本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(396)
- 2023年 2月 4日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
大恐慌とハイパーインフレ
現在、海外では、「債券バブルの崩壊」に対して、人々の注目が集まるとともに、「これからどのような展開が予想されるのか?」について、いろいろな議論が出始めている状況でもあるが、実際には、「1929年の大恐慌型の混乱か、それとも、1923年のドイツ型のハイパーインフレか?」などである。また、「これから未曽有の規模での金融大混乱が発生する」という点には、多くの人が理解を深めているものの、一方で、「どのような商品に投資すべきか?」には、いまだに悩んでいる状況とも言えるようである。
別の言葉では、「ジェットコースターのように乱高下する金融市場」を見て、多くの投資家が、「何が、本当に安全な資産なのか?」を真剣に考え始めるとともに、「過去に、どのような大事件や混乱が発生したのか?」を調べ始めた状況のようにも感じられるのである。つまり、私自身が、「1987年のブラックマンデーに衝撃を受け、その後、歴史を遡り、さまざまな事件を研究した状況」が、再度、多くの人々で繰り返されている状況のことである。
そのために、今回は、再度、「大恐慌の原因」や「過去のハイパーインフレの実情」について簡単に説明させていただくが、基本的には、「大恐慌と呼ばれる事件は、1929年のアメリカだけに特有のものだった」という事実を理解する必要性があるものと考えている。つまり、「19世紀のイギリスで発生した恐慌」は、単なる景気変動がもたらしたものだが、「1929年のアメリカの大恐慌」については、「誤って金融引き締めを実行し、その結果として、民間銀行の連鎖倒産に繋がった」という状況だったのである。
別の言葉では、「国家の財政」には問題がなかったものの、「1923年のハイパーインフレが再来する可能性」に怯えた金融当局者が、急速な金融引き締めを実施した結果としての大事件だったのである。しかし、一方で、「過去100年間に30か国以上で発生したハイパーインフレ」に関しては、「国家の財政破綻」により「国家が発行する通貨への信用喪失」が根本的な原因だったことも見て取れるのである。
そして、これから予想される展開としては、「先進各国の政府と中央銀行が、どのような金融政策を実施するのか?」に掛っているとも言えるのだが、実際には、今までと同様に、「取れる手段は、必ず、実行する」という展開が予想されるものと考えているために、今後は、「紙幣の大増刷」が実施されることにより、「大恐慌ではなく、ハイパーインフレを選択する可能性」が高まっているものと考えている。(2023.1.11)
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通貨制度の寿命
現在の「世界的な金融混乱」の根本的な原因としては、基本的に、「通貨制度の寿命」が挙げられるものと思われるが、実際には、「ケインズ」が指摘する「通貨制度の寿命は約50年」という歴史的な真理のことである。つまり、「1971年のニクソンショック」をキッカケにしてから始まった「現在の信用本位制と呼ぶべき通貨制度」については、すでに、「通貨制度の寿命」を迎えているものと考えられるのである。
別の言葉では、「20世紀の初頭」から始まった「実体経済の急劇な成長」に伴い、それまでの「金本位制」についても、徐々に、変化を遂げてきた状況だったが、実際には、「金貨本位制」から「金地金本位制」、そして、「金為替本位制」へと、「通貨に対する金の役割」が減少していったことも見て取れるのである。つまり、「金(ゴールド)は、過去の野蛮な遺物である」というケインズの指摘のとおりに、「1971年以降、通貨に対する金(ゴールド)の役割が、完全に失われた状況」となったのである。
より詳しく申し上げると、5000年前に発明された「通貨(お金)」については、基本的に、「金(ゴールド)が、常に、お金だった」という状況だったが、「約800年間にわたり継続した西洋の物質文明」の末期では、「通貨の本位(根本)が、単なる信用や錯覚に変化した状況」となったのである。つまり、現在では、「5000年におよぶ通貨の歴史よりも、50年間の現実の方が重んじられた状態」となっており、実際のところ、「単なる数字が、命よりも大切なお金である」と認識される状況となっているのである。
そして、この事実を象徴するのが、「目に見えない金融ツインタワー」、すなわち、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」だと考えているが、現在では、ご存じのとおりに、「世界的な金利上昇により、金融ツインタワーの崩壊が始まった状況」とも言えるのである。別の言葉では、「お金が神様となった時代」の終焉とも言えるが、実際のところ、今までは、世界中の人々が、「お金さえあれば何でもできる」と錯覚した状態だったのである。
このように、「歴史の醍醐味」として言えることは、「現在が、1600年前の西ローマ帝国と同様に、現在、マネーのバブルが弾けるとともに、新たな時代への移行が始まる状況」であり、また、今後の展開としては、「文明法則史学が指摘する800年ごとの東西文明の交代」でしか説明がつかないものと思われるが、この時に必要なことは、「11次元にまで進化した自然科学」を「3次元の社会科学」に応用することだとも感じている。(2023.1.14)
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日本国家の国際的な地位
自民党の麻生副総裁によると、「頼りないと言われた岸田首相のもとで、現在、日本の地位が高まりつつある状況」と述べられているが、この点には、大きな注意が必要なものと感じている。つまり、「国家の地位」を測るバロメーターとして、現在の世界では、「軍事力」や「資金力」が想定されているようだが、今回の「岸田首相の海外歴訪」で見えてきたことは、「日本の軍事力増強と資金的なひっ迫」だったようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、「西暦1200年から2000年前後の西洋の時代」では、「1600年前に崩壊した西ローマ帝国」と同様に、「軍事力と資金力で、他国を圧倒する状況」が、世界的に求められてきたものと思われるのである。つまり、「帝国主義的な政策により、他国を植民地化する状況」のことだが、この点については、「明治維新以降の日本」に象徴されるように、「軍事面の膨張の後に、資金面での膨張が発生した展開」だったようにも感じている。
別の言葉では、「唯物論的な価値観」が支配する西洋的な時代においては、「シュペングラー」が指摘するとおりに、「最後の200年間に、貨幣が支配する時代が訪れる状況」が発生する可能性のことである。つまり、「実体経済の成長が、その後、マネーの大膨張を生み出す状況」のことでもあるが、この時に発生するのは、「社会の巨大化に伴い、個人の相対的な力が弱くなるとともに、無力感を覚える状況」とも理解できるのである。
そして、このような「800年毎の東西文明の交代」により、「人類が、絶えざる進化と創造を経験する展開」を想定しているが、この時の問題点は、「変化への対応」が難しい状況だと感じている。つまり、「進化のメカニズム」としては、「ダーウィンの自然淘汰説」よりも「突然変異説」が認証され始めていながらも、実際の状況としては、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」のように、「急激、かつ、突然の社会情勢の変化」に対しては、大きな拒否感、すなわち、「そのような事態が、二度と発生するはずがない」というような認識を持ちがちになる状況のことである。
そのために、今後の動向としては、「大衆が、どのように考え、どのような行動を取るのか?」に、大きな注目をしている状況でもあるが、実際には、「シュペングラー」が指摘するような「大衆の分裂」が発生する事態が想定されるものと感じている。つまり、「国家への信用」が失われることにより、「軍事面での維持力」にも問題が発生し、その結果として、「小さな数多くの共同体が発生する可能性」のことである。(2023.1.15)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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