SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】518 仲良しモロッコとイスラエル
- 2023年 3月 4日
- 評論・紹介・意見
- イスラエルサハラモロッコ平田伊都子西サハラ
「王室、議定書、首相府は、~神が彼を助けてくれますように~、国王ムハンマド6世がインフルエンザにかかったと発表しました。このため、国王陛下の主治医は、~神が彼を守ってくださいますように~、休息期間を守り、数日間旅行を避けるように勧めました。神が王陛下を守り、健康の恩恵を永続させ、長寿を与えてくださいますように」と、MAP(モロッコ国営通信)が王室声明を、2022年2月22日に報じました。
① ムハンマド六世モロッコ国王の病欠:
アラブのメディアは、モロッコのムハンマド6世国王が肺の急性ウイルス感染合併症のために困難な健康状態にさらされたと報じた。メディアは、ムハンマド六世モロッコ国王の病気と、彼が多くの外国訪問や外交会議をキャンセルしたと、伝えた。そのひとつの例に、スペイン首相を国賓招待し昼食会に招待した2月2日、国王は欠席で国王の写真が出席したという珍事がある。
スペインやフランスのマスコミは露骨に、ムハンマド六世モロッコ国王の危篤特集を組みだした。特にフランスの新聞は、モロッコ王の病床写真を掲載し「ムハンマド6世の時代は秒読みの段階に入った」と書いた。そして、後継者問題を取り上げた。
モロッコ王国は、王位は王の子孫の年長の男性の息子に渡されると定めているそうだ。現職の王に息子がいない場合は、男性の養子を迎え皇太子にし王位を継がせるそうで、いずれにしろ男系継承だ。ムハンマド六世は早々と長男のムーレイ・エルハサンを皇太子に任命している。ムハンマド六世の弟ムーレイ・ラシード王子がエルハサン皇太子の王位継承に異議を唱えず、マハゼンと称されるモロッコの表世界を仕切る裏世界の情報行政機関が承認すれば、ムーレイ・エルハサンがモロッコ国王に即位すると言われている。
モロッコ王国の外交・軍事・宗教の権限を一手に握っている国王の病欠で、「モロッコは手が付けられない大地震さながらのパニック!!」と、異教徒は勘繰るのだが、、
以外にも、観光王国は国王の病状に関わらず、客寄せのお祭り騒ぎを続けています。
② 国王不在のモロッコを預かるのは、ユダヤ人:
2022年11月22日、世界遺産のフェズで、<国連文明の同盟>フォーラムが華々しく開催された。アントニオ・グテーレス国連事務総長を始め、名だたる世界の要人が招待された。西サハラの独立運動を叩き潰すため、ムハンマド六世モロッコ国王は、<西サハラはモロッコ領土である>というスローガンを、あらゆる機会をとらえて叫んできた。金をかけたこのフォーラムの目的もそのためで、主催者のムハンマド六世モロッコ国王陛下は声明を準備した。が、ムハンマド六世は欠席し、国王顧問のアンドレ・アズレイが代読した。
自らユダヤ系モロッコ人を公言するアンドレ・アズレイは、1941年に大西洋岸のモロッコ港湾都市エッサウィラで生まれ、先代ハサン二世からムハンマド六世に至るまで国王顧問を務めてきた。超優秀なこのユダヤ人は、文化活動を通じてユダヤとイスラエルの宣伝に努め、イスラム教元祖ムハンマドの直系を自負するモロッコ宗教界を手なずけ、モロッコ王室外交の中枢にまで入り込んだ。
モロッコの農業専門家イブラヒーム・アル・ユシフィは、「シオニストの大麻工場がモロッコの農業に参画し、モロッコとシオニスト共同事業が大麻の世界的なパイオニアになるだろう」と発表し、「その投資価値は2026年までに570億ドル(7兆5895億円)に達すると予想される」と言及した。モロッコは2021年に、大麻の生産・輸出を国営化している。イスラエルにとって、こんな美味い儲け話はない。
仮に、ムーレイ・エルハサン皇太子がモロッコ国王を継承したら、離婚されている母のララ・サルマが王室に戻ることになる。ララ・サルマは2002年3月21日に民間人として初めてモロッコ国王と結婚し王室に入ったが、2016年頃にムハンマド六世の同性愛が原因で、王室を去った。
ララ・サルマの王室復帰で、もう一人の民間女性が、突然、欧州メデイアの脚光を浴びている。ユダヤ人の国王顧問アンドレ・アズレイの娘で、元フランス文化大臣を務めたユネスコ(国連教育科学文化機関)事務局長のオードレイ・アズレイ女史だ。モロッコや欧州のSNSが、新モロッコ国王誕生の暁には、オードレイ・アズレイが現在の首相・アジズ・アカンヌーチを引き継いで、モロッコ初のユダヤ人女性首相に就任するだろうと、騒いでいる。
③ イスラエル人入植者がモロッコ占領地・西サハラへ:
2月26日、ヨルダンでパレスチナ・イスラエル停戦交渉が始まった。が、ヨルダン川西岸では重火器武装したイスラエル人入植者たちが暴れまくった。
パレスチナ自治区にある古都ヘブロンは、イスラエル人入植地に囲まれ、なおかつ、街の真ん中をイスラエル人入植者コミューンに浸食されている。ヘブロンの中心にはイブラヒーム・モスクがあり、金曜日にはイスラム教徒が、土曜日にはモスクの地下にあるマクベラの洞窟にユダヤ教徒が、礼拝に来る。カーター米大統領が<アブラハムの血(1986年出版)>という本を著し、「ユダヤ教徒もイスラム教徒もキリスト教徒も、アブラハム(イスラム教ではイブラヒーム)という共通の先祖を冠している。仲良くなれないわけはない」と、ヒポクリットな主張をした。
しかし、1994年2月25日午前5時、イブラヒーム・モスクで夜明けの祈りを捧げる約800人のパレスチナ人の背後から、キリヤット・アルバ入植地に住むアメリカ出身ユダヤ入植者のゴールドシュテイがIMIガリル(イスラエル軍用突撃銃)を乱射した。
29人(実は60人)を殺し、125人(実は約200人)に重傷を負わせた。ムアーズ少年の父は、彼の目の前で鮮血に染まって即死した。
筆者はムアーズの家に泊まり込んで、何度も取材をさせてもらった。ムアーズ家は父さんを殺した犯人のキリヤット・アルバ入植地ともう一つの入植地に挟まれている。毎土曜日には、二つの入植地からユダヤ教徒入植者たちがムアーズ家の前を通って、イブラヒーム・モスクの地下洞窟に礼拝に出かけていく。彼らは大人も子供も、男も女も、イスラエル製ウージー短機関銃などで武装している。「クソ!」ムアーズの呪いの声が、今も耳から離れない。
2023年2月25日、ヘブロンのイブラヒーム・モスクに向けて、大虐殺追悼デモが行われた。イスラエル人入植者を護衛するイスラエル軍が駆け付け、催涙弾とゴム弾でデモ隊を蹴散らした。事件から約30年、ヘブロンに平和はない。<仲良くなれる>わけがない!
2019年トランプ政権末期に、ユダヤ人で娘婿のクシュナーが<モロッコによる西サハラ領有権承認>と引き換えに、モロッコにイスラエルとの国交正常化を呑ませた。個人が勝手に力に物を言わせて西サハラ領土を乗っ取るという、国際法違反に欧米も国連も<国交正常化は平和に繋がる>と、むしろ、歓迎した。それ以来、ユダヤ人のアンドレ・アズレイはおおっぴろに、イスラエルと組んでモロッコ占領地・西サハラの開発に乗り出した。
ユダヤ人たちは、西サハラ被占領民の抵抗運動が根強い首都のラユーンではなく、ダハラ漁港に目をつけて、あっという間に寂れた漁村をウィンドサーフィン、カイトサーフィン、パラセーリングなどで賑わうマリーン・リゾート地に変えてしまった。数々の文化イベントも、ダハラで開催されるようになった。
ポリサリオ西サハラ難民軍との戦争に備えて、1月16日と17日にラバトで、初のイスラエル・モロッコ二国間軍事協力会議が開かれた。
今やイスラエルは着々と、モロッコ占領地・西サハラにイスラエル人入植者を送り込む作戦を進行させている。国王陛下のご容態とは関係なく、、
モロッコは<モロッコ化>をスローガンにモロッコ占領地・西サハラの侵略を既成事実化する政策を進行させてきました。 まんまと騙された! 実は、<イスラエル化>だったんですね?! お利巧で狡いモロッコ・イスラエル仲良しカップルの最終目的は、西サハラをイスラエル人入植天国にするつもりなんだ!!
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2023年3月5日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12869:230304〕
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