ドイツ歌劇場の80人の団員が日本公演を拒否した理由は何か?―日本政府の「安全宣言」への痛烈な批判!
- 2011年 9月 21日
- 交流の広場
既に新聞報道などでご承知のことと思いますが、ドイツの名門オペラ場、バイエルン国立歌劇場が9月23日から10月10日まで行う予定の日本公演への参加を、団員約400人のうちの約80人が拒否しました。
もちろん理由は、福島第一原発事故の影響を懸念してのものです。彼らは無給の休暇を取り、補助団員らが代わりを務めるそうです。また、来日する団員のためにはドイツから飲料水を輸送し、放射線の専門家が同行して食事の放射線量を測定することになっているそうです。
ところで、日本の放射線量の暫定規制値とドイツの放射線防護協会提言の数値に天と地ほどの開きがあることは当然ご存じだろうと思います。
日本の暫定規制値は、厚生労働省医薬食品局食品安全部長名で各都道府県知事、保険所設置市長、特別区長宛に平成23年3月17日付で出された通知(食安発0317第3号)に示されています。詳細は以下でご覧ください。
これによると日本での飲食物における放射性セシウムの摂取制限指標値は、飲料水、牛乳・乳製品で200ベクレル/kg また野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他では500ベクレル/kgとなっています。
これに対してドイツではどうか。ドイツの放射線防護協会提言数値は、大人で8ベクレル以下/kg 子供では4ベクレル以下/kgとなっています。彼らはチェルノブイリ事故の経験を踏まえて、「日本における放射線リスク最小化のための提言」をまとめて日本政府に突き付けています。
彼らによると日本政府は放射線のリスクをあまりにも過小評価し過ぎているということになります。
実際にも「東京新聞」9月6日付「こちら特報部」によれば、内部被ばくに詳しい矢ケ崎克馬・琉球大学名誉教授は「汚染された食品はできるだけとらない方がいい。体内にとどまる放射性物質は遺伝子を傷つけ、がんになる確率が高くなる。ましてや、500ベクレルという高い数値を設定して『規制値以下は大丈夫』とは大うそ」と言っていますし、京大原子炉実験所の小出裕章助教も、「福島はおろか、既に日本中が汚染されてしまって、安全な食べ物などない。規制値以下は『安全』だと刷り込もうとしているが、そんなことはない」と言っています。
政府やその他の公的機関は、食品検査を増やして、より安全な食品を供給し、人々に安心を与えることが先決だろうと思います。ところが実態はまるで正反対です。そのように主張しようものなら、かつての「非国民」扱い同様に「裏切り者」「自分だけ助かろうとしている」「放射能ママ」などと悪口を投げつけられて、袋叩きに会う始末です。
こういう日本が、いくら対外的に「安全宣言」をしても、ドイツ人ばかりでなく、誰も日本に来たいとは思わないでしょう。
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。