政党の大会というけれど― ―― 中国共産党第20回党大会について1
- 2022年 10月 4日
- 時代をみる
- 中国共産党田畑光永
今月16日から中国共産党の第20回党大会が北京で開かれる。中国という大国の政権党の定期大会であり、5年に1度の開催だから、ここで次の5年間、国の支配機構の要所を占める幹部たちの顔ぶれと施政の基本方針が決まる。いったん支配機構の顔ぶれが決まれば、それが5年間も変わらないというのはずいぶん異常に見えるが、中国ではトップに立つ共産党の総書記という役職は慣例として2期までは連任できるとされてきたから、いったんトップに立てば10年はその地位に留まれることになっている。
ただ、その「慣例」に従って10年できっちり辞めた人はこれまでに実は1人しかいない。もともとこの「2期10年で交代」という慣例は、1989年に大規模な民主化運動が起こり、それへの対処が悪いと時の総書記、趙紫陽が鄧小平たち長老によってトップの座を追われ、鄧小平がその後任に上海のトップだった江沢民を決めたあたりで、毛沢東時代のような絶対的な最高指導者はもはや時代にそぐわないということになり、1992年の党大会で「10年」が相場となり、江沢民が2012年にやめたのがその最初の該当者となったのである。
江沢民は1992年、1997年の2回の党大会で総書記に選ばれたのだが、その前に1989年から1992年までの3年があるので、実質は13年間、総書記の椅子に座り続けた。そして次の胡錦涛が初めて2002年、2007年の2回の大会を経て、2012年に習近平と交代した。
革命政党の指導者といえば、絶対的な存在という根拠のない慣習からようやく抜け出して、10年という短くない任期とはいえ、定期的な交代が実現したのだが、2人目の習近平が早くもそれをご破算にして10年以上の居座りをねらい、それを果たしそうなのが16日からの第20回大会である。
となると、大会は習近平の居座りに賛成する派と反対する派の論戦、票争いの場になるはずと思いたくなるが、どうもそんなことにはなりそうもない。すでに大会の出席する代表(われわれの用語でいえば「代議員」)の選出はすべて終わったということなので、どんな人が選ばれるのかを見ておきたい。
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中国共産党は現在、9600万人余の党員を擁する。ざっと14憶人の全人口のおよそ15人に1人である。それが全国490萬の末端組織に所属している。平均すれば1組織20人程度である。その膨大な数の末端組織が全国38の大会代表選挙単位に分かれて所属し、総数2296人の大会代表が選ばれるという。
その38という選挙単位の構成は明らかになっていない。おそらく北京市とか湖南省とかの全国の一級行政区30(台湾省を含む)と中央の行政官庁や司法、軍隊など部門別全国組織に割り振られていると思われる。
そして今度の大会代表の選出作業は、新華社電(9月28日)によれば、すでに昨年の11月に始まり、今年の7月にはすべて終わっている。
38の選挙単位が総数2296人(平均すれば1単位ざっと60人)の代表をどういう手順で選ぶかだが、ここから先はさっぱり分からない。ただ、党トップの党書記である習近平がいちばん南の広西チョワン族自治区の代表として当選したというニュースがあった。習近平はこの地方とは縁もゆかりもないのだが、その地の代表として党大会に出席するといいうのである。
もっとも党のトップが地方の選挙単位から選ばれるのは党大会だけではない。毎年春に開かれる全国人民代表大会という代議機関では、このところ習近平は北の内蒙古自治区の代表として会議に参加し、しばらく前は貴州省という西南の小さな省から選ばれていた。どちらも個人的なつながりはない。
要するに地味な場所から偉いさんが代表として大会に出るということで、その地方を喜ばせようということらしい。果たして地方が喜ぶのかどうかはわからないし、ほかの幹部もそういう政治配慮で「選挙区」が選ばれるのか否かも不明だが、とにかく「広西チョアン族人民は大喜び」とニュースは伝えている。
さて、問題はそんなことより、各単位それぞれ数十人の代表をどう選んだかである。先の9月28日付新華社電は、全国の党大会代表の名簿が発表されたと報じたが、そこはこういう書き出しである。
「習近平同志を核心とする党中央の強い指導のもと、全国38の選挙単位では細心に組織され、きちんとした段取りの選挙で、党の第20回大会の代表が誕生した。彼らは党員全体の中の選りすぐりであり、各級党組織の入念な選抜を経た優秀分子である。初心を忘れず、使命を肝に銘じ、重責を担い、引き続き奮闘せよ」。
そして選ばれた代表に対しては、
「党中央は要求する。20回党大会代表は思想、政治、能力、作風、業績、職歴など6項の条件を備え、信念が硬く、政治的に頑強、作風は優良、清廉潔白な代表であることを」。
政党の大会代表とはいえ、我々の常識のように執行部に論争を挑んだり、業績を批判したりすることは誰も期待せず、本人たちもそんな意気込みを持ってはいない。というより、そういう人間は排除して、いわゆる「しゃんしゃん大会」のお囃子に徹することが求められている。
それでは今度の大会では、「しゃんしゃん」と習近平の党総書記3選(即、来春の全国人民代表大会での国家主席3選)が決まり、中国はなにもなかったように来年を迎えるのか、となると、必ずしもそうとは言えないという予感がぬぐえない。次回はそれを考えてみる。
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