受け売りこそが平和の哲学?
- 2023年 1月 20日
- 評論・紹介・意見
- ブルマン!だよね
ピースフィロソフィー(代表乗松聡子)がちきゅう座に
「CIAの宿敵シャルル・ド・ゴールの孫が、欧米のウクライナ政策を非難する」なる記事(単なるインタビューの全訳)を寄せている。CIAの宿敵シャルル・ド・ゴールの孫が、欧米のウクライナ政策を非難する:ジェレミー・クズマロフ(日本語訳)Grandson of Charles de Gaulle, an Old CIA Nemesis, Condemns West’s Policy in Ukraine: Jeremy Kuzmarov (Japanese Translation) | ちきゅう座 (chikyuza.net)
まずは、乗松氏の沖縄辺野古基地反対の主張をみると、乗松聡子さん(ピース・フィロソフィー・センター代表) | オール沖縄会議 公式ウェブサイト | 沖縄の基地問題について知ってほしい。 私たちは「オール沖縄会議」です。 (all-okinawa.jp)
辺野古基地反対はいいとして、「米国がアジア太平洋戦争で、米国は大日本帝国を倒すだけでは収まらず80年近く経った今も日本と朝鮮半島の南側を軍事占領したまま」だとしているが、韓国はいざ知らず、米軍基地の日本所在は、「軍事占領」とするのは不適切で、80年の間にいくらでもご退場願う機会は、それこそそうした政治運動が弾圧されているわけでも何でもないのだから、選挙民の意思でできたはず。思想と集会、政治活動の自由が生きているのだ。フィリピンを見てほしい。1992年には米軍完全撤退、2020年には比米地位協定の破棄など、もちろん揺り戻しや紆余曲折などあるにせよ、フィリピンの選挙民の支持に裏付けられた自主的な意思が働いているではないか。日本の選挙民は80年の間、米軍駐留を結果として認めてきている、それだけのことではないか。それを軍事占領とは日本の選挙民の意思決定を見下しているとしか思えないのだ。反権力的であたかも民衆の側に寄り添っているような外見の裏では、その実、度し難い民衆蔑視が働いている。
ところで、本題?のドゴールの孫と称する人物とのインタービューだが、オリジナルが掲載されたCovertAction Magazine.はどうやら反米国帝国主義を掲げる、なかなかに頼もしいサイト。それにのったインタービューを乗松氏はわざわざ全文日本語訳して投稿してきた。ここにも何か大衆蔑視のにおいが漂う。今時ネット上ではAIを用いた翻訳アプリがあふれかえっているなか、ただ日本語へ翻訳しただけでなにか有意な情報を提供できるなどと、思い違いしてはいまいか。
で肝心のインタビューの中身だが、これが実にお粗末というかいかがわしい。
ロシアの欧州への天然ガス供給制限をアメリが誘導して、自国の天然ガスを4倍から7倍の値段でガスをヨーロッパに売っているなどと、お孫ちゃんは非難しているのだが、天然ガスはそのままでは輸送できず、いったん液化天然ガス(LNG)に変更してからでないと、海上輸送できない。よってアメリカ国内市場価格、これはガスのままの状態に、超低温環境でのLNG化のコストと、海上輸送コストが加わって、欧州港渡し価格は跳ね上がるのだ。以下のサイトにその辺の事情が詳しく出ているので、ぜひ参照いただきたい。
天然ガス・LNG関連情報|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト
このページに掲載のグラフのうち、JKMは日本・韓国渡しのLNG価格、HHがガス状態の米国国内価格のベンチマーク、TTFが欧州基準価格とされるオランダ渡しの天然ガス価格で、極低温で液化して(-162℃)それをタンカーで保冷状態で運輸しなければならず、地域間でそもそもから価格差が大きい。そのことをこのお孫ちゃんは知ってか知らずか前述のような非難をしているわけだ。これで企業コンサルタントとはおこがましい。
さて、ロシアのウクライナ侵攻はアメリカとNATOが引き金を引いた責任があるのだと、よくあるロシア弁護論をまくしたてているが、この論法で行くとナチスドイツが侵略戦争に踏み入れたのは、植民地解体・過大な賠償金賦課・再軍備禁止などでドイツを追い込んで、ナチの台頭の引き金を引いた、フランス主導によるベルサイユ体制に責任があるのだといって、ナチを弁護することになるが*、この輩の爺様は抗ナチスドイツ戦の英雄ではなかったのか。今生きていたらどうコメントするか見ものだ。本当にこのお方ドゴールの孫なのか。
*日本の西太平洋・東アジア侵略戦争も、引き金を引いたのは満州即時放棄などを要求するハルノートに、従って米国に責任があるのだという論理も同工異曲だろう。
なるほど、正体不明の御仁のインタービューをそのまま受け売りする、そうして責任転嫁して侵略者を弁護する、それが「平和の哲学」というわけだ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12748:230120〕
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