ミャンマー、軍政復活反対デモ大規模に!
- 2021年 2月 8日
- 評論・紹介・意見
- ミャンマー野上俊明
(2月6,7日のミャンマー、日本におけるクーデタ抗議への動きをメディアの報道から、以下簡単にピックアップしました)
国軍は2月1日にクーデターで権力を掌握し、文民政府を打倒してスーチー国家顧問やウィンミン大統領を拘束。二人についてはそれぞれを国内法違反で訴追し、裁判にかけるとしている。スーチー氏は輸入法に違反して違法なラジオを所有、ウィンミン氏は、コロナ防御の市民保護法に違反している嫌疑だという!「政治犯支援協会」によると、2月5日の時点で150人以上が逮捕されたもよう。
2月5日、国連報道官によると、国連事務総長の特使は、国軍の指導部とクーデター後、初めて接触して電話会談を行い、行動を非難した上で、拘束された人々の解放を求めたという。またバイデン大統領は、クーデタの首謀者には責任を取らせると強い警告を行なった。
ヤンゴン市庁舎前 小銃を構える武装警察隊 AFP
ミャンマー全土で週末から本格的な国民の抗議行動が始まっている。NGOの職員によるとミャンマー南部のモーラミャイン市で約400人規模の抗議デモが行われた。地元メディアは7日のデモに5万人以上が集まったと報じており、クーデターが発生した1日以降、最大規模となった。治安部隊は道路を封鎖するなどデモを封じ込め、状況は緊迫している。タイ国境の町ミャワディでは、警官が空に向けて威嚇発砲を行い、緊張が高まった。負傷者は出ていないという。
接続が遮断されていたインターネットは7日、接続可能になった。
2/7 ヤンゴン市内での10万人抗議デモ ロイター電
ミャンマー第二の都市マンダレー、首都ネイピードウでも抗議行動が行われた。ヤンゴンでは、ヤンゴン大学付近で3000名の学生たちが、NLDの党旗をかざしシンボルカラーである赤のTシャツを着て抗議行動を行っている。多数の機動隊が大学周辺の近くの道路を封鎖し、2つの放水砲が使用できる状態 ヤンゴン市内、ダウンタウンでも国軍独裁打倒を掲げて大規模デモ行進。多くの抗議者が、「3本指の挨拶」をして抗議と連帯の意思を表した(隣国のタイでは、2014年5月のクーデター以来、抵抗の兆候としてのジェスチャーが人気を博している)。 特筆すべきは、88反乱の学生英雄だったミンコーナインがデモに参加したこと。ミンコーナインは、NLDとも距離を置き政治活動から身を引いていたが、本来であればスーチー氏に続く人物として期待されていた。今後指導的役割を演じるかどうかまだ不明という。
2007年の僧侶によって行われた「サフラン革命」との違いが明らかになってきた。あのときは行動の主体は仏教僧侶たちで民衆はわき役に過ぎなかったので、僧侶たちが弾圧されてあとが続かなかった。しかし今回は病院や大学のスタッフや学生が、ソーシャルメディアを使用して市民的抵抗行動を呼びかけ、工場労働者や公務員がデモに参加した。ヤンゴンの国立病院の医師たちや教師が職場放棄を宣言したり、医療従事者が様々に抗議の意思を表明している。88年の時、学生に続いて公務員が職場を拠点に大衆行動に参加し、ネウイン独裁政権を打倒した(ネウイン社会主義の下、職場はすべて国営で、働く人はすべて公務員だった)。今回引き続き公務員や工場労働者、都市の中間層が大衆行動に参加するならば、あの時と似た状況になる可能性がある。ただ、スーチー政権の下で、NGOの市民活動が活発化したとはいえ、労働組合、同業組合、農民協同組合、学生組合など民主化の柱となるべき組織がまだ十分育っていないことと、民主化を主導する指導層が弱体であることを考えると、今後については必ずしも楽観はできない。国軍は世界「有数」の残忍な軍隊であり、いざとなったら何をするかわからない怖さがある――ロヒンギャ・ジェノサイドを敢行したことを想い出されたい。国軍には孤児たちを集めて特殊訓練した歩兵部隊があり、これが88年のとき民衆弾圧に狂奔したという。彼らは肉親の情愛を知らないので、いくらでも残忍になれると噂されていた。当時を経験したミャンマー人の日本人妻の方々は、子どもたちがいる民衆に向けて機関銃を平気でぶっ放してきたと証言している。
<日本各地でも在日ミャンマー人抗議行動>
●東京では 連日在日ミャンマー人の集会やデモが行われている。国連大学前、ミャンマー大使館前、高田馬場駅前などで3000人規模の街頭行動が続けられている。
●7日、静岡市葵区にはSNSを通じてミャンマー人約500人が集まり、スーチー国家顧問らの即時解放を求めて署名活動を行なった。
●国軍のクーデターに抗議するデモ行進が7日、名古屋市中区栄であった。東海地方に住むミャンマー人約1000人が参加し、軍政反対を訴えた。
●沖縄県内在住のミャンマー人らが5日、那覇市内で緊急会見を開き、ミャンマーでの軍事クーデターを非難し、国軍が拘束したアウンサン・スーチー顧問らの解放を求める声明を出した。
●ミャンマー国軍によるクーデターに抗議しようと、関西や中国地方などに住むミャンマー人らが7日、神戸市中央区のみなとのもり公園で集会を開いた。会員制交流サイト(SNS)などで連絡を取り合って約500人が集まり、アウンサン・スーチー顧問らの解放などを訴えた。
このほか福井でも在住ミャンマー人による抗議行動が行われたという。
<潮目が変わりつつあるという外電>
ドイツの日刊紙Tageszeitungの本日2/8版で、国軍がNLD議員や地方の首長らに厳しい取り扱いをしていないことや、街頭行動に対して鎮圧を控えていることの背景を分析している。それによると、今回のクーデタを主導しているのは国軍の最上層部であって、中将以下は必ずしも乗り気ではないこと。また現在コロナのために経済状況は悪化しており、西側諸国を敵に回すと頼るのは中国以外にはなくなるので、柔軟に対応しようとしていること。さらには抗議行動が先週中に4つの民間省庁に拡大し、農業、エネルギー、健康、教育の各省庁はサボタージュで機能を停止していること。治安部隊内でも反対の動きを封殺するため、厳しい懲戒処分が行われているという情報がある。
したがって今西側諸国がやるべきことは、中下級クラスの軍人たちや警察官にクーデタでだれが得をすまたるか―腐敗した軍上層部やクローニーそして中国―を訴えて、軍隊内の亀裂を拡大することだと述べている。詳しくは割愛するが、そこで強調しているのは、クーデタ軍のインターネットやSNSの遮断に対する対抗措置への援助であり、大衆動員の最大の武器を確保することである。またなかなか困難であろうが、西側が主導権を握り、クーデタに反対して日本、韓国、インドと共同して、国軍とそのクローニーに対し経済制裁を発する必要がある。最後にこのクーデタを無血で終わらせるため、国軍に政治的オプションを与える必要があるとし、緊急事態宣言を裁判所に命じて取り下げさせ、またミンアウンライン最高司令官は規定通り3月で定年退職することによって、クーデタ以前の憲法の枠内に事態を戻すことだとしている。失敗した軍事クーデタは、ミャンマーの民主化と開放が不可逆的であることを証明したことになり、NLDに将来的展望を与えるというメリットをあたえることで、NLDも納得するだろうとしている。
この見解にどれだけ信憑性があるのか、筆者にはにわかに判定しがたいが、確かに根拠なしとはしがたいものがある。しかし最も大事なことは、決起した国民に不退転の覚悟があるかどうかである。二度と軍政に戻るのはごめんだ、将来世代のためにここは絶対に退かないという一青年の談話が、どれだけみなに共有されているかである。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10537:210208〕
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