ組織御用達の軍用自動小銃AK-15を装備して何が自由だという気がする。
呆れたことに、まだ呆れる自分に呆れるが、トランプがミシガンを解放しろ、ヴァージニアを解放しろと極右集団を鼓舞している。
「Trump cheered on the organizers and attendees, tweeting, “LIBERATE MICHIGAN!” and “LIBERATE VIRGINIA」
かなりの数のニュースメディアが伝えているが、分かり易いのを一つ上げておく。
「Far-Right Extremists Allegedly Plotted to Abduct Another Governor」
Far-Right Extremists Allegedly Plotted to Abduct Another Governor
投票日の十一月三日まであと二週間というところでトランプの軍資金が底をついてきた。
娘婿のKushnerが「オヤジには金がない」と心配していたことが選挙戦最後の最後のところでガス欠となって表れてきた。
Los Angeles Timeが十月十一日付けの記事でトランプの苦境を伝えている。
トランプが予定していたテレビ/ラジオ広告をキャンセルし始めた。先週の月曜日の段階でというから、十月十二日時点でのバイデンはトランプの$18 millionに対して倍の$36 millionをテレビ/ラジオ広告に使っている。
「Strapped for cash, Trump yanks TV ads in key states as Biden spending surges」
「Trump stopped all of his television and radio advertising in three states and substantially reduced it in four others in recent weeks after his lackluster fundraising left him unable to match a surge in spending by his Democratic challenger, Joe Biden」
「In the week that will end Monday, Mr. Biden’s $36 million in TV and radio spots overall is double Mr. Trump’s $18 million, according to Advertising Analytics, an ad tracking company」
第二のドイツ銀行も現われそうもないし、財界もバイデン以降のことに余念がない。共和党の改選上院議員もトランプと距離をあけだしたし、金に行き詰って濃くなる一方の敗色。負ければ借金と訴訟の山が待っている。
もともとオカシイのがコロナウィルの病み上がりのせいか荒唐無稽の嘘八百がいままで以上に常軌を逸してきた。手負いの獅子のようになにをしでかすか、いいだすかわかりゃしない。
選挙集会でQAnon(極右の陰謀論)をごちゃごちゃ言ってたかと思ったら、唐突に「オサマ・ビンラディンは生きている」「殺されたのは替え玉だ」とツイッターで騒ぎだした。
「Trump digs in on conspiracy theory over bin Laden raid」
https://thehill.com/policy/defense/521511-trump-digs-in-on-conspiracy-theory-over-bin-laden-raid
当然軍関係者はふざけるなって怒ってる。諜報機関もまともな行政機関も巷の人たちも呆れかえっている。
良識あるアメリカの有権者もいい加減、三行半だろうと思ったが、良識もいろいろあることを再確認させれた。
ここまでいっても、驚くことにか驚きゃしないとも言えるが、The HILLが十月二十日付で、アメリカの立派というのか頑迷なというべきか、有権者の三分の一(30~35%)は固いトランプ支持で変わらないと伝えてきた。
「A minority of the nation — somewhere around 30 or 35 percent — adores Trump. Those voters’ support for him is apparently unshakeable」
「The Memo: Trump’s second term chances fade」
https://thehill.com/homenews/the-memo/521503-the-memo-trumps-second-term-chances-fade?rnd=1602893182
なぜ?
一年ちょっと前のGallupの調査報告が三分の一の社会背景の一端を説明している。
「40% of Americans Believe in Creationism」
https://news.gallup.com/poll/261680/americans-believe-creationism.aspx
なんだかんだ細かなことはあるが、一言で言ってしまえば、先端科学技術を誇るアメリカで、四十パーセントもの人たちが、今の世界は神が一週間で作り上げたもの――創世記を信じている。そのすぐ先には白人至上主義が、そして
優生思想がまかり通る社会常識がある。
まったくどうしようもないヤツらだと思っていたら、LGBTQ+のサイトThemが十月十三日付けの記事をニュースレターにつけて送ってきた。
「Biden Promises To Have the Queer Community’s Back in Coming Out Day Tweet」
The former Vice President promised to support LGBTQ+ folks both in and out of the closet.
バイデンがLGBTQ+の人々に対する差別に反対する。少数者(マイノリティー)が大勢の人たちと一緒に平和に暮らせる世界を目指すと言っている。
投票日まで二週間のこの時期にLGBTQ+の権利を主張すれば保守キリスト教徒の反感をかう。中南米からの移民にはカソリックも多いだろうから票がトランプに流れる心配もある。反感をかうかもしれない有権者の数とLGBTQ+とその人たちの権利をと思う人たちの数も勘定してのことだろうが、次の社会のありようを見据えた勇気のある行動であることだけは間違いない。
アメリカ社会がトランプという暗黒の中世社会から次の社会に抜け出ようとしているようにみえる。期待しすぎないようにとは思うが期待してしまう。
2020/10/19
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10215:201020〕
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