中国政府の「ウクライナ停戦」に期待を寄せる。
- 2023年 2月 26日
- 評論・紹介・意見
- ウクライナ澤藤統一郎
(2023年2月25日)
プーチンとは唾棄すべき人物である。いずれ、ヒトラー・スターリンとならぶ悪名を歴史に残すことになろう。習近平も、チベット・ウイグル・モンゴル・香港の人権弾圧で名を上げた人物。これに加えて、将来台湾を侵略するようなことがあれば、堂々プーチンと肩を並べてヒトラー・スターリン級の悪名を轟かすことになる資格は十分である。
ウクライナ戦争開戦1週年となった今、プーチンの戦争に、習近平が「対話と停戦」を呼び掛けている。なんとなく釈然としない。釈然としないながらも、停戦が実現するのなら、誰が呼び掛けたものであれ結構なことだと考えなければならない。
習近平提案が成功するか否かは定かではない。むしろ欧米では非観的な見方が圧倒的だというが、ロシアもウクライナも関心を寄せていることは間違いない。プーチン・王毅会談は既に済み、ゼレンスキーは習近平との会談を申し込んでいるという。習近平、嫌な奴ではあるが、戦争をやめさせることができるのなら、応援の声を惜しんではならない。
中国政府が発表したのは、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する文章。「ロシアとウクライナが互いに歩み寄り、早期に直接対話を再開し、最終的には全面的停戦で合意することを支持する」と表明した。「対話はウクライナ危機を解決する唯一の道だ」と訴え、国際社会にも協力を求めている。
ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆するなか、「核兵器の使用や威嚇に反対」「原子力発電所などの核施設の攻撃に反対」とも記した。「主権や独立、領土保全は尊重されるべきだ」とする原則的な立場も盛り込んだ。
この方針説明書は、以下の12項目の提案となつている。
①各国の主権の尊重
②冷戦思考の放棄
③停戦
④和平交渉の開始
⑤人道的危機の解消
⑥民間人や捕虜の保護
⑦原子力発電所の安全確保
⑧戦略的リスクの提言
⑨食糧の外国への輸送の保障
⑩一方的制裁の停止
⑪産業・サプライチェーンの安定確保
⑫戦後復興の推進
これだけではよく分からない。主要な項目の要旨は次のとおりとされている。
①「各国の主権の尊重。国連憲章の趣旨と原則を含む、広く認められた国際法は厳格に遵守されるべきであり、各国の主権、独立、及び領土的一体性はいずれも適切に保障されるべきだ」
②「冷戦思考の放棄。一国の安全が他国の安全を損なうことを代償とすることがあってはならず、地域の安全が軍事ブロックの強化、さらには拡張によって保障されることはない。各国の安全保障上の理にかなった利益と懸念は、いずれも重視され、適切に解決されるべきだ」
③「停戦。各国は理性と自制を保ち、火に油を注がず、対立を激化させず、ウクライナ危機の一層の悪化、さらには制御不能化を回避し、ロシアとウクライナが向き合って進み、早急に直接対話を再開し、情勢の緩和を一歩一歩推し進め、最終的に全面的な停戦を達成することを支持するべきだ」
両者に呑ませようという提案が玉虫色のものになることは避けがたい。一項目ずつあげつらえば、けっしてできのよいものではない。しかしなお、仲裁はときの氏神、せめて停戦のための対話実現の、その糸口にでもなることを期待したい。
戦争が長引けば、取り返しのつかない惨禍が拡大することになるのだから。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2023.2.25より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20890
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〔opinion12850:230226〕
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