乳幼児向けアニメと市場規模
- 2022年 6月 23日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
ぐずる孫の気を紛らわせる手ごろな動画はないかとYouTubeで探した。生後何ヵ月でもないから、日本語でも英語でもかまいやしない。日本語より英語のほうが色々あるだろうと「movies for babies」と入力したら、こんなにと思うほど出て来た。
昔なら、ビデオテープかDVDを買うか、借りてこなければならなかったのに、今はYouTubeでただで観られる。アマゾンのファイヤースティックでPCからテレビに送って大きな画面で観ている。もっとも観ているのは孫で、こっちはテレビをつけてアニメを選択する必要から見ているだけだが。あれこれ見ていて、つくりの違いに考えさせられてしまった。
いくつもあるアニメのなかで、双璧はCocomelonとDave and Avaの二つだろう。視聴者の数ではCocomelonにはかなわないが、つくりではDave and Avaにかなうものはないと思っている。
1. Cocomelon
アメリカの郊外のホワイトカラーの家庭の日常生活を舞台にしている。
断トツの視聴者を誇るCocomelonだけに、日本語に翻訳されている番組もある。日本語に翻訳されているものを英語のオリジナル番組と合わせてリストアップしておく。
1) かぜをひいたら ・ココメロン 日本語 – 幼児向け歌とアニメ ・CoComelon 日本語吹替版
6,221,553(約六二十万)回視聴、リリース:2021/10/30
Sick Song | CoComelon Nursery Rhymes & Kids Songs
1,773,533,082(約十八億)回視聴、リリース:2018/07/20
2) こうえんであそぼう ・ココメロン 日本語 – 幼児向け歌とアニメ ・CoComelon 日本語吹替版
6,612,340(約六六〇万)回視聴、リリース:2021/10/30
Yes Yes Playground Song – Sing Along | @Cocomelon – Nursery Rhymes | Moonbug Literacy
206,191,786(約二億)回視聴、リリース:2021/08/25
3) バスのうた ・ココメロン 日本語 – 幼児向け歌とアニメ ・CoComelon 日本語吹替版
1,156,416(約一一六万)回視聴、リリース:2021/10/30
Wheels on the Bus | CoComelon Nursery Rhymes & Kids Songs
3,977,491,153(約四〇億)回視聴、リリース:2018/05/24
2.Dave and Eva
「What country makes Dave and Ava?」と入力すると、EUとでてくるが、アメリカ文化としか思えない。
Googleでみたら、Dave and Avaの紹介サイトがでてきた。
https://tencoro.com/english/post-2244/
箇条書きされている評価は下記の通り。
「表情豊かなキャラクターが登場」「映像の質がトップクラス」「どれもストーリー仕立て」「賑やかでカラフル」
1) Row Row Row Your Boat | Nursery Rhymes and Baby Songs from Dave and Ava
19,160,504(約二千万)回視聴、リリース:2016/07/07
2) Who Took the Candy? Halloween Songs by Dave and Ava
2,400,440(約二四〇万)回視聴、リリース:2018/10/02
3) Five Little Firemen – Fire Truck | Baby Songs and Nursery Rhymes | Dave and Ava
50,932,425(約五千万)回視聴、リリース:2020/02/26
3.日本の乳幼児向けアニメ
YouTubeで「乳幼児向けアニメ」と入力して検索したら、いくつもでてきた。視聴回数の多いものを三つリストアップする。
1) どうぶつたちの いないいないばあ!知育あそび【赤ちゃんが喜ぶ・子ども向けアニメ】Animal peekaboo animation
2,023,529(約二百万)回視聴、リリース:2020/09/19
2) 【アンパンマンといないいないばあ!】人気の読み聞かせ ~赤ちゃんが泣き止む 手遊びアニメ~
5,746,442(約五七〇万)回視聴、リリース:2020/01/10
3) 新生児から◎【赤ちゃん喜ぶオノマトペ】赤ちゃん泣き止む 喜ぶ 笑う 寝る 音アニメ!生後すぐから認識しやすい白黒赤★- Onomatopoeia animation
992,139(約百万)回視聴、リリース:2021/07/06
アニメが好きだから日本に留学したとか、仕事を探したという海外からの若い人たちの話を聞いてきた。日本は世界に冠たるアニメ大国だと思っていたが、乳幼児向けのアニメを見ると、どうも聞いてきたことと様子が違う。英語のアニメを一度でも見てしまうと、つくりの違いのせいで、もう日本語のアニメは見る気がしない。なにがこの違いを生みだしたのか?開発環境もあれば製作者の能力の違いもあるだろうが、根本的な原因は市場の大きさだろう。英語であれば、世界中に視聴者を求められるが、日本語ではほぼ百―パーセント日本人家庭に限られる。日本語を勉強しようと思う海外の学生もいるだろうが数は少ないし、乳幼児向けのビデオは教材にはならない。
市場規模が番組作成の予算を決めてしまう。乳幼児向けのアニメが、英語の強みと日本語の弱みを端的に現わしている。
もっとも市場規模が限られていて成長を望めないところに海外(日本語を母語としない)から参入してくる可能性はほとんどないから、ニッチの市場でいきていこうという人たちにとっては住みやすいところかもしれない。日本語が海外への障壁になっていると同時に海外からの障壁にもなっている。放っておけば必然としてガラパゴスになるが、じゃあどうすればという案は浮かばない。ことは乳幼児向けのアニメに限ったことではない。
2022/6/16
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12143:220623〕
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