SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】478 日本、NATO(ナトー)の何なのさ?
- 2022年 5月 22日
- 評論・紹介・意見
- NATOサハラ平田伊都子西サハラ
2022年5月18日、コロナから解放されたブリンケン米国務長官が、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を承認するように、トルコを説得しました。が、チャブシオール・トルコ外相は、 「フィンランドとスウェーデンがテロ組織を支援しているから、トルコにとって安全保障上の懸念がある」と、改めて両国のNATO加盟に難色を示しました。
① テブン・アルジェリア大統領を招待したエルドアン・トルコ大統領:
2022年を経済再興の年と決めたアルジェリアは、エネルギー・食料・医療・貿易・外交などの改善に取り組んでいる。トルコとの関係も、食料・貿易を中心に、様々な交渉を進めてきた。アルジェリアだけではない。アラブ諸国は、トルコの食文化を現在に至るまで受け継いでいる。パレスチナでもイラクでもリビアでも、トルコ産の伝統菓子が店頭に並んでいる。欧米産よりダントツに安いし、素朴で美味しい。日本のスーパーでも、スパゲティやオリーブ油など、トルコ産食材が犇いている。
その昔、オスマントルコ帝国(1299~1922)は、バルカン、アナトリア、メソポタミア、北アフリカ、アラビア半島に至るまで、広~く支配していた。パレスチナはイギリスが植民地支配するまで、トルコの傘下にあったから、古い写真にはトルコ帽を被ったパレスチナ人が映っている。リビアの首都トリポリにある<赤い城>は、旧支配者トルコのパシャ(太守)の居城だった。
そのトルコが、テブン・アルジェリア大統領を公式招待した。5月15日、トルコの首都アンカラに到着したアルジェリア大統領は、様々な省庁や企業と契約を交わした。翌5月16日、テブン大統領とエルドアン大統領は首脳会談をし、共同記者会見を行った。エルドアン・トルコ大統領は、「トルコは、北アフリカとサヘルに於けるアルジェリアの役割を高く評価している」と表明した。その一方、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に関して、「両国はクルドテロ組織PKK(クルド労働党)のメンバーやクーデター首謀者たち(2016年7月15日)を匿うテロの温床だ。しかも、フィンランドとスウェーデンは2019年来、トルコに対する武器輸出禁止の制裁を科している非友好国でもある。トルコは両国のNATO加盟を承認しない」と、断言した。
エルドアン・トルコ大統領(左)と、テブン・アルジェリア大統領、
アラブの男性はホモでなくても手を繋ぎます。後ろの時代がかった兵隊さんたちに注目!(APS出典)
② NATO(ナトー)って?:
外務省によると、「北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)は<集団防衛>、<危機管理>及び<協調的安全保障>の三つを中核的任務としており、加盟国の領土及び国民を防衛することが最大の責務」と、記されている。加盟30カ国は、2022年5月22日時点で、アイスランド、アメリカ合衆国、イタリア、英国、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク、ギリシャ、トルコ、ドイツ、スペイン、チェコ、ハンガリー、ポーランド、エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ、北マケドニア、である。
NATOは1949年4月4日に設立された軍事同盟で、本部はベルギー首都ブリュッセルにあり、事務総長はノルウェー人のイェンス・ストルテンベルグ。
NATO軍最高司令部はベルギーのモンス近郊にあり、司令官はドイツ・シュトゥットガルトにあるアメリカ欧州軍司令官が兼任している。あらゆる議案は「全会一致」によって承認・決定され、多数決の制度は採用されていない。トランプ前米大統領が「不公平だ」とクレームをつける程、アメリカはNATOに貢いでいる。
NATOが介入した紛争は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、コソボ紛争、マケドニア紛争、アフガニスタン紛争、リビア内戦だ。リビアでは、2011年3月17日にアメリカ主導の国連安保理がリビア上空に飛行禁止区域を設定し、3月19日からNATO軍は空爆を開始した。そして、リビアのカダフィ政権を潰した。それから10年以上たった現在も、NATO欧米は、石油天然ガス産油国リビアを内戦状態にしたままだ。
日本の総理大臣が、スペイン・マドリッドで6月14日に開かれるNATO首脳会議に、どうしても参加したいとか、、
ヨーロッパでもなく大西洋にも面していない日本にとってNATOは何なのか? 再び、外務省のホームページに問い合わせると、「日本とNATOは基本的価値とグローバルな安全保障上の課題に対する責任を共有するパートナー。互いに関心を有する分野及び地域において、安全保障環境の改善に貢献していくことが期待されている」と、記されていた。因みに、日本と同じ<グローバル・パートナー国>に属する国は、アフガニスタン、イラク、オーストラリア、韓国、コロンビア、日本、ニュージーランド、パキスタン、そして、モンゴルだ。
トルコは1952年2月18日にNATOに加盟したが、EU(ヨーロッパ連合。)には未加盟で、現在、加盟申請中だそうだ。
③ EU委員会が天然ガスの調達先多様化を発表:
EU(ヨーロッパ連合)委員会は18日、ロシア産石油天然ガス依存から2027年までに脱却するための計画案を発表した。天然ガスの調達先多様化や省エネに加え、再生可能エネルギー普及をさらに促進するとしている。このため、同年までに新たに約28兆5000億円の投資が必要だと、フォンデアライエンEU委員長が表明した。
天然ガス調達先多様化の案は既に実践されていて、アフリカに焦点が当てられた。ヨーロッパと地中海を隔てた超近場のアルジェリアが、まず、ヨーロッパ諸国に狙われた。そして、首相自ら交渉に当たったイタリアが、アルジェリア天然ガス輸入の権利を勝ち取った。続いて、アフリカで天然ガス産出量第二位のナイジェリアが対象になった。ナイジェリア天然ガスは、現在のところ、タンカーで海上輸送されている。そこで、サハラ砂漠を縦断するパイプラインが計画されるようになった。
① トランス・サハラ・パイプライン:ナイジェリア~ニジェール~アルジェりア~地中海~ヨーロッパ、 全長4,400㎞で現存するアルジェリアのパイプラインに繋がり、有望視されている。
② ナイジェリア・モロッコ・パイプライン:ナイジェリア~西アフリカ~モロッコ・サハラ~ヨーロッパ、と、地図上では可能に見えるが、西アフリカはテロのホットスポットだし、モロッコが売り込むモロッコ・サハラ(西サハラのモロッコ式呼称)はモロッコ領土ではない。パイプライン建設のためにも、モロッコは西サハラを自分のものにしようとしている。
MAPによると、モロッコはラバトにナイジェリアとフォンデアライエンEU(ヨーロッパ連合)委員長を招待した。モロッコはナイジェリア・モロッコ・パイプラインの話を売り込むと同時に、モロッコの西サハラ領有権の承認も迫った。
ナイジェリアはSADR(サハラ・アラブ民主共和国)を1988年11月11日、正式に国家承認している。モロッコが強要する西サハラ領有権には、賛同しなかった。EU委員長は、モロッコの術策にはまって「モロッコの地方自治案は素晴らしい」等と口走ってしまった。が、ジヨセップ・ボレルEU(ヨーロッパ連合) 外務安全保障政策上級代表は、「EUは、モロッコの西サハラ領有権を承認しない。EUは、国連による西サハラ紛争解決を支持する。西サハラ国連事務総長個人特使のステファン・デミストラを全面的に支援する」と、記者会見で明言した。
「ウクライナ戦争は早急に終わらせねばならない」と、国連事務総長は記者会見で繰り返しています。 その度に記者たちは、「国連は停戦のために何か動いているのか?」と質しますが、「ノー」という答えしか返ってきません。 ウクライナを煽り続けるアメリカに逆らって停戦を願うトルコが、唯一国、魅惑のイスタンブールでロシアとウクライナの直接交渉を続けています。
制裁好きな好戦国アメリカは、トルコにどんな制裁をやるんでしょうね?
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年5月22日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12054:220522〕
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