本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(314)
- 2021年 7月 2日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
失われた30年の真相
「日本のバブル崩壊」から30年以上たった現在では、「この間に、どのような変化が発生したのか?」を具体的な数字で把握できるとともに、「なぜ、日本の経済が成長しなかったのか?」も理解できる段階に入ったものと考えている。具体的には、「商品と通貨の関係性」で、この期間を説明することだが、実際のところ、「戦後の日本」は、「自動車」や「家電」などの「実体経済を代表する商品」の輸出により、「外貨の獲得」、そして、「国民の預金増加」という状況だったことも見て取れるのである。
ただし、問題は、「1980年代のバブル」であり、この時に発生した「意識や行動の変化」は、「苦労してより良い商品を造るよりも、相場で楽に儲けたい」ということだったのである。つまり、「商品」よりも「通貨(お金)」に対する興味と関心が増えた状況であり、しかも、「最初の10年間」である「1990年代」は、「バブル崩壊が産み出した不良債権の動向」に対して、国民の危機感が高まった状況だったことも理解できるのである。
その結果として、海外で発生した変化、すなわち、「米国を中心にした、世界的なインターネット網の構築」、そして、「デリバティブという金融商品の大膨張」に関して、大きく出遅れてしまったことも認識できるのである。別の言葉では、「デリバティブが産み出した金融商品とデジタル通貨の存在」に関して、日本人が、ほとんど理解できない状況であり、その結果として、「米国に巻き込まれた形で、一部の金融機関が、デリバティブの取引に参加した」という展開のことである。
ただし、「デリバティブ」に関しては、ご存じのとおりに、「2008年のリーマンショック」の前後に「残高のピーク」を付け、その後は、「金融のメルトダウン」、すなわち、「大量に創られたデジタル通貨が、国債やビットコインなどの金融商品に染み出した状況」、あるいは、「デジタル通貨の活用により、世界の金融市場が価格操作された状況」だったことも見て取れるのである。
つまり、「国民の預金を使い、ゼロ金利やマイナス金利など、超低金利の蓋が形成された状態」のことだが、今後の変化としては、「紙幣通貨の大量発行」、そして、「金融コントロールの無力化」などにより、「紙幣に転換された通貨が、一次産品などに急速に押し寄せる展開」も想定されるのである。別の言葉では、「失われた30年」から「新たな時代」への大転換のことだが、このことは、「時間的な遅れ」や「理解の不足」が存在したものの、「1987年のブラックマンデー」で、私自身が、直感的に気づかされたことだった。(2021.5.26)
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日銀の決算
5月27日に「日銀の決算」が発表されたが、内容としては、「きわめて危機的な状況であり、いつ、国債価格の暴落が発生しても不思議ではない段階」だと感じている。具体的には、「総額が約714兆円(+110兆円)」、そして、「国債の保有残高が約532兆円(+46.2兆円)」であり、また、「当座預金の残高が約522兆円(+127.3兆円)」という状況となっており、このことは、「国債価格の暴落を防ぐために、必死に、国債の買い支えを実施している状況」とも考えられるのである。
別の言葉では、「世界的な金利上昇」に見舞われながらも、辛うじて、「金融システムの崩壊」を防ぐことが可能な状況だったようだが、この指標となる「信用乗数(マネーストック÷ベースマネー)」については、現在、「1161兆円÷650兆円=1.79倍」という状態である。つまり、「ピーク時の約13倍」から「約30年」という時間をかけて、「ハイパーインフレの発生」を意味する「1倍」に近づいた段階であり、今後は、いまだに「約6京円の残高」が存在する「デリバティブ」のバブル崩壊が表面化した時に、「インフレ大津波の到来」となって認識されるものと思われるのである。
より具体的に分析すると、過去1年間の「日銀の実情」は、「約1.1兆円」の「国債からの利息」が「主な収益」となっているが、このために必要とされる「資金手当てのコスト」、すなわち、「当座預金への支払い費用」については、「約2179億円」という「僅かな金額」で済んでいるのである。つまり、「短期金利」が「1%」にまで上昇しただけで、単純計算で、「532兆円×1%=5.32兆円」もの「金利支払い費用」が発生し、「巨額の赤字決算」となることも想定されるのである。
別の言葉では、「日銀の思惑」が「2%のインフレ達成」にあるのではなく、反対に、「できるだけ長期間、超低金利状態を維持すること」にあるものと思われるが、現在では、「国債の買い付け資金を、どのようにして調達するのか?」という大問題が発生し始めているのである。つまり、「当座預金の残高増」については、すでに限界点に近づいており、その結果として、現在では、「クラウディングアウト」という「国家の資金需要急増による金利上昇」が発生している可能性のことである。
しかも、現在、「米国のFRB」においては、「現先オペ」という「「短期資金の借り入れ」により「資金繰りが可能な状況」となっており、そのために、「近い将来、何らかの大事件が発生する可能性」を憂慮すべき段階のようにも感じている。(2021.5.28)
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唯物論から唯心論への大転換
テニスの全仏オープンにおける「大坂なおみ選手の問題提起」については、「唯物論から唯心論への大転換」を象徴する典型的な出来事のようにも感じている。具体的には、「西洋の唯物論」の最終段階で、「マネーの大膨張」が発生し、「全体」に比べて「個人の力」が弱くなる状況のことである。つまり、「世界中に存在する数多くのファン」、そして、「スポーツを利用して自社商品の売り上げを増やそうとするスポンサー企業」に対して、「個人の発言力」が相対的に弱体化する事態のことである。
別の言葉では、「心」が、「お金や名誉などの目に見えるもの」、すなわち、「脳が把握する状態」に執着しすぎた結果として、本来あるべきはずの「精神」に対する「心の回帰」ができなくなる状態のことである。つまり、「心の健全な機能」としては、「安心」という言葉のとおりに、「肉体」と「精神」との間で「安定した心の循環」が行われている状況とも思われるが、実際には、「試合の勝ち負け」という結果だけに拘るのでではなく、「自分が、この試合で、どれほどの精神的な成長を達成できたのか?」を考えることである。
より具体的には、「試合に負ける」あるいは、「自分が失敗する」という「恐怖心」に執着するのではなく、「負けた時の方が、より大きな気付きを得られる可能性」、あるいは、「自分よりも強い選手に出会い、更なるチャレンジを必要とする思い」を抱く重要性の理解である。つまり、「心の柔軟性」という「自由自在に現象界と精神界を行き来できる状況」を作ることであり、このことが、本当の意味での「心の安定性」とも考えられるのである。
そして、このことが、「宗教」や「哲学」に携わる人々が、3000年前から求めてきたことだったと思われるが、残念なことは、「肉体」と「精神」には気づきながらも、「心がどのようにして発生するのか?」に思いが至らなかった点である。つまり、「悩み」や「苦しみ」は、「動物の肉体」と「神の精神」を合わせ持った「人間」にしか経験できないことであり、実際には、「神の恩恵」である可能性のことである。
別の言葉では、「文明法則史学」が教えるとおりに「800年ごとに、東洋の精神文明と西洋の物質文明が交代することにより、人類の精神レベルが向上する可能性」のことであり、このことが、現在、数多くの「心の病」が発生する主な原因とも感じられるのである。つまり、「大膨張し、力を持ったマネー」が「悪魔のひき臼」となり「人間の心」や「既存の価値観」を壊している状況のことだが、この点については、すでに発生している「世界的な大インフレ」が治療の特効薬になるものと考えている。(2021.6.1)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11073:210702〕
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