童子丸開〈スペイン紙が伝える9・11:「日本の9・11反原発デモ」&「911事件」〉
- 2011年 9月 14日
- 時代をみる
- 911事件スペイン紙報道反原発デモ松元保昭童子丸開
みなさまへ 松元
バルセロナの童子丸さんが、「日本の9・11反原発デモ」&「911事件」のスペインの報道について投稿しましたので紹介いたします。
ニューヨーク・グランドゼロでの9・11セレモニーが、あらためて米国を「犠牲者」と印象づけ世界中に放映されました。しかし米国版「反テロ戦争」物語は大きく喧伝されましたが、「真の犠牲者」は隠蔽されたままです。9・11「10周年」、確かなことは、疑問点がひとつも明らかになっていないことです。日本の3・11もまた、隠蔽が重ねられています。
原文はスペイン語との対訳になっていますが、ここでは日本文だけ紹介します。
http://doujibar.ganriki.net/fukushima/Japanese_antinuclear_demonstration_reported_by_el_mundo.html
スペイン紙が伝える9・11:「日本の9・11反原発デモ」&「911事件」
======以下転載=====
《スペイン紙が伝える9・11:「日本の9・11反原発デモ」&「911事件」》
2011年9月11日は、奇しくも、あの911事件発生から10年目、そしてフクシマ事件(原発事故)から半年となる日でした。私は毎日スペインの新聞やテレビで世界のニュースがどのように報道されているのかを見続けているのですが、その中からこの特別な日に関して目に留まった点を2つ、お知らせしたいと思います。
一つはエル・ムンド紙が掲載した日本の反原発運動についての記事、もう一つが同紙の特集を中心に911事件についての取り扱いについてです。
■【東京で行われた9月11日の反原発デモ】
スペインを代表する日刊紙エル・ムンド(インターネット版)が、9月11日の東京での反原発デモを即刻伝えています。元情報はスペイン語通信社Efeです。
http://www.elmundo.es/elmundo/2011/09/11/internacional/1315737540.html
下の方にその記事の写真と全文の和訳を載せておきます。ユーラシア大陸の西の果てでどんな熱い目が日本に注がれているのか、お分かりください。
日本でこの日の抗議活動を伝えている新聞は、インターネット版で見る限りほとんど目立たないようです。あったと思ったら…、やっぱりヨミウリ…。まあこれがせいぜいでしょうか。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110912-OYT1T00004.htm?from=main7
『脱原発デモで12人逮捕、機動隊員暴行などで
東京・新宿で11日に行われた「脱原発」を訴えるデモで、警備中の機動隊員に暴行を加えるなどしたとして、警視庁は同日、デモの参加者の男11人を公務執行妨害の疑いで、デモを主催した「素人の乱」の二木信容疑者(30)を都公安条例違反の疑いでそれぞれ現行犯逮捕した。
発表によると、男らは11日午後、東京都新宿区の路上で、警備中の機動隊員らの顔を殴るなどした疑い。二木容疑者は規定に反し、車道で行進していたデモの隊列を歩道にまで広げた疑い。
JR新宿駅周辺で行われたこのデモには約2200人が参加し、「原発はいらない」などと訴えた。 (2011年9月12日00時20分 読売新
聞)』
機動隊がデモ参加者をボカボカに殴ったり蹴飛ばしたり引きずったりして、その警棒や拳骨を払おうとしたら「公務執行妨害」…。身を守ろうとして伸ばした手がたまたま機動隊員の顔に触ったら「顔を殴る」…。どうせそんなところでしょう。何十年も昔から同じ風景です。二木さん、くじけないでください。
実はこういった武装警官のやり口はスペインでも同じなんです。先日も、ローマ教皇来西に反対する大規模デモがマドリッドで起こったときに、女性の顔を機動隊員が殴ったり、逃げようとする男性を警棒でしつこく打ち続ける、男性が体中をけられて道路に倒れて動かなくなる、といった様子が携帯のビデオに納められ、それが即刻YouTubeで流されました。そして次の日にはその映像がTVニュースで放映され、新聞でも大きく書きたてられて大問題になり、さすがの警察もその非を認めて暴行した警官を処分せざるを得なくなりました。どんな場合でも映像の証拠は大切ですね。ただしスペインよりも民主度が高いとは思えない日本のマスコミがその種のYouTubeビデオを放映する保証はありませんが。
ひょっとするとこのデモについて、もうちょっとましなことを書いている日本の新聞があるのかもしれませんが、このエル・ムンド紙と比べてどうなんでしょうか。以下に和訳(童子丸開による暫定訳)を、対訳の形で掲げておきますので、情報の逆輸入の一例にしてください。(引用や転送はどんどんとやってくれてかまいません。)
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『反原発の抗議行動がフクシマの危機から半年を告げる』
(写真についている説明:核エネルギーに反対する日本の抵抗者たち/Efe)
※紹介者註:残念ながら写真を紹介できませんが、原文で参照してください。
県民の3分の1が避難を望んでいるのだが、費用がかかるためにできないでいる。
Efe通信 東京
Actualizado domingo 11/09/2011 13:06 horas
2011年9月11日
「原発いらない!」。東京の日本政府に対し全ての原子炉の閉鎖を求める何千人もの叫び声が響いた。事故を起こしたフクシマ原発をコントロールする苦闘が半年を迎えたのである。
3月11日に東日本を襲った津波は、この25年間の地球上で最悪の核事故を惹き起こした。それは8万家族の避難を余儀なくさせ、この列島にある原発の80%を停止状態に追い込んだ。
「放射能に国境は無い!」、「日本から世界へ:謝罪したい!」、「原子力のエネルギーはもうごめんだ!」。これらが、首都にある経産省前で叫ばれたスローガンの一部である。ここにはまた原子力安全委員会の本部もある。
警察の厳重な警戒の中で、約3千人の人々がその建物の周りを取り囲むように人間の鎖を作った。怒りと祭りの混じった雰囲気の中で、それは、この事故の責任者たちを法廷に引きずり出すことと日本中の他の原子炉を全て閉鎖することを、叫び声と歌声で求めた。
同様のメッセージが日本の首都で開かれた他のデモでも繰り返された。新宿地区そして代々木公園である。そこではまた、3月の大震災の2万人の死亡・不明者に対する追悼も行われた。
6ヶ月が経ってもフクシマではいまだに3千人以上の人々が、原子炉を冷温停止の状態にしようと試みて働いている。その一方で、原発から20キロメートル以内、場所によってはもっと離れたところにまで、避難地域が広がるままである。
県の他の地区でもいまだに放射能への恐怖が続いている。朝日新聞、共同通信と他の地元テレビ局の調査によれば、自宅に住み続けてはいるものの福島県民の3分の1は移住を強く希望している。しかしそれがもたらすいろんな問題と費用のために避難できないでいる。
「我々は他のエネルギー源を求め、日本にある全ての原発を今すぐ閉じてしまわないといけない。50年もかけちゃいけない」。問題の多い原子力安全委員会の本部に対してデモを行った一人であるコスゲ・アキラさんはこう強調した。
「どうして我々日本人はチェルノブイリから学ばないのだろうか?」彼は、チェルノブイリ事故で子どもを失って泣く母親の大きな写真を見せながら、こう付け加えた。
この事故が起こった当初からフクシマを運営する東京電力は、チェルノブイリとの違いを強調し、異なった形で事故が起こったことと原子炉の仕組みが異なることを主張した。しかしその両者は共に国際原子力事象評価尺度(INES)で最も重大なレベル7に分類されたのだ。
東京電力の西澤俊夫社長はこの事故について「原発周辺地域、福島県、そして日本の人々に対して」改めて謝罪し、「避難住民ができる限り早く家に戻れるように」最大の努力をすると強調した。
公共テレビNHKによれば、この原発にはいまだに10万トンもの汚染水がたまっている。2012年1月を目指して汚染水の量を増やすことなく安定した冷温状態を達成することは挑戦である。
フクシマの状況は、3月11日以来、日本にある多くの原子炉の停止を惹き起こした。一部は安全確認のため、一部は定期点検のためである。それ以来、その中の一つとして再稼動を始めていない。(注:エル・ムンドは泊原発の営業運転について既に報道しているのだが、この元記事を書いたEfe通信の記者が泊のことを忘れていたかもしれない。)
実際のところ、54基の原子炉のうちわずかに11基が稼働中であり、止まっている原子炉が検査によって稼動を認められない場合には、来年の春には全てが止まってしまうのかもしれない。(注:実際には泊原発が動くためそうはならない。)
しかしながら、反原子力(核)運動の声にもかかわらず、今週にはそのうちの15基で政府の要請によってストレステストが開始された。その結果によっては数ヵ月後の再稼動の可能性が否定できないのである。
【対訳ここまで】
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■【911事件について】
その一方でエル・ムンド紙は、今年が例の911事件10周年ということで、9月初旬からその特集を組んでいます。それはやはり《事件発生直後に米国政府が発表して世界に押し付けた筋書き》を中心にしたものですが、他の新聞や今までの同紙の「911特集」とは異なり、同時にこの《筋書き》に対する疑問をも取り上げて分かりやすく説明しています。記事の作者はマリア・ヘスス・エルナンデス記者です。
もちろん全てスペイン語で書かれていますので、写真を除いては、たぶんほとんどの人がお読みになれないでしょう。近いうちにそれぞれを翻訳してご紹介することにしたいと思っているのですが、いまのところは、とりあえず「こんなことが書かれている」という程度にだけ説明しておくことにします。それぞれのリンク先で写真だけでもご覧ください。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/
ここではニューヨーク世界貿易センター(WTC)ツインタワーの崩壊について、飛行機激突の衝撃と火災だけであの巨大なビルが崩壊したという説明に対する疑いを取り上げています。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/02.html
世界中の人々がほとんど知らない、飛行機の激突がなかったWTC第7ビルが崩壊したという出来事について、いくつかの疑問を取り上げています。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/03.html
ここでは、アメリカン航空77便が激突したとされるペンタゴン・ビルについて、ボーイング757の証拠が不十分であることや、飛行機激突を記録していたと思われるビデオ資料が十分に公開されていないことへの疑問などが書かれています。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/04.html
4機もの民間機がハイジャックされたにも関わらず、どうして近くの空軍基地から戦闘機が捕捉に向かわなかったのか、という疑問です。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/05.html
ここで取り上げられているのは、19人のハイジャッカー、オサマ・ビンラディン、ザカリアス・モサウイなど、911事件の「犯人」とされた者たちに対する疑問ですが、それ以上に、捜査に当たったFBI、そしてこの事件を「パールハーバー」になぞらえて一気に米国を戦争路線に引きずり込んだペンタゴン官僚に対する疑問です。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/06.html
「ユナイテッド93」は映画にもなった米国の「英雄譚」ですが、その墜落に至る過程と墜落現場とその周辺には、やはり数多くの疑問が残されています。
http://www.elmundo.es/especiales/internacional/2011/11-S/asi-fue/conspiracion/07.html
最後に、911事件直前に急激な株価の値上がりと投売りがあった点です。あらかじめ事件発生を知っている者がいたのではないのか、という疑いのもたれる点です。
以上のことは今までにも繰り返し語られ続けてきたものです。私としてはその疑問の全てが的を得ているのかどうか分かりません。しかしそれは今まで、エル・ムンドのような大手紙がわざわざ取り上げるようなものではありませんでした。10年という歳月を経て、少しずつ客観的な目でこの事件が取り上げられるようになったのかもしれません。またスペインで他の新聞やテレビ報道を見ても、確かにこの事件の《公式の筋書き》に沿って報道はしているのですが、同時にまた各報道機関の今年の911特集では、この10年間で明らかになった米国の戦争政策が残す多くの負の遺産についてもかなりのスペースを割いています。
国営TVでは9月11日当日は単にセレモニーを放送しただけでしたが、その数日前からこの事件が持ついろんな側面を取り上げてきました。そのなかで、グラウンドゼロ(WTC崩壊跡地)で作業をしていた数多くの消防士や警察官、撤去労働者やボランティアたちを現在も苦しめ続けている「911奇病」、そして未だに千人ほどが死亡の確認が取れていないことについて、かなり詳しく説明していたことが注目させられます。
●「911奇病」
WTCツインタワーと第7ビルが崩壊した直後から、大勢の人々が生存者の捜索や遺体の確認、そして何よりも崩壊したビルの残骸の撤去作業と、周辺の被災したWTCビル群の取り壊しと瓦礫の撤去が始まりました。しかしその場所の空気には膨大な量の瓦礫の微粉塵が含まれていました。(これについてはこちらも参照してください。)
その粉塵は主にコンクリートとその中の小石や砂の粉、石膏の粉、ガラスなどの粉や繊維、家具や紙などから出た有機物質の繊維の小片でできていました。それには発がん性があるとされるアスベストが米国の基準の3倍存在したといいます。また強いアルカリ性を示すカルシウム化合物や、鉛などの重金属化合物も大量に存在していました。さらにその空気には様々な種類の有毒な有機化学物質が極めて大量に含まれていたのです。事件12日後の測定ですら、日本の環境基準の300倍、米国の厳しい実質安全量に比べると何と5400倍ものダイオキシンが存在し、発がん性が高いとされるベンゼン類なども大量に発見されました。また何らかの放射性物質も存在したのではないかという疑いをぬぐうことができません。
米国政府当局者はWTC跡地の汚染が著しく危険であることを十分に承知していました。にも関わらずEPA(環境保護庁)は「健康には何の問題も無い」と『安全宣言』を出し、グラウンドゼロで作業する人たちの安全に対して非常にお粗末な対策しか施されなかったのです。そこで警備・消火・救助に当たる警察官や消防士、そしてボランティアを含む撤去作業にあたった約4万人の人々の中で1万人以上、その他大勢の付近住民が、その作業の後に主に呼吸器の障害や癌などに苦しみ、2008年1月の段階ですでに208名が死亡したという報道があります。
日本政府がフクシマ事故の後でデータを隠して安全デマをばら撒いたために多くの被爆者を作ったことと非常によく似ているのですが、米国政府のそのときの態度は「いかなる犠牲を出しても瓦礫の撤去を最優先させる」ことでした。私に言わせればこれは紛れも無い「物証破壊」なのですが、それについてはこちらをご参照ください。
テレビの特集では、ヒスパニック系を中心にして、いまだにその後遺症に苦しむ元警察官や元消防士などが紹介されていました。近年になって、政府を相手取っての訴訟や政治家への陳情の結果、ようやく被災者の救済が徐々に進むようになりました。しかし米国政府はいまだに当初の措置の不当性(犯罪性)を正式に認めようとはしていません。
●確認不可能な死亡者
911事件はWTC地区だけで2千8百人近い死者を出したのですが、その遺体が発見されて身元が確認できたのはわずかに3百人未満に過ぎません。ツインタワーの粉塵の中から見つかった遺体のほとんどは細かく砕けた骨のかけらになっていたのです。そこから得られたDNAと身につけていた品物などによって身元を割り出された人が1千5百人ほどいますが、残りの1千人ほどの人については何の手がかりも無く、裁判所の判断で「死亡」とされました。骨片は2万点ほど見つかっているのですが、それには2006年になって南タワー近くにあった旧ドイツ銀行ビル(高さ171メートル)の屋上から発見された約7百点の遺骨の小片が含まれます。1千人の人たちについては、DNAを抽出できるだけの骨のかけらすら無く、衣服や装身具などの遺品も全く見つからなかったのです。
しかし、おそらくですが、WTCを作っていた鋼材などとともに運び出され、ニューヨーク北部の埋立地に放り込まれた粉塵状の残骸の中にはもっと多くの遺骨小片や遺品が含まれていたのではないでしょうか。この粉塵の大部分は、一つのタワーにつき9万トン近くも使われていたコンクリートの名残と考えられますが、両タワーあわせて7万立方メートルを超す量のコンクリートが、ほとんど何のかけらも残さず、直径の平均が0.06ミリ(60ミクロン)という微粉末になってマンハッタン南部を多い尽くしたのです。いったいコンクリートに何が起こったというのでしょうか。そしてビルの中にいた2千5百人ほどの人々の体もまた小さなばらばらの骨のかけらになっていました。ビルの重量による破壊だけでこんなことが起こるのでしょうか。しかしこの現象についての調査や研究はこの10年間まったく行われていないのです。(それについてはこちらをご参照ください。)
スペイン国営テレビでは、いまだに遺骨の確認もできない人々の遺族、そして保存されてある骨片から手がかりをつかむ方法に悩む研究者たちの姿が紹介されていました。実際にはほとんど諦めているのですが、これらもまた、ややもすれば忘れられがちになる911事件の最も重要な側面の一つをむき出しにしているものです。
●セレモニー:「もうこの話は終わりにしたい」?
どの報道機関を見ても、みな911のイベントを盛り上げてくれてはいるのですが、特に米国でのセレモニーの様子を見ていると、要するに、《事件発生直後に米国政府が発表して世界に押し付けた筋書き》をそのまま固定化させて「もうこれでこの話は終わり!この10年間はもう終わり!」にしたい様子がうかがえます。何せオサマ・ビンラディンは、いずれにせよもうこの世にいないわけですから。
こちらの新聞によりますと、オバマ米国大統領はその演説の最後で「米国は二度とイスラムや他の宗教に対して戦争をしない」と語ったそうです。つまり911事件前後にネオコンの人士によってあれほどもてはやされた「文明間戦争」などという馬鹿げたアイデアを棄てた、ということです。ただし、911事件後に、アフガニスタンやイラクやパキスタンなどでの戦争だけでなく、米国国内でも起こった差別と虐待の実害を受け続けたイスラム教徒たちが、こんな一言で許してくれるのかどうかは知りません。今日(9月12日)の国営TVニュースでパキスタン市民たちが口をそろえて言っていました。「アメリカ人がいるからテロが起こるのだ」、「テロを作っているのはアメリカだ」と。これで『幕引き』にしようなんてムシが良過ぎるというものです。
実際には、欧州にしても米国にしても一般国民にとっては、救いようの無い不況と失業問題を抱えてもうそれどころじゃない、というところなのでしょう。失業率20%を越す(若年層の失業率は40%超)のスペインなんか、世論調査でもテロに対する関心などほとんど見られません。米国を含めてどの国でも多くの国民の関心は「自分の生活をどうするのか」ということに尽きるでしょう。マスコミだけは盛んに「911記念日」のイベントを盛り上げてくれていても、「それはもういいよ。明日をどうやって食っていくのかの方が問題だ」ということです。こういった911時件以後の欧米西側世界(日本を含む)の斜陽化は、こちらの多くのマスコミ機関が大なり小なり紹介しているものです。
特に多くの米国国民にとって年月は「傾きつつある帝国の姿」を肌で実感できた10年間だったはずです。911事件から、あの大嘘で固めたイラク戦争、ハリケーン・カトリーヌの襲来、金融バブルの崩壊と破産寸前の国家財政…。政治家たちが「愛国者法」まで作って盛んに吹聴する「国民の団結」とは裏腹に、軍事予算の拡大の一方で貧富の差はかつて無いほどに広がり、その中で政治への不信感と自分たちへの無力感が米国をどんどんと蝕み続けているようです。この事件から始まった「対テロ戦争」で奪われたものは、戦場になった国々での生命と生活ばかりではなく、米国内、そしてこの戦争に協力した国々の中での経済的・精神的な生活でもあったでしょう。(日本に関してはこちらもご参照ください。)こうやって、ブッシュ政権が本格的に開始させた「文明間戦争」は、欧米西側世界(日本を含む)の文明の醜悪さとその没落を明らかにしただけなのでしょう。それは決して「イスラム・テロ」の責任ではなく、自ら掘った落とし穴に自らがはまってしまっただけなのです。
しかしながら、言葉面だけで幕を引こうとするオバマさんの意思にもかかわらず、また目を背けておきたい西側諸国民の願望にもかかわらず、911事件は決して「終わり」にはならないでしょうね。なぜか? なぜなら、《911神話の筋書き》はあっても、911事件の本当の調査と捜査がまだ始まっていないからです。始まっていないのですから終わりようがないのです。お分かりでしょうか?
以上、9月初旬から11日までの間で見かけたスペインのマスメディア報道のなかで取り扱われた「911事件10周年」について、その紹介と私の感想をまとめてみました。日本での報道はどうだったのでしょうか。
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まとめてみます。先日、鉢呂経産大臣を辞任に追い込んだ日本のマスコミのやり口、反原発デモを無かったことにするか矮小化して単なる「暴力デモ」に仕立て上げる日本のマスコミのやり口、従来から911事件について《事件発生直後に米国政府が発表して世界に押し付けた筋書き》をさらに国民に押し付けることしかしなかった日本のマスコミのやり口、…。こういったことを見てきますと、いま日本という国の舵を取って動かしているのはテレビと新聞だな、という気がします。しかしこれはこの国の本質的な姿であり、いくらマスコミを攻め立てたところで全く変化は起こらないでしょう。
これは警察でも同じ事で、先ほども言いましたが、8月中旬にマドリッドでローマ教皇を招いてカトリックの大集会「世界青年の日」に150万人が世界中から集まりました。これはスペインのカトリック教会だけではなく、むしろ政界、財界が総力を挙げて実現させたもので、国王など手術を受けたばかりの痛む足を引きずりながら最初から最後まで担ぎ出されていました。その際に反カトリック団体とカトリック・グループが衝突したのですが、警察に殴られて逮捕されたのは反カトリックグループだけです。「市民の警察」なんぞ世界中どこを捜しても存在しないのです。
「マスコミとはそんなものだ」、「警察とはそんなものだ」と覚悟を決めて、人間の一人ひとりが、自分がしっかりするしかない、自ら正確な情報を求めて自らの行動を自ら決定する、大胆な行動と慎重な行動の区別を自分の責任で判断する、…。こういった自覚が日本人の全員に必要だと思います。要は、日本人が「日本人」であるより先に「個人」である必要があるということです。
問題点は、日本の場合、何よりもマスコミでしょう。マスコミこそ日本という国家の残忍で狡猾な支配者です。首相を含め政治家の首を挿げ替えているのは結局マスコミです。日本では政治家なんぞそんなものです。個々人としては、それはそんなものだと自覚してそれなりに付き合う必要があるでしょう。程度のはなはだしいテレビ局は見ないし新聞は買わない、スポンサーになっている企業の製品は買わない、等々の行動が無数の個々人の間から自然発生的に巻き起こって、マスコミが国民にコントロールされてしまうような状況が作られない限り、同じことが延々と繰り返されるだけでしょうね。NHKがいやならテレビを持たなきゃいい。テレビなんか無くても生きていけます。それくらいの覚悟は必要でしょう。
詐欺とカモに例えて言います。詐欺が先かカモが先かは卵と鶏の関係のようで答の出るものではないでしょうが、詐欺犯罪をなくすためにはどうすればよいのかの答ははっきりしています。石川五右衛門じゃないですが「世に盗人の種は尽きまじ」で、詐欺師候補は無数にいます。いくら取り締まっても法律を厳しくしても、その抜け穴はどうにでも発見できます。しかし詐欺という犯罪はカモになる人間がいなければ成立不可能です。つまりカモの群れがいなくなれば詐欺は消滅するでしょう。
猛烈に単純な話なのですが、日本という国は、言ってみれば「膨大なカモ集団の上に成り立つ詐欺師国家」です。その先頭に立っているのがマスコミでそれを後押しするのが警察だ、と、このように覚悟を決めてみればどうでしょうか。日本人一人ひとりがカモであり続けることを拒否する以外に、結局はその状態を解消する方法が無いと思いますが、3・11のフクシマ核災害の経験がその出発点になるのかどうか?
米国人にとっての9・11、日本人にとっての3・11…。
来年以降は、それぞれの国民の一人ひとり全員が「もう、カモ、やーめた!」と叫び声を挙げる記念日になってもらいたいなと願っています。
(2011年9月12日 バルセロナにて 童子丸開)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1610:110914〕
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