世界の経済的危機と日常生活の危機 《その壱》
- 2011年 9月 25日
- 評論・紹介・意見
- 三上治
今年の台風は変だ。変だと言っても上手く説明がつかないのだが、従来の台風とはどこかが違う。台風は日常を超える自然の動きで被害をもたらすにせよ、どこか人々を興奮させる所がある。台風の後の落ち葉の中をさまよい、水たまりに取り残された小魚を見つけた思い出が残っているためかもしれない。こういう雰囲気も変わってきているのではないか。台風の脅威はもっと露骨でむき出しになってきている。3月11日の大震災の影響はこんな風にあるのだろうと想像する。ところで世界ではもう一つの台風がある。目は欧州の政府債務危機→金融危機であり日本はそれが円高となってその暴風圏に巻き込まれている。
アメリカの金融危機《2008年》は世界経済を危機的状況に追い込んだ。あれから三年が経たがアメリカ経済は危機から脱出できずにあるし、これは欧州経済に波及している。これは好転しない景気とドル安からユーロ安へとなって現象している。日本はドル安やユーロ安の中で円高に見舞われ、輸出産業を中心に悲鳴が上がっている。国内では円高に対する無策が非難される中で、野田首相は「財政健全化と経済成長の両立こそが世界最重要な課題である」と国連一般演説で述べたとされる。果たして彼がこの発言を裏図ける明瞭なビジョンを持っているのか疑わしい。2008年の危機の後、アメリカはなりふり構わずドルを増刷しばら撒いた。これは非常時という名の財政出動であった。そしてアメリカの財政を悪化させた。もともと財政赤字と貿易赤字は続いてきたのだが、国債発行も困難になる事態にまで立ち至った。欧州(ユーロ圏)ではギリシャやスペイン等の財政赤字がユーロ危機に発展するかも知れない危機にある。
世界経済は各国の財政危機が露呈している。日本国家も膨大な国債残高[国家借金]を抱えている。財政健全化が要求される状態にあると言えるが、それでも日本は円高でありアメリカや欧州に比べて相対にましな状態にあると述べたことがある。これについては後でまた述べるが、世界経済の中での各国の財政悪化や経済成長のことに触れたい。野田の所信表明を見ても世界経済の中で何故に各国の財政が悪化し、経済が停滞しているのか(とりわけ先進的地域と呼ばれてきたところで)の認識が明瞭であると思えない。「財政健全化と経済成長の両立」と言う言葉が官僚の書いた作文のようにしか思えないのはそのためである。現実には財政健全化と不況深化→恐慌状態からの脱出のための財政出動は両立どころか矛盾のように現象してきた。かつて麻生元首相はまず財政出動をして後に財政再建に取り組みたいと述べていた。この方が現実的であった。(9月24日)
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〔opinion0620:110925〕
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