本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(328)
- 2021年 10月 9日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
菅首相辞任の歴史的な意味
「日の下に新しきものはなし」という言葉のとおりに、「どのような出来事も、本質的には、過去の歴史の繰り返しではないか?」と思われるが、一方で、「人間社会の歴史的な発展」を考えると、「どのような出来事も、全てに、大きな意味が含まれているのではないか?」とも感じている。つまり、今回の「菅首相の辞任」については、「現在の世界的な異常気象」と同様に、「単純な歴史観」ではなく、「人間社会が、現在、どのような発展過程に位置しているのか?」を考える必要性があるものと思われるのである。
具体的には、「5000年ほど前から始まった通貨の歴史」であり、また、「800年ごとに繰り返される東西文明の交代」、そして、「自然科学と社会科学の次元格差」などのことだが、現在は、「非理法権天」の言葉のとおりに、「権力の暴走」が行き詰まりを見せるとともに、「天地自然の理」が働き始めた状況のようにも感じている。別の言葉では、「西洋の唯物論」から「東洋の唯心論」への移行に関して、大きな節目を経ている可能性のことだが、実際には、「世界の膿み出し」という「今までの矛盾解消」に関して、いよいよ、「目に見えない金融ツィンタワー」が世界的に認識され始めた可能性である。
より詳しく申し上げると、今までは、「人事権の乱用」などにより「政治や金融界の歪み」が発生したものと考えているが、今回の「菅首相の辞任」は、「どのような歪みが存在するのか?」、そして、「これから、どのような事態が展開するのか?」に関して、大きなヒントを与えてくれたものと想定されるのである。別の言葉では、「金利の上昇が、今後、どのような影響を世界経済に与えるのか?」ということでもあるが、この時に大きな意味を持つのが「20年後の金融ツィンタワー」とも考えられるのである。
つまり、「デリバティブ」と「債券」の「二つの目に見えない金融タワー」がそびえ立つ状況のことだが、この点については、「人間社会の歴史上、似たような現象が存在したものの、規模的には前代未聞の事態である」という事実が指摘できるものと感じている。別の言葉では、「人類の精神的なレベルが、より高度な次元にまで高められなければ、現在の問題が解決できない可能性」とも言えるようである。
具体的には、「戦争に関する費用をゼロにして、自然災害に関する問題に対処する必要性」、あるいは、「時代錯誤のマルクス主義」を復活させるのではなく、「人間社会が、どのような歴史を経て、現在の状態にまで発展してきたのか?」を考えること、すなわち、本当の意味での「共同体(コミュニティー)」を模索することなどである。(2021.9.5)
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財政リスクの警鐘
9月6日の日経新聞に、「財政リスクの警鐘ならず」という記事が掲載され、「なぜ、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の価格が上昇しないのか?」について疑問を呈している。しかし、この点についても、やはり、「三次元の経済学」である「現状のCDS価格だけを分析する手法」よりも、「四次元の経済学」である「どのような経緯を経て、現在のような状態になったのか?」を考える必要性が存在するものと感じている。
つまり、「なぜ、CDSの価格が低迷しているのか?」について、より詳しい分析を実施すると、実際には、「CDSの需給関係に、大きな変化が発生している状況」が見えてくるのである。具体的には、「CDSを、なぜ、購入するのか?」を考えた場合、その理由としては、「国債価格の暴落を恐れ、保険金を払うような状態」が指摘できるが、現在、必要なことは、「誰が、国債を買っているのか?」を理解することである。
より具体的に申し上げると、「現在、国債の買い手は、ほとんどが世界各行の中央銀行に変化した」という事実を考慮すると、「中央銀行にとっては、CDSを購入する必要性は全く存在しない」という事情が浮かび上がってくるのである。つまり、「中央銀行には『紙幣の増刷』という最後の手段が残されている」という事実により、「国債価格の暴落時に保険の役割を果たすCDS」については、「全く、買う意味が存在しないのではないか?」とも考えられるのである。
その結果として、「CDSの需要」が減少したものと想定されるが、このことは、現在、「財政リスクの警鐘が、CDSではなく、金利に変化した」という事実が指摘できるものと想定されるのである。つまり、「どのような状況下で、財政破綻が発生するのか?」を考えると、実際には、「日銀」を中心にして、「わずかな金利上昇で、中央銀行の破綻が発生し、その結果として、国家の財政破綻につながるリスク」が存在するのである。
そのために、現在、必要とされることは、「最悪の事態を想定し、備えに全力を尽くすこと」だと考えているが、この点については、今回の「コロナ・ショックへの対応」が、大きな反省点とも言えるようである。つまり、「安易な予測により、対策を小出しにする展開」、そして、「事態の悪化を冷静に判断せず、間違った政策を実施しても、決して、反省しない態度」などのことだが、これから想定される「インフレの大津波」については、「デジタル通貨は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という「金融界の白血病」を伴うために、最大の注意を払う必要性があるものと感じている。(2021.9.6)
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米国軍のアフガン撤退
世界最強の軍事力を誇る米国軍は、「ベトナム戦争」以降、「イラク」や「リビヤ」、そして、今回の「アフガン」というように、連戦連敗の状態となっているが、この点について海外の識者は、「1600年前のローマ帝国の崩壊」と比較を始めている状況となっている。つまり、「帝国の終焉は、必ず、戦争の敗北と通貨コントロールが不能になる状況によって引き起こされる」という説のことだが、確かに、戦後の「米国」を考えると、「ベトナム戦争の敗北が実体経済の限界を示し、今回のアフガンの敗北がマネー経済の限界を示した状況」とも言えるようである。
より詳しく申し上げると、「1950年前後に、世界のGDPに関して約50%のシェアを持っていた」と言われる「米国」は、「ベトナム戦争の出費により、実体経済のみならず、マネー経済の悪化を招いた」という状況だったのである。そして、結果としては、「一時的な措置」と言われた「ニクソンショック」により、「通貨と商品との関係性」を切り離したわけだが、その後の「約50年間」については、ご存じのとおりに、「デリバティブの大膨張により、歴史上、きわめて異常なマネー大膨張が発生した」という状況だったことも見て取れるのである。
しかも、「2001年の9・11事件」の前後から、「デリバティブの残高が急成長を遂げた」という状況だったが、実際には、「2008年前後のGFC(金融大混乱)」により、「デリバティブの残高が減少を始めた」という展開となったのである。別の言葉では、「デリバティブバブルの崩壊」という「金融面における大地震」が発生したものと想定されるが、この事実がほとんど報道されず、反対に、「量的緩和(QE)により、大量の資金が市中に放出されている」というような「大本営的な発表」がなされていたものと考えられるのである。
ただし、今回の「アフガンにおける米国軍の敗北」については、「20年間にわたり、8兆ドルの経費が使われ、90万人もの生命が失われた状況」とも報道されており、実際には、典型的な「帝国の崩壊を意味するのではないか?」とも理解され始めているのである。つまり、「西洋の物質文明が、今後、ほぼ瞬間的に、崩壊の時期を迎える可能性」が危惧され始めている状況となっているが、この時に、きわめて重要な役割を果たすのが、「デジタル通貨の存在」であり、実際には、「金融界の白血病」という言葉のとおりに、「コンピューターネットワークの中を流れることができずに、ほとんど役に立たなくなる可能性」が発生する事態とも想定されるのである。(2021.9.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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