Fuckingも今年いっぱい
- 2020年 12月 14日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
今年もあとわずか。新型コロナウィルス禍に明け暮れた一年だった。やっとワクチンもできて、来年には落ち着いた生活が戻ってくると祈っている。何か明るい話はないかとあさってみたが、出てきたのはこんな三面記事。ちょっとした気分転換にはなるかもしれない。
ザルツブグルから北北西に三十キロほどいった、ドイツとの国境に近いところに「Fucking」という名の村がある。Fucking村、Wikipediaによると人口百人ほどの寒村で、なにがあるとも思えない。ところが村の名前、Fuckingのせいで、インターネットの普及にともなって、多くの人に知られるようになった。fucking、ドイツ語では特別な意味はないらしいが、英語では知らない人はいない。
知られるようになったまではいいが、物好きな人たちやいたずら好きな人たちのなかには、わざわざ村まで来て道路にたててある村名の看板もっていってしまうのがいる。盗まれては新しく看板を立てて、また持っていかれては立て替えしてを繰り返してきて、ついに千年もの歴史ある村名を「Fugging」に変えることにした。
もっていく人たちの気持ち分かるような気がするが、寒村にしてみれば新たに看板を立てる費用もバカにはならないしで、いっそのこと名前を変えてしまえばというのも分かる。でも「Fugging」ではただの村の名前でなんの妙味もない。
つい手を出したくなってしまう「Fucking」がなくなってしまうのは、ちょっともったいない気もする。盗んでまでという人気があるんだったら、サイズを原寸、ハーフ、クオータの三種類もそろえて、観光客の入ってこれない所に設置しておいて、一年もの、三年ものと使用感もだしてインターネットで販売したら、村の財政の足しぐらいにはなるんじゃなかと、俗なことをかんがえてしまう。
盗みにくるったって、時間だけじゃなくてガソリン代もかかる。手間暇とコストを考えたら、少々高くても買う人いるんじゃないか。ましてこの類のことには目のないアメリカ人、よろこんで買うのはいくらもいそうだが。
一一月二六日つけのDie Weltによると、来年一月一日からは「Fugging」になってしまう。「Fucking」の道路標識を見れるのもあと二週間ほど、見納めに下記からどうぞ。
<FuckingまでならまだしもMatanzasとなるとどうにも>
キューバのマタンサス州(州都マサンタス市)、ハバナから東へ八十キロほどいった、キューバでもっとも工業化の進んだ州だが、名前がちょっとすごすぎる。マサンタス、スペイン語のmatanzasを英語にすればmassacre、そう日本語に訳せば「虐殺」になる。
スペインからの侵略者がキューバ全島を焼き払って全面砂糖キビ畑にした。そのせいで、猛獣もいなければ、猛禽類も蛇もいない。土着の動物で残っているのはワニと蚊ぐらいといわれている。原住民も虐殺されて末裔は限りなくゼロ。今のキューバの人たちはスペインからの入植者かアフリカからの奴隷の末裔。州や町の名前としてマサンタス=虐殺が残っているが、それはキューバ全島にいえることで州や町にかぎったことじゃない。
「Fucking」の看板をお持ちかえりと思う人はいるだろうが、「Matanzas」の看板もという物好きはなかなかいない。
2020/12/12
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10363:201214〕
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