「さよなら原発」の声高く -原水禁の世界大会、福島で幕開け-
- 2011年 8月 2日
- 時代をみる
- 原水禁岩垂 弘
「ここ福島から『脱原発』の声をあげ、大きな行動に結びつけていきましょう」。原水爆禁止日本国民会議(原水禁、旧総評系)の被爆66周年原水爆禁止世界大会・福島大会が7月31日午後3時から、福島市で開かれたが、3月11日に世界最高レベルの事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所の地元とあって大会場は「脱原発」一色。主催者の予想を上回る参加者が全国各地から集まるなど、盛り上がりをみせた。
福島その一 原水禁世界大会・福島大会の会場を埋めた参加者
原水禁主催の夏の世界大会といえば、これまでは8月初旬に広島、長崎を中心に開かれてきた。今夏も広島、長崎、沖縄で世界大会を開くが、それに先だって初めて福島で世界大会を開いた。もちろん、福島第一原発の事故を意識してのことで、原発立地県での世界大会は初めて。
大会場は福島駅前のホテル8階のホール。国際会議は別として原水禁がホテルで大会を開くの異例だが、この日、福島市議選があり、公共施設がそれに使われたことから大会用の会場を確保するのが難しくなり、やむなくホテルのホールをそれに充てたためだ。
原水禁は会場に600のイスを用意したが、瞬く間にそれが埋まり、入りきれなかった参加者は会場内でずっと立ちつくしたり、場外に溢れた。主催者発表は850人。
大会参加者は東北、関東各県からの参加者が目立ったが、労組員が多かった。開会前、ホテルの入り口で会場に向かう参加者を見ていたら、自治労、日教組、国労、全水道、全港湾、社民党などの旗やのぼり、横断幕をもった人たちが多かった。
のぼりや横断幕に書かれた文字はいずれも原発に関するものだった。「脱原発」「さよなら原発」「原発なしで暮らしたい」「原発のない未来を!」「すべての原発を廃炉に」「子どもたちを放射能汚染から守れ」等々。
主催者あいさつに立った川野浩一・原水禁議長は「われわれは、原水禁初代議長の故森滝市郎氏の『核と人類は共存できない』という呼びかけに応えて原爆と原発に反対する運動を続けてきたが、そのことは正しかった。が、核兵器廃絶に偏り、反原発が弱かったことを反省せざるをえない」と述べ、「これからは、ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・フクシマの運動を進めよう。福島第一原発の事故を最後の原発事故にしよう」と呼びかけた。
福島第一原発と福島第二原発の中間点に住んでいて被災し、いまなお秋田県に避難を余儀なくされている石丸小四郎さん(双葉地方原発反対同盟)は「原発事故により、福島県民20万人が県内外に避難を強いられている。20万人といえば県民200万人の10%である。それほど多くの県民が放射能を怖れて逃げ回っているのだ。そればかりでない。子どもたち10万人が屋外の活動を禁止されている。こんな理不尽、不条理が許されていいものか。病弱者、酪農家、農民の自殺も増えている。『直ちに健康には影響ない』と言い続けてきた政府を許せない。国がこんなにでたらめとは思わなかった」と報告した。
ジャーナリスト・ノンフィクション作家の鎌田慧さんは「原発体制を越えて 人間の未来へ」と題して講演したが、その中で「40年近く原発反対を書き続けてきたが、今回の事故を阻止できなかった。どうして頑張りきれなかったかという悔いが残る」と述べ、「今回の事故を機にイタリア、ドイツ、スイスは原発をやめて自然エネルギーを活用する方向に歩み出しているのに、残念ながら日本はまだそうなっていない。私たちの力で脱原発の運動をもっと大きくし、政府に脱原発へのスケジュールと自然エネルギーへの方向を打ち出させよう。最近、『減原発』なんていうことを言い出す人が出てきた。これは妥協の産物だ。『減原発』でなく、あくまで脱原発を目指さなくてはいけない」と訴えた。
大会は最後にアピールを採択したが、そこには「事故は収束に至っていません。収束に向けた取り組みは長期にわたるものと推測され、その間さらに多くの被害が拡大されようとしています。私たちは一日も早い事態の収束を求め、東京電力・政府関係者のさらなる努力を強く要請します」「今必要なことは、放射能汚染の実態や原発事故の現状に関するきちんとした情報公開、避難を強いられている方々の生活保障、地表からの放射性物質の除去そしてヒバクを最小限に抑える施策などに私たちは全力を挙げて取り組んでいくことを誓います」と述べられている。
原水禁の福島大会に先立ち、この日午後1時から、福島市内の「街なか広場」で、「放射能のない福島を返せ!原発のない福島を求める県民集会」が開かれた。福島県平和フォーラム(旧総評系)の主催、原水禁の後援で開催され、雨の中を、原水禁の福島大会に参加するために同市を訪れた人たちや地元の人たちら1700人が集まった。主催者あいさつや被災者の報告、集会アピールの採択があった後、参加者全員で市内をデモ行進した。
一部参加者の注目を集めたのは、県民集会の賛同団体18の中に社民党福島県連合、原子力情報資料室などと並んで日本共産党福島県委員会、新日本婦人の会福島県本部の名前があったことだ。どうやら、福島県では脱原発で社民党と共産党の共闘が成立しているようだ。
福島その二 福島市内を行進する「原発のない福島を求める県民集会」の参加者
福島その三 福島市内を行進する「原発のない福島を求める県民集会」の参加者
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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