「シリーズ『わが著書を語る』」第10回―清家竜介著 『交換と主体化――社会的交換から見た個人と社会』(2011年、御茶の水書房)
- 2011年 10月 11日
- 催し物案内
月日:2011年10月25日(火曜日)
時間:19時~21時
会場:協働センター・アソシエ(変革のアソシエ東京事務所)
清家竜介著 『交換と主体化――社会的交換から見た個人と社会』(2011年、御茶の水書房)
本書は、この「交換する動物」としての人間が、「贈与(互酬)」「等価交換」「資本制交換」「再配分」という複数の社会的交換形式を担うことによって、それぞれの交換形式によって規定された人格や主体性の在り方と、社会的な共同性の在り方を生み出していることを論じるものである。
このように交換形式を分類するにあたって、贈与や互酬制をたんなる前近代的な過去の遺制、あるいは未開社会の遅れた習俗ではないかと思われる方もあろう。だが贈与や互酬制は、たんなる過去の遺制でもないし、未開社会の習俗であるのではない。それは今もなお、休みなく不断に機能しつつけている生きられた社会過程にほかならない。
例えば、レベッカ・ソルニットの『災害ユートピア』でも述べられていたように、災害などの危機に際して、贈与や互酬制という互助的な交換形式の層が劇的なかたちでたち現われる。実際にわれわれは、東日本大震災に際して、互助的な交換形式の層の出現に立ちあった。この未曾有の惨事に際して、今もなお多くの人びとが、災害ボランティアや募金などの有形無形の献身を行っている。われわれは、大規模な贈与の精神が立ち上がるのをまざまざと体験しているのである。
先ごろ大変御世話になっている国際政治学者の方が「今後、東日本大震災や原発震災について語ることのできない思想は、もはやなんの役にも立ちはしない」といわれたのを耳にした。まさにそうであろうと、わたしも胸の内で深く同意した。
本書は、東日本大震災以前に書いた学位論文を加筆・修正したものである。学位論文の加筆と修正を最小限に留めたこともあり、はしがき以外では、震災について一切触れていない。今はただ本書が、戦後日本が直面する未曾有の危機においても通用する内容となっていることを切に願うばかりである。
清家竜介(せいけ・りゅうすけ)
(早稲田大学非常勤講師)
専攻:社会学、社会哲学、社会的交換理論、コミュニケーション論、メディア論。
略歴:1970年生大分県まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科地球社会論専攻博士課程満期退学。博士(学術)
著書:『現代思想入門 グローバル化時代の「思想地図」はこうなっている!』(共著、PHPエディターズ・グループ、2007年)、『批判的社会理論の現在(叢書アレテイア8)』(共著、御茶の水書房、2007年)、『歴史における「理論」と「現実」(叢書アレテイア10)』(共著、御茶の水書房、2008年)、『自由と規律(叢書アレテイア12)』(共著、御茶の水書房、2010年)
論文:「ジンメルと近代的自由」(第一回高田保馬奨励賞受賞、『経済社会学会年報』第25号、2003年)、「マルティン・ルターからワエル・ゴニムへ――グーテンベルク系の衰退とソーシャルメディアの登場」(『IT批評』VOL.2、2011年、発行者 眞人堂)ほか。
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