韓国 出生率0.78の衝撃
- 2023年 3月 4日
- 評論・紹介・意見
- 出生率小原 紘韓国
韓国通信NO715
昨年(2022年)の韓国の合計特殊出生率※(以下出生率)は過去最低の0.78だった。4年前に出生率1.0を割り込んだまま低下に歯止めがかからない。 一昨年の日本の出生率は1.3だった。岸田首相は「異次元の少子化対策」を重要課題として表明。両国とも国家存亡の危機に立たされた感がある。 (※合計特殊出生率とは15~49歳までの既婚・未婚問わない全女性の年齢別出生率を合計したもので、女性人口の年齢構成の違いを除いたその年の出生率)
<このまま行くと…>
今世紀末には日本の人口は5300万人、韓国は3000万人以下と予想されている。
日本は過去100年間に3倍以上人口が増えた。人口が減少すれば食糧不安もなく自然環境にもプラス、ゆとりある生活ができるとのんきなことは言っていられない。財政、教育、社会保障面などあらゆる仕組みの破綻が予想される。山のように積み上げた国の借金を将来の世代に押し付けるわけにはいかないではないか。
世界最低を記録した韓国の議論を参考にわが国の少子化問題を考えた。
出生率の低下は先進国に共通する傾向である。ワシントン大学の研究チームは世界の人口が2064年をピークに世紀末は9憶人減少すると予測する。先進23か国の人口は半減、最も人口の多い中国もピーク時14億人から半減が予想されている。豊かになれば出生率が低下する一方、アフリカ地域の人口は今世紀末には3倍増の30憶人を超えるという。減少が予想される諸国は人口維持ラインの出生率2.1を目指すが効果は上がっていない。
<韓国と日本>
韓国からせめて「日本並み」にという声も聞こえてくるが日本人としては面はゆい。韓国政府はこれまで少子化傾向に手をこまねいてきたわけではない。児童手当、1歳以下の子どもがいる家庭に「親給与」の支給、新婚夫婦への経済支援。にもかかわらず一向に改善されなかった。
何故、韓国の若者たちが結婚をためらい、子どもをつくろうとしないのか。
住宅価格の高騰、就職難、不安定な非正規雇用職場、教育費の負担と激化する受験競争などがあげられる。女性たちからは仕事と家庭の両立の難しさの声があがる。韓国特有の事情とばかりは考えにくく、日本も似たり寄ったりだ。強いて言うならソウル一極集中による極度の住宅事情の悪さと若者の就職難は日本とは比較にならないほど厳しい。さらに儒教的束縛が根強く残る韓国社会を指摘する人も多い。
私は韓国から来た五人の女子留学生たちから韓国語を学んだが、一人を除いて独身である。彼女たちは大学院を卒業後、結婚より仕事を選んだ。唯一既婚者だった先生が自分のことを「家の奴隷」と嘆いていたことを思い出す。日本では想像できないほど女性に過酷な社会。また日本とは比較にならい学歴偏重社会、出世主義と肩書万能社会である。多くの若者は新自由主義社会の洗礼をうけ将来を展望できないでいる。若者たちの不満が噴出した結果、政権交代が生じたとさえ言われている。
生きづらさを抱えた韓国の若者たちが出生率を下げているのはわかるような気がする。だが事情は日本も五十歩百歩。程度の違いが出生率1.3と0.78に表れているに過ぎない。韓国から手本にしたいとまで言われる日本の出生率は改善する見通しは立っていない。 最新の『朝鮮日報』は―
「少子化対策は国をあげて取り組まねばならない。雇用、住宅、育児、教育、移民など、国のあらゆる政策を『出産・育児に優しい』という観点から見直すべきだ。今のままではこの国に未来はない」と危機感をあらわに警鐘を鳴らす。
<日本の将来は>
遅きに失したわが国の少子化対策は財源も具体策も明らかでない。「異次元」とふれこんだ対策を支持する人は少ない(所信表明演説直後の世論調査では朝日新聞・日経新聞とも支持しないが支持を上回った)。首相への不信感が背景にある。国防費倍増とセットになった感のある少子化対策には「愛情」のひとかけらも感じられない。首相の頭には人的資源(いやな言葉である)の減少に対する危機感ばかりがあるようで、結婚しない(できない)子どもを産まない人たちの生活がまるで見えていないようだ。カネをはずむから「子どもを産んで」という発想の安易さと貧しさ、庶民生活に対する鈍感さ、なれ合い春闘に見せる「新しい資本主義」のかたち、反省無き「安倍政治」の踏襲、統一教会との関係も清算しないまま、突如として方向転換した原発政策。戦争を前提とした軍事費倍増計画、閣議決定ですべて決める目に余る国会軽視。
戦前の「産めよ 増やせよ 国のため」の国策標語が思い浮かんだ。
それにしても日本はなんと不安に満ちた国なのだろう。敵基地攻撃能力では国民の命と財産を守れない。原発が安価で安全なエネルギーと言い出すお粗末さ。ミサイルを撃ち合えば多くの命が失われる。政府が国民に子どもを産んで欲しいとお願いする資格はない。
安心して子どもを産み育てることができる社会をつくるのが前提だ。生まれた子供たちを低賃金労働者として、愛国兵士として期待するだけではないか。
日本という国を存続させるために、ひょっとして諸外国、特にアフリカ諸国からの移民に期待する時期がいずれ来るかもしれない。
100年先を見据えた少子化問題と国の在り方について根本から考える時だ。金儲けのことしか考えない政治家や経済人の賞味期限は切れた。
フクシマを忘れない! 再稼働を許さない!
さようなら原発 全国集会のお知らせ
2023年3月21日 春分の日 会場 東京代々木公園イベント公園
13時~オープニング 13時30分~トーク 落合恵子 鎌田慧さんほか
15時15分~デモ行進
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12868:230304〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。