ここに争点がある(2)
- 2022年 5月 27日
- 評論・紹介・意見
- 鎌倉平和学習会
前回の「ここに争点がある」( http://chikyuza.net/archives/119479 )で触れられなかった点を補いました。市民の考える「憲法視点」からの争点提起です。併せてご覧いただければ幸いです。選挙の結果次第では「改憲」を問う国民投票が実現します。情勢は予断を許しません。7月参院選は、平和を77年間支えた現行憲法のもとで投票する「最後の選挙」となるかもしれません。私たちの平和憲法が危ういのです。
●「改憲は参院選の争点か?」
>【私たちの考え】はい。選挙前から争点化しています。ロシアのウクライナ侵略などが安全保障への関心を高め、自民党など改憲政党を勢いづかせているのです。こんなときこそ護憲政党を支えましょう。
【やや詳しく】争点となっている。国会議員は日本国憲法を「尊重し擁護する義務」を負う。かつて国政選挙で正面切って改憲を問う候補は稀だった。だが、ロシアのウクライナ侵略がそんなムードを一変させた。安全保障への関心が高まり、憲法に自衛隊、緊急事態を書き込もうという主張に一定の支持が集まる現実も見える。9条改定を狙う自民党など改憲勢力は勢いづいている。与野党が憲法問題を議論する憲法審査会も、頻繁に開催されるようになった。「改憲」は選挙前からすでに争点化している。憲法への人々の支持は底堅いから、改憲勢力の「争点隠し」には注意したほうがいい。憲法は崖っぷちの危機にある。
●「南西諸島の防衛力強化は沖縄のため?」
【私たちの考え】「国を守る」ためです。馬毛島・奄美大島・宮古島・石垣島・与那国島へのミサイル配備に「住民を守る」配慮は見えません。米国の中国敵視が続けば、島々は戦争の最前線となるでしょう。
【やや詳しく】政府が本土防衛のため、島嶼戦争の準備を本格的に強化し始めたのは2018年。玉城デニー沖縄県知事へ「最前線は南西地域」と伝えられた。琉球処分をした明治政府、「捨て石」の沖縄戦を経て無憲法のアメリカ世、復帰運動後に迎えた米軍基地を抱える大和世。この150年間、沖縄は立ち替わる統治者に翻弄されてきた。「うちなー世」は訪れない。いま日米は軍事一体化を強め、自衛隊の島嶼配備が進む。与那国島への沿岸監視隊配備(2016年)を皮切りに、奄美大島(19年)、宮古島(20年)にミサイル部隊が配備された。石垣島でも駐屯地を建設中で、ミサイル部隊を置く計画だ。沖縄の市民運動家・山城博治さんは「中国を強く刺激しかねない。ミサイルを撃ち合えば被害は沖縄だけでは済まない」と警告する。
●「憲法の理想主義は日本の経済発展を阻害してる?」
【私たちの考え】いいえ。平和憲法があったから、戦後日本は軽武装のまま戦争をせず経済活動に専念できました。一方で憲法を無力化する動きもあらわで、人口減もあり市民経済の活性化を妨げています。
【やや詳しく】阻害どころか、役に立っている。立憲主義、人権尊重、国民主権、平和主義は、憲法を貫く根幹の理念。それを守り抜いた戦後の理想主義があったからこそ、戦後日本は戦争することなく77年間を過ごすことができた。このことは計り知れない重みがあり、戦後の経済発展を支えた基盤となっている。平和だったから貿易や投資も続いた。平和主義は非現実的という声もあるが、平和を唱え続けないと平和は守れない。だが日米同盟下、安保政策偏重、教育行政の右傾化、社会保障の不足など憲法を無力化する動きもあらわ。政治家が他国の脅威を煽り「軍備増強」の掛け声が聞こえてきたら危険信号だ。戦争で潤うのは「死の商人」と「死の政治屋」だけ。人口減などと相まって市民経済の活性化を妨げている。
●「選挙区選出の国会議員は地元選挙区民の利益代表か?」
【私たちの考え】どの選挙区から選出されようが、国会議員は全国民のために働くことを憲法43条で義務づけられています。議員に選挙区への利益誘導を求めるのは違法で、選挙活動とは別物です。
【やや詳しく】憲法43条が「国民の代表」について次のように定義している。「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを構成する」。全国どこの選挙区から選出されようが、両院の国会議員はすべての国民のために働くことを義務づけられているのだ。地元選挙区民の利益代表であってはならない。国会議員が地元選挙区を大切にするのは分かるが、あくまでも優先すべきは全国民だ。それにもかかわらず、多くの政党や国会議員は「地元選挙区が最優先」と考えているふしがある。地元民の側にも、それを歓迎する風潮があるようだ。選挙演説での「甘い言葉」には注意したい。国会議員に対して地元への利益誘導を図るのも違法行為となる。
(以上)
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〔opinion12068:220527〕
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