現内閣広報官・山田真貴子氏に関する新たな情報
- 2021年 2月 27日
- 時代をみる
- 川畑泰高嶋 伸欣
皆さま
目下、世間を騒がしている菅首相長男所属企業による官僚接待問題で、現内閣広報官・山田真貴子氏の高額接待が新たに注目されてきました。贈収賄事件にも匹敵する、との指摘もあります。
そして、その山田氏に関する新たな情報です。
育鵬社版中学公民教科書の現行版『新編 新しいみんなの公民』(2016~2020年度用、今年3月まで使用)の憲法学習の章、「第2節 基本的人権の尊重」「2 法の下の平等」のページに「憲政史上初の女性首相秘書官(2013年)」という仰々しい見出し付きで「安倍晋三首相から辞令を受ける山田真貴子氏」という説明付きの写真が掲載されていることが判明しました(同書64p)。
添付資料左上の写真と説明文をじっくりとご覧ください。
山田氏は、昨年総務省をやめて現在は内閣広報官なので、総務省としては懲戒処分等はできないそうですが、官房長官は「何らかの対応をする」旨、記者会見で明らかにしています。
処分等がどのようなものになるかを見極める必要がありますが、どうなろうとも育鵬社版のこの写真と添えられた説明文は、明らかに山田氏を褒めたたえているものです。
「法の下の平等」という装いながら、第1次安倍政権で総務大臣だった菅氏が官房長官になって、官邸に子飼い官僚を集めるために「左遷」ならぬ「大抜擢」で首相秘書官に送り込んだ剛腕人事を、教科書で華々しく迎合宣伝しているという図式です。
教科書編纂者の中から、ここまで政治権力へのすり寄りを実行するケースが現れたことを如実に示している事例です。
それでも、同書が2015年3月に検定に合格して、2016年4月以来5年間、同書は全国で毎年約6万7千冊が使用され続けてきました。その間、この写真と説明部分が大きく問題にされることもなく、使用最終年の年度末であるこの3月で、学校現場からは消え、物議を醸すこともなく忘れさられるはずでした。
それが、山田氏本人の不当行為によって、同氏賛美を自主的に(?)かって出て演じた人々にその災いが一斉に及ぶことになったのですから、何とも皮肉です。
胡麻をする相手を間違えたゆえの、自業自得の災難とあきらめて下記の問題点への対応にあたることを、それらの人々には求めたいと思います。
当面指摘される問題点は、① こうした事態が生じる可能性を考慮して、教科書検定では「生存している人物を特定できる形での掲載をなるべく避ける」旨の指導・申し合わせが、従来はされていた。
その原則が最近は軽視あるいは無視されてきている。そうした検定の不公正観の高まりの中で生じた不祥事であること
*そうした軽視、無視が顕著になったのは「新しい歴史教科書をつくる会」の扶桑社版で拉致問題が特筆大書され、被害者の「横田めぐみ」氏の顔写真とフルネームがことさらに強調されたものを、検定で合格とした時(2000年度検定)以来であること。
このことから、「つくる会」登場以後に次々と歪められてきた検定及び採択の諸規定や慣行などを、従前のように弾力性のあるものに戻す取り組みを進める方向の議論の拡散も考えられます。
② 上記①は、「つくる会」を安倍晋三議員など自民党のタカ派文教族が露骨に支援し、 自民党の各地方組織を通じて、自治体の首長や地方議会から教育委員会に同会教科書の採択を働きかけるように指示をだすなど密接な関係にあることが知られている中で生じた変化であること
③ そうした安倍晋三議員を中心とする政治勢力の影響力が頂点に達していた第2次安倍政権下の2014年度検定で、上記の説明付きの写真が掲載されているのを、是正させないまま検定合格としていることから、育鵬社版筆者たち(八木秀次氏など)と検定担当者たちが、政権に迎合するという点で一致した結果であると推認されること。
④ 当時の文科大臣は下村博文議員で、第1次安倍政権の官房副長官の時代から「検定は官邸から指示する」旨公言していたことで知られている。現・自民党政調会長の下村氏 の責任も問われる案件であること。
⑤ 本件の写真掲載の場合、写真の説明に山田氏個人のフルネームを記述すべき合理的理由は見当たらず、逆に個人情報の中枢である個人名を全面公開することは個人情報保護の理念にも反するもので、検定における遵法精神の欠落が疑われること
⑥ さらに、①のような「生存者については~」という指導とは別に明文化された規定の 「検定基準」「各教科共通の条件」に「特定の企業、個人、団体の扱い」として「図書の内容に、特定の営利企業、商品などの宣伝や非難になるおそれのあるところがないこと」
「図書の内容に、特定の個人、団体などについて、その活動に対する政治的又は宗教的な援助や助長となるおそれのあるところはなく、また、その権利や利益を侵害する恐れのあるところはないこと」とあるのに、本件写真とその解説記述は明らかに反していること
⑦ ①~⑥は、検定が客観的、公正、公平に実施されているとは言えないことを証明するものであり、こうした事態をより深刻にさせた安倍政権以降の検定行政及び政権運営の責任が問われる問題でもあること
⑧ 育鵬社・文科省の責任とは別に、同教科書を採択した教育委員会は、結果として不適切な教材での学習を管内公立中学校に強制した責任についての対応が求められる案件であること。
ちなみに、最高裁大法廷判決(1976年5月21日、旭川学力テスト事件)では「誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法26条(教育を受ける権利)、13条(個人の尊重・幸福追求権)の規定上からも許されない」と判示している。
本件では、山田氏の実名を記述するなど明らかに同氏を賞賛するという「一方的な観念を 子どもに植えつけるような内容」に、なってい。この点を見落として同書を採択した教委の責任は免れない。
⑨ 上記⑧の責任への対応策をどのようにすべきか、当該教委は山田氏を巡る情勢の推移に留意しながら、学年末を目前にした昨今、至急に取り組みを進めるべきであること。
その場合に、現在の中学3年生在籍者向けだけでなく、2016年度から2019年度までの既卒者向けについても別個に講じる必要があること。
*横浜市や大阪市の教委はどうするでしょうか?
*こうした対応は、教科書検定・採択についての教育行政が最近の政治的介入によって不公正の度を増していることから、今後も類似の事例の発生が予想されるので、そうした時の事後処理の前例としての意味を持つことを視野にいれて、検討すべきであると思います。
などなどが、当面考えられます。
全国各地の育鵬社公民教科書現行版採択地区の教委には、まずこの問題写真の確認を申し入れ、年度末までの対処策の立案と実施責任の確認を求めて行きたいと思います。
各地の教委の反応などについての情報の共有化も、宜しくお願いいたします。
以上 最初に情報をくださった方の了解を得ての、私見による情報拡散と話題提起です。
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〔eye4813:210227〕
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