「命切り捨て」の言い訳でしかない!統治能力はすでにない
- 2021年 8月 4日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
政府は、新型コロナウィルス感染者の入院ルールの一挙転換に踏み切った。これまで、中等症患者は入院が原則であったが、医療のひっ迫を理由に、中等症患者までは、自宅療養にするのだという。
中等症といえば、呼吸困難・肺炎症状から酸素投与が必要な場合まで含む。新ルールによれば、これらの患者は自宅で療養せよというのである。往診、オンライン診療や新しい治療薬投与の活用によって治療するというけれど、現実は、かかりつけ医も持たず、往診やオンライン診療を実施している医療機関をどうやって探すのか、オンライン環境は整っているのか、だれが診療して、処方箋を出すのか、薬はどうやって手に入れるのか、私などは見当もつかない。
東京新聞「政府の甘さ露呈 急転換」(8月4日)
東京新聞「中等症患者の急変や重症化に対応できるのか」(8月4日)
私たち夫婦の場合だって、かかりつけ医と言えるかどうか、かかったことのある、近くのクリニックが閉院し、その後、病気もしない連れ合いは、ワクチン接種にも、診察券を持たなくても可というクリニックを見つけ、二回の接種は別々のクリニックだった。詳しい問診もなく接種、その後、副反応が出てないのは幸いながら、不安であった。私も、通院している整形外科や歯科などはあるが、そこでのコロナ感染者の対応は無理だろう。
東京都ではフォローアップセンタ―があると知事は胸を張っているが、これもなかなかつながらないのが現実で、すでに自宅療養者が万を超えている。自宅での死、自宅からの救急搬送先が見つからない場合、家庭内感染が急増している報道も絶え間ない。
千葉県や佐倉市ではどうなのだろう。発熱外来でさえわずかで、人口17万の佐倉市全体で4か所しかない。昨年から増えていないし、不安は絶えない。
病院での入院体制がひっ迫しているのならば、少なくとも、ホテルや施設などを借り切って、医師・看護師が常駐する、という便法ながら、継続・拡充すべきではないか。中等症はもちろん、軽症でも自宅療養が出来ない患者を受け入れるべきではないのか。
NHK「新型コロナ”自宅療養”家族全員が感染のケースも 課題は?」(8月3日)
ほんとうは、五輪を中止して、選手村や関係施設、在来の国の施設を活用して備えるべきだったのである。人流、人の滞留時間の増加やデルタ株の伝染力などが感染拡大の最大の理由のようにいう、いや、人流が減っているなどというウソまでつく首相。五輪を強行しながら、若年層に何を言っても説得力はないだろう。特例ばかりの水際対策、バブルとやらも無きに等しい状況ではないか。
ワクチンの供給も滞っているなかで、「地域と連携して、症状に応じた適切な対応をするため」の新ルールは撤回し、重症患者受け入れを強化すると同時に、感染者の早期発見の検査、中等症、軽症の患者の早期診察・診断の整備・強化こそがなされるべきではないか夕方の報道によれば、東京都の新規感染者は二度目の4000人超えで過去最多となった。自民党が政府に、新ルール撤回を求めたという。すでに公明党も表明しているのだから、まさに統治能力を失った政府というべきだろう。
初出:「内野光子のブログ」2021.8.4より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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