ペルシャ湾の大国イラン、世界にとっても重要な月末の日々 ウイーンでの米・イラン核交渉がまとまるか
- 2021年 6月 16日
- 評論・紹介・意見
- イラン中東坂井定雄核
本欄で5月6日、14日に書かせていただいた「ペルシャ湾に大きな変化、イラン核合意の復活へ」「サウジ皇太子、初めてイランに和解を呼びかけ」が、あらたな展開をしつつある。6月末のイランに注目する。
イランでは18日、任期4年の大統領選挙が行われる。ロウハニ現大統領は2013年の大統領選挙で当選、17年の大統領選で再選された。大統領の任期は2期まで。イラン憲法では国家の指導者は最高指導者と大統領の2人が明記され、1989年に専門家会議で選出され就任した最高指導者のハメネイが国政全般にわたる決定権を持ち、政府、司法府、議会、軍などの上に立つ。大統領は最高指導者に次ぐ国家の権限をもつ。憲法上は両者が元首としての権能を分有することになっている。実際には、政府の行政は大統領が運営し、最高指導者はイスラム教や、国家運営の基本にかかわる問題などで指導力を示している。
今回の大統領選挙では、穏健派と評価が高いロウハニ大統領が退任、大統領選の候補では選考委員会が候補者として人選した7人のうち、強固な保守派のイブラヒム・ライシ司法長官が当選確実とみられている。米トランプ政権下、米国による制裁、爆撃、イスラエルによるテロで国民の反米感情が大きく強まり、そのリーダー役のライシ長官の支持が広がったに違いない。
新発足のバイデン政権は、トランプ前米政権が一方的に脱退し、機能不全になったイラン核合意を復活しようとしてきた。しかし、その努力は、相手側イランで反米強硬派が18日の選挙で大統領となれば、イランとの交渉が潰れてしまう可能性が高い。
イラン核合意は2015年7月、イランの核開発の平和利用と国際協力を定めた米、英、フランス、ドイツ、ロシア、中国が結んだ国際合意。同年10月に発効、「合意」に基づきウイーンに本部がある国際原子力機関(IAEA)は16年1月、イランがウラン濃縮の停止をはじめ「合意」の実行をしていることを確認。以後もIAEAは査察で、「合意」の実行を、同様に確認してきた。しかし、トランプ政権はイランに強い敵意を抱くイスラエルの要請にこたえるためもあり、2018年5月、イランとの合意から一方的に脱退した。
イランはこれに対抗して、同年中に「合意」で認められているウラン濃縮度上限3.67%を超えて約4.5%にしたと発表。21年1月には、原子力庁がウラン濃縮度を20%に引き上げたと発表。こうしてイランは15年の「合意」を無視するようになった。
その1月に発足した米バイデン政権は、イラン核合意への復帰を表明。国際原子力機関(IAEA)本部の所在地ウイーンで、IAEA幹部の立ち合いのもとで、2015年7月の合意の復活交渉をイランと再開した。これまでのところ、イランが15年の状態への完全復帰に、すぐ応じる状態ではなく、いくつかの条件を提起しているようだ。
しかもイラン側では、大統領選挙が18日に迫っている。そのため米国とIAEAは、イランとの交渉を18日以前に合意に達することを強く願っている。イラン側が、強硬な新政権に代われば、より、合意は難しくなる。このため先週末からウイーンで始まっている、双方のチームとIAEAの行きつ戻りつの交渉で、イランと米国、IAEAがどのような合意に達することができるか、世界が注目している。
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