老子も呟いた、岸田のブレと安倍菅政権の異常と。
- 2021年 10月 22日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤統一郎
(2021年10月21日)
ご隠居、これさっぱり分からねえ。なんだか教えてくんないかな。
おや八つぁん、どれ見せてみな。ああ老子だな。
道可道、非常道。名可名、非常名。無名天地之始、有名萬物之母。故常無欲以觀其妙、常有欲以觀其徼。此兩者同出而異名。同謂之玄。玄之又玄、衆妙之門。
おれにゃチンプンカンブンだね。いったいどう読むんだい。
たやすいことだ。普通はこう読む。
道の道とすべきは、常の道に非ず。名の名とすべきは、常の名に非ず。名無きは天地の始め、名有るは万物の母。故に常に無欲にしてその妙を観、常に有欲にしてその徼を観る。この両者は同じきに出でて而も名を異にす。同じきをこれを玄と謂い、玄のまた玄は、衆妙の門なり。
なおのことさっぱり分からん。老子ってお人は、いったい何についてしゃべくっているのかね。
これはな、八つぁん。実はだな、自民党岸田文雄総裁の総選挙における姿勢を厳しく批判しておる。
ムチャを言っちゃいけねぇ。ここには、岸田も、選挙も、一言もこざいませんぜ。
そこが、素人のあさはかさ。読む人が読めば、自ずからこの裏に隠された意味が浮かび上がってくるな。
へ~、読む人はいったいどう読むんですかね。
たとえば、こう読む。
岸田の岸田たるは、常の岸田に非ず。政権の政権たるは、常の政権に非ず。岸田無きは天地の始め、政権有るは万物の母。故に常にそのカラーを放棄してその地位を保ち、自説にこだわれば破滅を観る。岸田と政権と、この両者は同じきに出でて、しかもハトとタカと名を異にす。この同じきを保守と謂い、保守も自民も玄にしてさらに玄、衆妙の門なり。
ご隠居、相当に無理をしちぁいませんかね。それでも、やっぱりわからない。私にも分かるように、噛み砕いてくださいな。
噛み砕くと面白みはなくなるが、まずは、こんなところだ。
岸田さんてのはそれなりのイメージを持った政治家だろう。保守本流の宏池会の主宰者で、決して改憲派でもなければ、安倍晋三のような好戦派でもないし、歴史修正主義とも政治の私物化とも無縁だ。話しぶりだって、安倍や菅と較べれば、ずっと穏やかで品がよい。
そりゃ違えねえ。なんたって、安倍晋三というのが、あんまりひどかったからね。ようやく、ちゃんとした人が自民党のトップになった。
そこが、素人のあさましさ。そういうふうに簡単に騙されてはいけないというのが、老子の教えだな。
あら、今度は「あさましさ」。どう騙されてはならないってんですかね。
これまでの岸田が総裁になったと思ってはならない、今、総選挙に臨んでいる岸田はイメージどおりのいつもの岸田ではない、とまあ警告を発しておる。
実は、あっしもそういう了見なんだ。新聞で、「ブレブレ岸田」と言ってるとおりだ。「自民党の政権公約で鮮明なのはアベ後継の甘利と高市のカラーばかり」って、あれだろう。
そうさぁ、そのとおり。そして、老子は続けている。
安倍菅政権というものは、民主主義の常識に照らせば政権の名に値するものではない。しかし、岸田は実力で今あるわけではなく、安倍菅政権を母体として自民党総裁になった。だから、自分のカラーを消して初めてその地位を保つことができるが、反対に自説にこだわればあっさりと破滅してしまう。
少し分かったよ。普通の政権なら、政権投げ出しゃそれでお終いだ。とこが、安倍菅政権って代物は、いつまでも裏で糸を引こうという魂胆なんだ。岸田は、実力ないから安倍菅とその一味に、糸で引かれっぱなしというわけなんだ。
よくお分かりじゃないか。まったくそのとおりだ。老子は、最後をこう締め括っておるな。
岸田と安倍と、この両者は出所は同じだが、ハト派とタカ派に名を分けた。この同じ出所を保守と言い自民党とも言うが、ハトもタカも一緒というごちゃごちゃはコマッタもんだ、とな。
へ~え、「衆妙の門」というのが、「自民党はごちゃごちゃでこまったモンだ」という意味ですかね。
あんまり細かいことにまでこだわらんでもよい。要は、岸田をハトのイメージで見ていては間違える。ありゃあ、実は安倍晋三そのままのタカだという教えなんじゃ。
見かけはハトで中身はタカ、看板は岸田で売ってる品物は安倍製品、表紙は岸田で中身は安倍、顔は岸田で身体は安倍ってわけか。
もっとも、鳩は軍記物では戦での勝運を呼ぶ鳥じゃ。軍神である八幡神の使いとしても知られておる。そもそもの岸田のハト派イメージも、そのホンモノ度を、よく吟味しなければならん。
なるほど、言われてみればそのとおりだ。ハトの目タカの目でね。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.10.21より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17783
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11413:211022〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。