本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(355)
- 2022年 4月 23日
- 評論・紹介・意見
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デジタル通貨の二面性
「言語学」と同様に、「デジタル通貨」においても「二面性」が存在するものと考えているが、具体的には、「言語が、表面上の文字や音を通じて、内面的な人や動物の思いを伝えている状況」と同様に、「デジタル通貨が、コンピューターネットワークを通じて、数字の情報のみならず、人々の信用を伝えている状況」のことである。つまり、表面上の「文字や音、あるいは、数字」などを利用して、「人々の心の奥底に存在する感情」までをも伝えてきたわけだが、この時の注意点は、「片方の面だけが注目され、存在感が大きくなりすぎた時に、機能が暴走する可能性」だと考えている。
より具体的に申し上げると、現在の「デジタル通貨」は、「信用の伝達」よりも「情報の伝達」という機能が強くなりすぎた結果として、「信用面で抜け落ちた部分が無視できなくなった状況」とも考えられるのである。つまり、「アナログ」という「大自然の複雑さ」や「人情の機微」などが抜け落ちた結果として、「お金さえあれば、心などは関係ない」というような理解をする人々を、大量に生み出したことも見て取れるのである。
しかも、「デジタル通貨の大量創造」により、「地球環境の破壊」という副産物までをも生み出したものと思われるが、この原因としては、やはり、「物質文明の偏重」という「二面性の歪み」が挙げられるものと感じている。そして、現在の「世界的な混乱」も、「宗教はアヘンである」と理解する「共産主義や社会主義」を信奉する人々が、「軍事力や資金力で世界を制覇すべきである」と錯覚した結果の出来事のようにも思われるのである。
そのために、これから必要なことは、「信用は、瞬間的に崩壊する」という言葉を思い出しながら、「現在のロシアが、ハイパーインフレの初期段階にある事実」を認識することだと考えている。つまり、「ウクライナへの軍事侵攻により、ほぼ瞬間的に、ロシアが世界的な信用を失った状況」、そして、「現在のロシアで、30年前のハイパーインフレと似たような状態が発生し始めている状況」については、「将来の西側諸国を象徴しているのではないか?」とも感じられるのである。
具体的には、「金融界の白血病」、すなわち、「デジタル通貨が紙幣に移行する状態」により、「デジタル通貨の情報伝達機能」が失われる可能性である。つまり、「現在のロシアと同様に、信用が失われた通貨に対して、商品を交換しようとする人々が激減する状態」が予想されるために、今後の数か月間については、「ロシアと世界全体が、どのような展開を見せるのか?」に注目している次第である。(2022.3.20)
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アリとキリギリス
1980年代の思い出としては、「日本人の奢りや傲慢さ」が指摘できるが、「バブルの絶頂期」で言われたことは、「アリとキリギリスの物語」だった。具体的には、「日本人はアリのような働き者だから、世界でも有数の金持ち国になった」ということであり、また、「イタリア人などは、遊んでばかりいるキリギリスのような存在だから、経済的な発展を達成できないのではないか?」というものだった。
しかし、この点については、現在の状況を考えると、まさに「冷や汗ものの状況」とも言えるようだが、実際のところ、「現在の日本人」については、「政治家や官僚を始めとして、嘘や隠ぺいが横行している状況」となってしまったのである。つまり、「自分は働かずに、他人の税金を頼みにしている人々が、国家の権力を握っている状態」となっており、その結果として、「日本の国家財政は、きわめて危機的な状況」となっているのである。
より詳しく申し上げると、「1868年の明治維新」以降、「西洋に追いつき、追い越せ」というスローガンを掲げて、「アリのようにがむしゃらに働いてきた人々」が、現在では、「キリギリスのような生活を好む人々」に変化してしまったのである。そして、この点については、「1980年代に、アメリカ人から指摘されたこと」でもあったが、実際には、「日本は、アメリカから、30年遅れの状態にある」ということだった。
ただし、このことは、「世界の西洋化」、すなわち、「マネーの大膨張が世界全体に及ぶ過程で、悪魔のひき臼により、人々の心が粉々にされる状態」に関して、「文明法則史学が教えるとおりの展開」だったことも見て取れるのである。つまり、「神の計らい」として、「文明の二重構造」が必要とされ、その結果として、「世界全体の進化と創造が繰り広げられる可能性」のことである。
そのために、現時点で必要なことは、従来の考えである「アリが正しく、キリギリスは悪である」というような「単純化した意見」ではなく、「量子力学」や「分子生物学」などが切り開いている「新たな認識や考え方」だと考えている。つまり、「人間社会」の前提である「大自然界の法則」と、その前提とも言える「法界(ほっかい)の法則」、すなわち、「仏教やユング心理学などが指摘する、目に見えない、心の奥底にある世界」を模索することである。そして、このことが、今後の「世界的に発生する難問」を解決する「一番の近道」とも思われるが、その前に起こることは、やはり、「世界中の人々が、現実を直視せざるを得なくなるような大事件の発生」とも言えるようである。(2022.3.23)
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信用本位制における金利とインフレ率
金融業に携わって、今年で46年目を迎えるが、この間、最も悩まされたことは、「なぜ、ゼロ金利やマイナス金利が実現可能だったのか?」という点である。つまり、従来の経済学が、全く役に立たず、新たな理論を模索せざるを得なかったわけだが、この過程で気付かされたことは、「金融商品の出現と大膨張」であり、実際には、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張」が、「実物商品の経済統計に含まれない、新たなオカネとモノとの関係性」を産み出した状況だった。
具体的には、「デジタル通貨の出現」であり、また、「さまざまな金融商品の創出」のことでもあるが、この結果として発生した現象は、「従来の金利やインフレ率が、ほとんど実態を表していない事実」だった。別の言葉では、「金融界のブラックホールの中で、いろいろな金融商品が、デジタル通貨によって取引される状態」となったために、従来の「実物商品が、紙幣や硬貨などで取引される状態」については、「時代遅れの経済活動」と理解されるようになったのである。
しかし、このような状況については、典型的な「バブルの状態」であり、実際には、「実体経済の成長」が作り出した「マネー経済の大膨張」、すなわち、「信用本位制」という「新たな通貨制度」において、「新たな商品(モノ)と通貨(オカネ)が産み出した、現実離れした仮想現実の世界」だったことも見て取れるのである。つまり、日本の童話にある「浦島太郎と竜宮城」のような世界が、数十年間に亘り、繰り広げられてきたわけだが、このことは、「西洋文明から東洋文明への移行期に特徴的な現象」だと感じている。
具体的には、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」の時にも、「マネーの大膨張」と「精神的な荒廃」が見られたわけだが、当時と今回との違いは、「グローバル化により、規模が大きくなった点」だと考えている。つまり、これから発生する現象としては、1600年前を上回る、「巨大なインフレの大津波」であり、このことは、すでに発生しているものと想定されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「デジタル通貨の枯渇が、今後、どれほどの速度で、デリバティブなどの金融商品を破壊するのか?」を考えることであり、実際には、今回の「ロシアによるウクライナへの侵攻」と同様に、「ほぼ瞬間的に、デリバティブやデジタル通貨が消滅する可能性」を理解することでもあるが、現在、この点を危惧する人は、世界的にも皆無の状況だと感じている。(2022.3.24)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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