<被曝とともに生き格闘してきた科学者:矢ヶ崎克馬>
- 2021年 6月 18日
- 交流の広場
- 松元保昭
新刊:矢ヶ崎克馬著『放射線被曝の隠蔽と科学』(緑風出版、2021年5月、定価3200円)
原爆投下直後の隠蔽・被爆者放置からフクシマ避難民切り捨て「風評被害」の棄民政策に潜む「内部被曝」を暴き、いまも「知られざる核戦争」を続行する国際原子力ロビーのエセ科学を批判する!
《原水爆や原発による放射線被曝は、ヒロシマ・ナガサキからチェルノブイリ・フクシマまで、これまで一貫して被曝防護の基準を核推進の国家や企業に有利になるように制定し、事実を隠蔽し、市民の健康を無視し、被害を拡大してきた。その推進勢力こそが国際原子力機関(IAEA)・国際放射線防護委員会(ICRP)・原子放射線の影響に関する科学委員会(UNSCEAR)・世界保健機関(WHO)などの国際・国内原子力ロビーであり、エセ科学とエセ科学者を総動員し安全神話を捏造し、人びとを欺瞞してきた。本書は、国際放射線防護委員会などの防護の考え方や防護基準を科学の目で批判し、どうすれば放射線被曝から市民のいのちと暮らしを守れるかを考える。著者(1943年生まれ、琉球大学名誉教授・物性物理学)》
とくに、「原子雲」形成の機序解明、放射性微粒子を核とした「黒い雨」の正体、無視・誤認された「水平原子雲」と「黒い雨」雨域の科学的論証、またネバダのような乾燥地帯と異なる広島・長崎の多湿大気中における微粒子の力学的挙動の解析、内部被曝と外部被曝における電離作用の比較解明・啓蒙活動などによって、「放射線による被害はない」「被爆体験による特定精神疾患」などという国家の放射線汚染区域とその認定基準の過小評価の元となった重松逸造を座長とする「専門家会議」を徹底批判した、科学者としての著者の働きは圧巻。じっさいに、2003年から「原爆症認定集団訴訟」の19連勝に貢献した。
また3・11直後から、福島に足しげく通い放射線測定器を届け各地で学習会を開いたが、自ら被曝者となって病魔に襲われながらも、妻・沖本八重美が結成した「つなごう命―沖縄と被災地を結ぶ会」により、「原発事故避難者通信」も93号を重ね実践活動にもとぎれなく力を注いできた。
こうして、ヒロシマ・ナガサキ・フクシマの被曝の実相を追い続け解明する著者の人生の始まりには、支えあい導きあってきた広島最年少の胎内被爆者であった妻・故沖本八重美との出会いと道行があったが、そのたゆまぬ活動記録は感動的でさえある。
本書は、ビキニを加えて四度の被爆体験をもつ被爆国日本における、絶大な国際的核権力に抗した稀有な科学者の現代に突き付ける闘いの記録である。「事実をありのままに認識することは民主主義の土台である」を座右の銘にし、どこまでも「誠実な科学」を追い求める著者:矢ヶ崎克馬さんを応援し、共に学び、共に闘いましょう。ご協力いただければ幸いです。
【ご注文】本書ご希望の方は、「住所・氏名・電話」を添えて下記メールにて返信してくだされば、送料・消費税なし「定価のみ」で送付いたします。(振込用紙を同封します。) 】
パレスチナ連帯・札幌:松元保昭( y.matsu0029@gmail.com)
【ご参考に】■ICRP体制に終止符を!―内部被曝の真実
初出:2012 年 4 月 20 日
矢ヶ﨑解説加筆修正・西尾補論挿入:2019 年 3 月 30 日
<もくじ>
配信にあたって……1~5頁
市民版ECRR2010勧告の概要:矢ヶ﨑克馬解説・・・・・・5~25
市民版ECRRレスボス宣言2009:矢ヶ﨑克馬解説・・・・・25~41
ICRP体系を科学の目で批判する―社会的・経済的戒律から人権と科学の体系へ:矢ヶ﨑克馬・・・・・・41~50
矢ヶ崎克馬講演パワーポイント:第3回被曝・医療、福島シンポジウム・・50~70
補論・放射線医療現場からICRPの似非科学を批判する:西尾正道・・・70~82
この80ページにおよぶ文書は、世界の原発政策を推進している国際原子力ロビーの出先ICRPの核心を真っ向から科学的に批判した証言であり、原発推進勢力との訣別を提言したものです。「核と原発のない世界」を望む市民、医師、研究者、学生、行政・司法・医療関係者など幅広い市民が無料で自由に利用できることを目的につくられたもので、専門家である矢ヶ﨑克馬さんと西尾正道さんが協力してくれました。お二人の、歴史に残る人間と科学に誠実な証言から学ぶことは大きいと思います。松元
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