変わらない国家の姿勢―「自己責任」による人権の圧殺
- 2011年 9月 22日
- 交流の広場
- 人権常岡浩介松元保昭
みなさまへ 松元
原発情報ではありませんが、戦場ジャーナリストの常岡浩介氏がパキスタン政府に身柄を拘束され、さらに日本国政府が「強制送還」を要請したもようです。
政府が自国民を守るどころか、真実を伝えようとするジャーナリストを犯罪人扱いするという国際的にも信じられないこの出来事は、いまから7年前のイラク開戦1年後、2004年4月に起きた「イラク拘束事件」を彷彿とさせます。
日本国家は、原発事故直後の情報を隠蔽して大量の被ばく者をつくり出しただけでなく、さらに非科学的、政策的な「避難解除」で汚染地域に住民を帰還させ福島の住民にあらたな被ばく者と棄民を生み出そうとしています。この半年、汚染計測、食品流通をはじめとした政府の不作為によって、東電、政府の本来の責任のツケを国民に押し付けようとしていることも明らかです。
国家が真剣に自国民を被ばくから守ろうとしていないことはもはや明白です。こうした国家の在り方は今になって始まったことではなく、戦前戦後一貫してそうであり、「反テロ戦争」のこの時代「イラク拘束事件」が明らかにしたように、市民が遭遇する困難からの叫び「人権の叫び」を「自己責任」の名の下に圧殺し、国家自からの犯罪性(イラク参戦、アフガン参戦、原発推進、放射能被害)を覆い隠そうとする姿勢には、市民を資本のくびきに縛り付けておく共通の血が流れているとしか思えません。
常岡浩介さんの友人、八木啓代さんのブログから紹介します。
=====以下転載======
●八木啓代のひとりごと
http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-592.html
日本の外務省は、日本人の人権をどう思っているんでしょうね
さて、朝日ニュースターを除いて、報道はほとんどされていないのですが、私の友人であり、戦場ジャーナリストの常岡浩介氏(昨年、アフガニスタンで5ヶ月間、アフガン政府軍系組織に誘拐されていた人物です)が、数日前にパキスタンで再び、拘束されました。ただし、今回、身柄拘束したのはパキスタン政府で、強制送還になるとのことで、生命の危険などはないようです。
問題は、この拘束と強制送還は、彼が、法に触れるようなことをしていたというような理由ではなく、日本国政府の要請であるとパキスタン側に説明されていること。「本省からのファクスを見せて、日本の外務省の要請なので我々にはどうしようもない、申し訳ない、と明言」されたそうです。
それで、疑問なのですが、外務省が、犯罪を犯したわけでもない自国民を、他国政府に対して、拘束して強制送還するように要請したりすることなどあってはならないことですよね。
むしろ、外務省の本来の仕事としては、現在、パキスタンの入管によって拘束されている自国民の解放を求めるべきであって、犯罪者でもない国民の移動を勝手に制約するということはありえないはずです。
今回のパキスタン政府の処置は、パキスタン政府の言い分を信じれば、ふたたびパキスタン経由でアフガンに向かおうとしていた常岡氏を、日本外務省が阻止したということになるのでしょうが、こういうことがあるものなのかどうか。
単に常岡氏が友人であるというだけではなく、私自身、中南米に仕事で出かけることもある人間ですから、「外務省が、犯罪を犯したわけでもない自国民を、他国政府に対して、拘束して強制送還するように要請したりすることがあり得る」としたら、笑い事では済みません。
ということで、一市民として、日本の外務省に電話をいたしました。
そうすると非常に奇妙なことが判明。
本来、パキスタン事情に精通しているはずの、外務省西南アジア局は「うちはまったく事情を知らされていないので、個人的にネットでしか(状況を)知らない」という状態(昨日の段階では、在パキスタン日本大使館から、常岡さん監禁の事実すら知らされていなかったようです)。
で、回された「担当部門」が、領事課テロ対策室。
ここで、F氏という担当者が出ましたが、
「パキスタン政府が不当な拘束を行っているとは認識しておりません」
八木「宿も取らせず、空港の床に寝かせ、体も洗わせないような監禁が不当な拘束ではないのですか」
F「暴行を受けるなどの拘束ではないという意味で、それについては、パキスタン政府に申し入れをしています」
八木「パキスタン政府当局が、これは日本国政府の要請であると説明していることについてはどう考えるか」
F「ですからそんなことはないわけで…」
八木「パキスタン政府が虚偽の説明をしているのだとしたら、厳重抗議するべきではありませんか?」
F「そんなことはね。八木さんがべつにパキスタン政府から直接聞かれたとかいうわけじゃないでしょ(とちょっとバカにした言い方)」
八木「同行の方と本人がそれを確認したということでネットで拡散されていますから、一次情報を確認されたらいかがですか」
F「どうやって確認しろっていうんです。それはご本人が主張されているだけですから」
この対応だけでも、公僕としていかがなものかと思いますが、この対応には、あたくし、ちょっとカチンときましたので、
八木「では、パキスタン政府が国内法に基づいて常岡氏を拘束したといわれるなら、その拘束がどのような理由によるものか、その理由をパキ政府に確認されたのですか?」
F「…それはできます」
八木「ぜひしてください。日本人が訳の分からない理由で拘束されたなら、どういう法律に基づいて、どういう根拠で拘束したか確認するのは、外務省の仕事じゃないんですか」
F「….それはもうやってます」
八木「パキスタン政府の『拘束理由』が知らされたら、それは開示していただけますか」
F「いや、それは個人情報になるので、公開はできないです」
八木「では、常岡さん本人が開示請求されたら、お答えになれますね」
F「…..それは….ご本人からであれば…..」
と、このような会話がございました。
要するに、パキスタン政府または常岡さんが嘘をついていると言いたいようです。
しかし、パキスタン政府が嘘をついているなら、これまた放置しておくべきではない由々しい事態だと思いますが、それについて、毅然として抗議をするおつもりはないようです。かつ、常岡さんが嘘をついていると言わんばかりの表現をされながら、本人に国際電話で事情を訊くこともされないようです。
(ただし、常岡氏は、この邦人テロ対策室の人とすでに話をし、この件も伝えてあるとのこと。不思議ですね)
ちなみに、邦人テロ対策室は、昨年、彼がアフガンで誘拐されたときにも、中東二課ではなくこちらが担当したようで、この際、まったく事実無根の「誘拐自作自演説」が外務省公電で流れたという話となにか関係あるのでしょうか。
実際、入国にあたって、パキスタン大使館では簡単にビザが出たのに、空港で強制退去というのも、さらにおかしな話です
まあ、この面妖な事態の中、常岡さんは、宿にも泊めてもらえず、蚊だらけの空港の床で寝かされ、マラリアの危険にもさらされているようです。
ということで、みなさま、もし、この外務省の対応はおかしい、常岡さんになにか力添えをしよう、と思っていただけるのでしたら、外務省領事課テロ対策室
03-5501-8165 に電話をして、電話に出られた方の名前をメモした上で、
「パキスタンで拘束されている常岡浩介さんの待遇改善を要求してほしい」
「常岡さんの拘束理由を明らかにするよう、パキスタン政府に求めてほしい」
「この件に、日本政府が関与していないことを公式に発表してほしい」
の三点を主張していただけると、常岡さんの大きな助けになります。
また、英語のできる方は、在日パキスタン大使館に対して、
「どういう理由で、パキスタン国は、日本国民である常岡浩介さんを勾留し、空港で非人道的な監禁をおこない、強制送還しようとしているのか。私たちは日本国民として、非常に遺憾であり、理由を知りたい」
旨を伝えていただけると助かります。
取りいそぎ
(以上、転載終わり)
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