なんとも鬱陶しいマイナンバー、私は使わない
- 2021年 4月 4日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
銀行や保険会社から、マイナンバーの提供依頼の文書が何度でも届く。そのたびに無視しているが、カードも持たないし、提供する気もないので、なんと、鬱陶しいことかと、閉口している。
そもそも、政府は、マイナンバー制度は何のために、進めようとしているのか、私にはわからない。マイナンバー制度は何のためにと、このブログでも何度か触れているが、現在、大きな曲がり角に来ていると、書き始めたのだが、なかなかまとまらないうちに、きのう4月2日、マイナンバー改正法案を含むデジタル関連法案63本が一括で衆議院内閣委員会において可決されてしまった。その審議時間は27時間に過ぎなかったという(『東京新聞』4月3日)。
一括とは、「束ね法案」ともいい、政府提案の法案の審議時間をなるべく短縮し、反対意見を極力スルーするための審議・議決方式であって、安保関連法案、働き方改革関連法案に続く手法である。その上、これまでもあったかもしれないのだが、今国会で、法案の条文のミス、たんなる字句に限らない、内容的にも整合性を欠く条文がさまざまな法案で発見されているというのだから、お粗末きわまりない。「束ね法案」は、政府にとっては、質疑応答の過程で、その本質や不備が質されるのが避けられるという「手口」であって、国民にとっては、国会軽視の何物でもないだろう。
マイナンバー制度は、個人情報の一元管理により行政の効率化を図るというのが主旨であったが、笛吹けど踊らず、国民は、個人情報が束ねられることへの不安、暮らしの上でのメリットがないまま、なかなか普及していないのが現状である。
なお、今日4月3日のjijicom(時事通信社)の記事によれば、3月年度末時点での普及率は、急激に増加して、28.2%にまで上昇したという。さらに、今日の7時のNHKニュースでは、急増して36%に達したとの報道もあった。政府は、2022年度末(2023年3月)までに、国民すべてにマイナンバーカードを普及させたいと、武田良太総務相が語っていたが、あの武田大臣が胸を張ったところで、説得力はない。さらに、最高額5000円のマイナポイントで、マイナンバーカードの普及を図ろうとするも、意外に伸びず、この3月で申請を打ち切るはずだったが、1か月延長、その付与も9月まで延長するなど、躍起になっている。
マイナンバーカードには、メリットがないばかりか、さまざまな分野でのマイナンバーの「活用」は、システム上の不具合と称してとん挫しているではないか。昨年、国民一人当たり10万円の「特別定額給付金」は、マイナンバーを利用したばかりに、かえって支給が遅れるという事態が生じたし、この3月には、一部の医療機関で保険証代わりにマイナンバーカードを使用できるとしていたが、これも不具合があって、10月までにはと延長となっている。10月からといっても、使えるのは、全国で24都道府県、54医療機関に過ぎないというから、文字通り、試験運用にすぎないだろう。運転免許証代わりという計画は、当初2026年度中にはと言っていたのが、2024年度末に前倒しをするとの意向が昨年末に示されたが、どうなることか。
厚生労働省のHPでは、「2021年3月(予定)から、マイナンバーカードが健康保険証 として利用できるようになります!」となっていて、訂正されていない
一時、マイナンバーと銀行口座との紐付けを義務化するという話も、マイナンバーカードが普及せず、断念したのだったが、今回の「束ね法案」の中の「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案」では、金融機関が預貯金者に紐づけの意思を確認することが義務付けられるが、紐づけ自体は預貯金者の任意となっている。紐づけの布石ならなければよいが。さらに、これまでは、各自治体の個人情報保護条例に拠っていた部分が一元化・標準化されて、自治体の自主性や独自性が損なわれる危険性も伴うことになる。
また、個人情報の目的外使用は「相当の理由」により拡大するおそれやマイナンバー事業の民間委託、再委託など業者との不明確な契約による漏洩の危険をはらんでいる。
私たちはどうしたらいいのか。残る国会審議に時間をかけて、法案の不備を質し、廃案にしてほしい。 ナンバー自体は、すでに、いま、否応なくつけられてしまっているのだから、極力このナンバーを他に伝えない、カードはつくらないことに尽きるのではないか。
初出:「内野光子のブログ」2021.4.3より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/04/post-449614.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10707:210404〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。