イラン大統領選、過去最低の投票率でライシ師 米欧との核合意は近いか
- 2021年 6月 24日
- 評論・紹介・意見
- イラン坂井定雄
18日に投票が行われた、イラン大統領選挙は、予想通り保守強硬派のイスラム法学者、イブラヒム・ライシ師(60)が得票率62%の約1、792万票を得て当選した。イラン全体の投票率は48.3%、過去最低(1993年)の50.3%を下回った。
前回説明したが、イラン憲法により、イランの国家指導者は1位が最高指導者(ハメネイ)、2位が大統領(任期4年、再任は1期限り)の2人。
今回の大統領選挙では、立候補を表明した有権者は数十人あるいはそれ以上と報道されたが、最高指導者の下にあり、立候補者の審査をした護憲評議会が5月に最終選定した候補者はわずか7人。8月までが任期のロウハニ現大統領に近い保守穏健派は一人だけ。6人は、保守強硬派か明確な主張が不明な候補者で、司法長官のライシ師だけが現職経験も豊かな人物だった。
▼米・イラン核交渉合意への期待
大統領選挙が終わったイランへの国際社会の期待は、イランの平和的核開発の国際合意の復活だ。16日の「リベラル21」で書いたように、イランは2015年7月、米、英、フランス、ドイツ、ロシア、中国と核開発の平和利用と国際協力を定めた「合意」に調印、同年10月に発効した。これに基づき、イランは国際原子力機関(IAEA、本部ウイーン)による無条件査察を受け続け、IAEAも査察の順調な実行を確認してきた。しかしトランプ米前政権は、イスラエルの要請もあり、18年5月、この「合意」から一方的に脱退。「合意」は、機能不全に陥り、イランは対抗して、自国でのウラン濃縮を低レベルから再開、濃縮度を20%にまで引き上げると発表した。
今年1月に発足した、米バイデン政権は、イラン核合意への復帰方針を明確に発表、IAEA幹部の立ち合いの下で、イランとの交渉をウイーンで開始した。
交渉は完全非公開で、複数のレベルで重ねられた。ごくわずかに漏れてくるIAEA筋、米国筋の情報では、イラン側は、いくつかの研究開発の自由を認めるよう主張して、米国の一方的脱退以前の状態への完全復帰を受け入れていないという。
ウイーンでの米国とイランの直接、間接交渉は、IAEAの努力もあって、イラン大統領選挙までに合意に達するように努力重ねられたが、成功しなかったようだ。
しかし、双方もIAEAも、合意に達したいと望んでいる。
限られた国際メディアの報道を紹介しょう。
英BBC国際版(6.18)「イラン核合意の復活を目指すイランが、制裁から逃れるために、自国の核開発計画の制限に同意したと見られるような、一方的な勝利をIAEAには期待できない」
アルジャジーラ(6.16)(ペルシャ湾地域では、最も国際的に信頼されているカタールの通信社)「イランとの核合意に調印した欧州諸国(英国、フランス、ドイツ)とEUは、テヘランに対する制裁を和らげることを望んでいる。バイデン政権下の米国とイランは、間接的な交渉を数回行った。イランは直接の会談を拒否し、米国は多くの国と討議した。いまや、すべての目がイランに注がれている。」
「イランの最高指導者ハメネイは、米国が国際的な交渉での合意での責任を守ることを示すならば、イランは国際的合意に復帰すると述べた」
米ワシントン・ポスト(6.20)「イラン大統領選挙でのライシの勝利は、ウイーンで現在行われているイランと世界の有力国による、2015年核合意を復活させる交渉を脱線させるとは見られていない。最高指導者のハメネイは、交渉を再開し、国際的制裁を解除するために対話を続けることを許した。」
▼新大統領に当選したライシ師、初の記者会見で核合意支持
大統領選挙で初当選したライシ師は21日、テヘランでの最初の記者会見で、現政権が進めた国際原子力機関(IAEA)の仲介による米国との合意を目指すことを表明した。
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