検察はその威信をかけて、安倍晋三を徹底捜査し起訴せよ ー 国民世論は安倍晋三不起訴に納得していない。
- 2021年 8月 1日
- 評論・紹介・意見
- 安倍晋三澤藤統一郎
(2021年7月31日)
ことあるごとに思い起こそう。忘れぬように繰り返そう。
モリ・カケ・桜・クロカワイ・アベノマスクにIR
ウソとゴマカシをもっぱらとし、政治を私物化した安倍晋三を忘れてはならない。度しがたい歴史修正主義者で改憲論者の安倍、その長期政権をわれわれは許してしまった。
昨日(7月30日)は、安倍の数々の悪行のうち、「桜」を思い起こさせる日となった。検察審査会事務局から「審査申立事件についての『議決の要旨』をお渡ししたい」旨の連絡があって、午後1時半頃に受領した。その全文が後記のとおりである。(但し、安倍晋三ら被疑者4名の肩書は、原文にはない。澤藤が告発状から引用した。なお、「晋和会」は、政治家安倍晋三の資金管理団体である)
審査申立事件は、「桜を見る会」前日の夕食会をめぐるもの。特捜は、公設第一秘書であり、安倍晋三後援会代表者・同前会計責任者でもあった配川博之だけを後援会の政治資金収支報告書不記載罪だけで立件し、被疑者安倍晋三を不起訴とした。安倍は、尻尾を切って難を逃れたのだ。
これを不当とする東京検察審査会への審査申立の議決が、告発被疑事実の2件について、不起訴不当の結論となった。起訴相当ではなかったが、この民意は重い。11人の検察審査員に敬意を表したい。
安倍晋三が尻尾を切って難を逃れた、昨年(2020年)12月24日、私はブログに要旨こう書いた。
日本国民の民度なるものの寸法が、安倍晋三という人物にぴったりだったのであろう。国民は、この上なくみっともない政権投げ出しのあとの安倍の復権に寛容であった。のみならず、何と7年8か月もの長期政権の継続を許した。
その安倍晋三、一見しおらしく、本日の記者会見で、「国民のみなさま」に謝罪した。「深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」と頭を下げたのだ。
安倍晋三によると、「会計責任者である私の公設第1秘書が、(桜を見る会前夜祭での)政治資金収支報告書不記載の事実により略式起訴され、罰金を命ぜられたとの報告を受けた」。「こうした会計処理については、私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」「今般の事態を招いた私の政治責任はきわめて思いと自覚しており、真摯に受け止めている」という。
難解なアベ語を翻訳すると、こんなところだろうか。
「これまでずっと、繰り返しウソをつき続けてきたんだけど、ばれちゃったから一応ゴメンネって言うの。でも、あれはみんな秘書がやったことなの。その秘書が罰金100万円の責任とったんだから、もう問題済んだよね。ボク、な~んにも知らなかったんだから、しょうがないでしょ。ただね、みんな怒っているようだから、取りあえず『政治責任を自覚』って言ってみたんだ。どういうふうに、政治責任をとるかって? そんなこと、なーんにも。口だけ、口だけ。これまでそれで通ってきたんだから,今回もそれでいいでしょ。今回ちょっとまずかったから、これからはバレないように気をつけなくっちゃね」。
「桜を見る会」とは何であったか。各界の功労者を招いて総理大臣が主催する、公的行事である。これを安倍晋三は,露骨なまでに私的な後援会活動に利用した。これを許したのは山口4区の選挙民の民度である。下関・長門両市民は大いに恥ずべきである。石原慎太郎を知事にした、かつての東京都民と同様に。
しかし、公的行事である「桜を見る会」の私物化が明らかになっても、国民の民度は十分な安倍批判をなしえなかった。やむなく、「桜を見る会」ではなく、「桜を見る会」とセットにされた後援会主催の「前夜祭」の、その収支報告書の不記載という、本筋ではないところに問題の焦点を宛てざるを得なかった。そして、本来であれば、国民の怒りをもって国政私物化政権を糾弾しなければならないところ、検察への告発という形で安倍晋三を追い詰めようとしたのだ。(以下略)
もう一つ、忘れてはならないのが、安倍晋三のウソつきぶり。「桜を見る会」の前夜祭の費用を安倍晋三が補填していた問題をめぐり、安倍が国会で事実と異なる答弁を少なくとも118回繰り返していたことが、衆院調査局の調査で明らかになっている。調査は立憲民主党が同局に依頼し、結果を公表したもの。2019年11月~20年3月までの計33回の衆参本会議や委員会での答弁を対象としたもの。内訳は、「事務所は関与していない」との趣旨の答弁が70回、「明細書はない」との趣旨が20回、「差額は補てんしていない」との趣旨が28回で、計118回という。こんな人が政治家になり、こんな人を首相にまでさせたのが、わが国における民主主義の実態なのだ。
昨日発表の議決で、安倍を「不起訴不当」とした被疑事実は二つある。
その一つは、安倍による夕食会の費用補塡は、選挙区内での寄付にあたるという公職選挙法違反。不起訴の理由は、「寄附を受けた側に,寄附を受けた認識があったことを認定する十分な証拠がない」とのことだが、議決は「秘書や安倍氏の供述だけでなく、メールなどの客観的資料も入手して犯意の有無を認定すべきだ」と証拠収集の不十分さに言及している。
もう一つは、安倍の資金管理団体「晋和会」の会計責任者だった西山猛(元私設秘書)の政治資金収支報告書の不記載について、安倍が選任監督の責任を怠ったという政治資金規正法25条2項違反。
その詳細については、「憲法日記」の2020年12月21日号「『桜・前夜祭収支疑惑』で、安倍晋三を第2次告発」をご覧いただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?p=16066
なお、25条2項の法定刑は、最高罰金50万円に過ぎない。しかし、被告発人安倍晋三が起訴されて有罪となり罰金刑が確定した場合には、政治資金規正法第28条第1項によって、その裁判確定の日から原則5年間公民権(公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権)を失う。その結果、安倍晋三は公職選挙法99条の規定に基づき、衆議院議員としての地位を失う。この結果は、法が当然に想定するところである。いかなる立場の政治家であろうとも、厳正な法の執行を甘受しなければならない。
検審議決の命じる本件告発への捜査に、検察の威信がかかっている。安倍政権時代の黒川弘務東京高検検事長問題で、検察の威信は大いに失墜した。国民の検察に対する信頼を回復する大きなチャンスではないか。検察は安倍晋三らに対する厳正な捜査を徹底して起訴すべきである。そうして初めて、国民の検察に対する信頼を回復できることになる。
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令和3年東京第一検察審査会審査事件(申立)第8号
申立書記載罪名 公職選挙法違反,政治資金規正法違反
検察官裁定罪名 公職選挙法違反,政治資金規正法違反
議決年月日 令和3年7月15日
議決書作成年月日 令和3年7月28日
議 決 の 要 旨
審査申立人 澤 藤 大 河,澤 藤 統一郎
被 疑 者 安 倍 晋 三 (衆議院議員・晋和会代表者)
被 疑 者 配 川 博 之 (安倍晋三後援会代表者・同前会計責任者)
被 疑 者 阿 立 豊 彦 (安倍晋三後後会会計責任者)
被 疑 者 西 山 猛 (晋和会会計責任者)
不起訴処分をした検察官
東京地方検察庁 検事 田 渕 大 輔
議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 宇田川 博 史
上記被疑者安倍晋三に対する公職選挙法違反,政治資金規正法違反被疑事件(東京地検令和2年検第18325号),被疑者配川博之に対する公職選挙法違反被疑事件(同第18326号),被疑者阿立豊彦に対する政治資金規正法違反披疑事件(同第18327号),被疑者西山猛に対する政治資金規正法違反被疑事件(同第32650号)につき,令和2年12月24日上記検察官がした不起訴処分の各当否に関し,当検察審査会は,上記審査申立人の申立てにより審査を行い,次のとおり議決する。
譜 決 の 趣 旨
本件各不起訴処分は,
1 被疑者安倍晋三について,
(1)公職選挙法違反(後援団体関係寄附)及び政治資金規正法違反(晋和会代表者の会計責任者に対する選任監督責任)は不当である。
(2)政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載,晋和会の収支報告書不記載,晋和会代表者の重過失責任)については相当である。
2 被疑者配川博之について,公職選挙法違反(後援団体関係寄附)は不当であ る。
3 被疑者阿立豊彦について,政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)は相当である。
4 被疑者西山猛について,政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載) は不当である。
議 決 の 理 由
1 被疑事実
(1)公職選挙法違反(後援団体関係寄附)
都内のホテルで,桜を見る会に先立ち行われた「安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭」において,選挙区内の後援会員に対し,飲食代金不足分を補てんしたことが後援団体関係寄附に当たるという被疑者安倍及び被疑者配川に対する公職選挙法違反
(2)政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)
前記前夜祭に関する収入及び支出を後後会の収支報告書に記載せず,選挙 管理委員会に提出したという被疑者安倍及び被疑者阿立に対する政治資金規正法違反
(3)政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)
前記前夜祭に関するホテルに支払うべき代金の補てん分として,後援会に代わり,晋和会が支払ったことにつき,晋和会の収支報告書に支出及び収入を記載せず,総務大臣に提出したという被疑者安倍及び被疑者西山に対する政治資金規正法違反
(4)政治資金規正法違反(晋和会代表者の会計責任者に対する選任監督責任)
被疑事実(3)事件につき,晋和会の会計責任者である被疑者西山の選任及び監督につき,相当の注意を怠ったという被疑者安倍に対する政治資金規正法違反
(5) 政治資金規正法違反(晋和会代表者の重過失責任)
被疑事実(3)事件につき,重大な過失があったという被疑者安倍に対する政治資金規正法違反
2 被疑者安倍及び被疑者配川に対する公職選挙法違反(後援団体関係寄附)について
前夜祭における会費収入を上回る費用が発生し,その不足額を後援会側が補てんした事実が認められるものの,寄附を受けた側に,寄附を受けた認識があったことを認定する十分な証拠がないとする。
しかしながら,寄附の成否は,あくまで個々に判断されるべきであり,一部の参加者の供述をもって,参加者全体について寄附を受けた認識に関する判断の目安をつけるのは不十分と言わざるを得ない。
また,実際に提供された飲食物の総額を参加人数で除すると1人当たりの不足額は大した金額ではなく,参加者において不足分があることを認識し得なかったとも考えられるが,都心の高級ホテルで飲食するという付加価値も含まれているのであるから,単純に提供された飲食物の内容だけで寄附を受けたことの認識を判断するのは相当とは言えない。
さらに,被疑者安倍の犯意について,不足額の発生や支払等について,秘書らと被疑者安倍の供述だけでなく,メール等の客観的資料も入手した上で,被疑者安倍の犯意の有無を認定すべきである。
以上のとおり。寄附を受けた側の認識及び被疑者安倍の犯意のいずれについても,十分な捜査を尽くした上でこれを肯定する十分な証拠がないとは言いがたく,不起訴処分の判断には納得がいかない。したがって,被疑者安倍及び被疑者配川両名とも不起訴処分は不当である。
3 被疑者安倍及び被疑者阿立に対する政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)について
被疑者安倍は,後後会の会計責任者でも会計責任者の職務を補佐する者でもなく,被疑者配川と意を通じ,後援会の収支報告書の不記載の罪を実行したと言えるような,共謀の事実を認定することは困難と思われるため,不起訴処分はやむを得ないと判断する。
被疑者阿立については,仮にも内閣総理大臣の後後会の会計責任者という立場を自覚していたはずであり,責任を問われないことには納得がいかないが,犯意を認定することは困難であり,不起訴処分はやむを得ないと判断する。
4 被疑者安倍及び被疑者西山に対する政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)について
前夜祭の主催者は後援会であるとしても,前夜祭の開催には,被疑者西山が主体的,実質的に関与していたと認められるから,晋和会による政治資金規正法違反(収支報告書の不記載)の事実が認められるか否かについては,慎重な捜査が行われなければならない。
また,領収証は,一般的には宛名に記載された者が領収証記載の額を支払ったことの証憑とされるから,宛名となっていない者が支払ったという場合は,積極的な説明や資料提出を求めるべきであり,その信用性は,慎重に判断されるべきである。
以上のとおり,晋和会の資金による支払があったかどうかについて,十分な捜査が尽くされているとは言いがたいため,不起訴処分の判断には納得がいかず,被疑者西山の不起訴処分は不当である。
被疑者安倍にっいては,今後捜査を尽くしても収支報告書の不記載につき,認識があったという証拠を入手できる見込みが大きいとは考えにくいことを踏まえ,不起訴処分は相当と判断する。
5 被疑者安倍に対する政治資金規正法違反(晋和会代表者の会計責任者に対する選任監督責任,晋和会代表者の重過失責任)について
前述のとおり,政治資金規正法違反(晋和会の収支報告書不記載)について,被疑者西山の不起訴処分は不当であり,今後,同事実に関し再検査が行われるのに併せて,被疑者安倍の会計責任者被疑者西山に対する選任監督に対する注意義務違反の有無の捜査も行われるべきであり,不起訴処分は不当である。
なお,被疑者安倍の収支報告書不記載に関する重過失責任については,今後捜査を尽くしても重過失を裏付ける新たな証拠を入手できる見込みが大きいとぱ考えにくいことを踏まえ,不起訴処分は相当と判断する。
6 まとめ
よって,上記趣旨のとおり議決する。
付言すれば,「桜を見る会」は税金を使用した公的な行事であるにもかかわらず,本来招待されるべき資格のない後援会の人達が多数参加しているのは事実であって,今後は,候補者の選定に当たっては,国民からの疑念が待たれないように,選定基準に則って厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい。
また「桜を見る会前夜祭」の費用の不足分を現金で補てんしているが,現金の管理が杜撰であると言わざるをえず,そういった経費を政治家の資産から補てんするのであれば,その原資についても明確にしておく必要があると思われ,この点についても疑義が生じないように証拠書類を保存し,透明性のある資金管理を行ってもらいたい。
最後に,政治家はもとより総理大臣であった者が,秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表者である自覚を持ち,清廉潔白な政治活動を行い,疑義が生じた際には,きちんと説明責任を果たすべきであると考える。
東京第一憲法審査会 印
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.7.31より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17305
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11157:210801〕
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