イスラエル/パレスチナ「二国家解決」案の具体性とは?
- 2011年 10月 23日
- 交流の広場
- イスラエルパレスチナ松元保昭
みなさまへ 松元@パレスチナ連帯・札幌
このところ忙しくて配信が遅れました。「デモクラシー・ナウ!」の新着ストリーミングを紹介いたします。
パレスチナ国家の国連加盟申請は安保理に舞台が移されましたが、この間、「二国家解決」とは具体的にどのような状態を指すのか、あまり議論されてきたとはいえません。
イスラエルと米欧の許容する「二国家解決」案にノーマン・フィンケルスタインとパレスチナ人弁護士のノウラ・エレカットが根本的な疑問を投げかけます。
米国の親イスラエルロビー団体Jストリートの共同代表ジェレミ・ベン=アミは、フィンケルスタインの問いには、まともに答えようとしません。
※原タイトルは「アラブの春で米国のイスラエル=パレスチナ政策は変わったのか?」ですが、メール送信は内容が分かり易いように「イスラエル/パレスチナ「二国家解決」案の具体性とは?」とさせていただきました。
日本語字幕付き動画をぜひどうぞ。
http://democracynow.jp/video/20110520-1
=====以下、デモクラシー・ナウ!から転載======
新着ストリーミング ********************************************
2011/5/20 アラブの春で米国のイスラエル=パレスチナ政策は変わったのか?
********************************************
放送日: 2011/5/20(金)
再生時間: 32分
Jストリートという団体を耳にしたことはあるでしょうか。このセグメントに登場するジェレミ・ベン=アミが共同代表をつとめる、米国の親イスラエルロビー団体です。米国のイスラエルロビー団体として有名なものとしては、AIPAC(アメリカ・イスラエル広報[公共問題]委員会)やADL(名誉棄損防止同盟)などがありますが、近年とみに会員を増やし、発言力を増してきたのがJストリートです。Jストリートの主張とはどんなものでしょう。
Jストリートのウェブサイトを見ると、「イスラエルと平和を支持する米国人のための政治的ホーム」という表題の下にはこう書かれています。「Jストリートは、米国のユダヤ人主流派とイスラエルを支持する人々の政治的主張を表明する組織である。ユダヤの価値をふまえ、イスラエルがユダヤ人の民族的郷土(the national home)として、活気ある民主主義社会と
して生存するためには、イスラエル=パレスチナ紛争の二国家解決が不可欠だと信じる人々の主張である」。
イスラエルが生存していくためには、パレスチナを分割する二国家解決が不可欠だと提唱するのがJストリートですが、その二国家解決とは具体的にはどんなものなのでしょう。
オバマ大統領は中東に関する演説の中で、米大統領としては初めて「1967年の境界線」に基づく二国家解決案を公式に支持しました。それをうけて、パレスチナ人弁護士で活動家のノウラ・エレカット、Jストリート共同代表のジェレミ・ベン=アミ、著書『ホロコースト産業』で米国のユダヤ人エリート層によるホロコーストの利用を批判したノーマン・フィンケルスタインが議論を展開します。
1967年の境界線とは、1948~49年の第一次中東戦争後にイスラエルが周辺アラブ諸国と結んだ軍事停戦ライン(グリーンライン)です。この停戦ラインは、パレスチナ全土の78%をイスラエルの支配下に置くものでした。毎年、国連総会がこの停戦ラインに基づく分割案を決議していることから、フィンケルスタインの「国際的に承認された境界線による二国家解決」とは、国連が支持する分割案ということになります。
一方、Jストリートのベン=アミは、占領されたパレスチナ人の領土に建つユダヤ人入植地をイスラエルに併合し、代わりに同じ広さの土地をパレスチナに譲る案を提案します。しかしイスラエルの人権団体ベツェレムによると、西岸地区のユダヤ人入植地は2009年末で120カ所以上に上り、ユダヤ人入植者も約50万人に達しています。
これをすべてイスラエル領にするというJストリートの二国家解決案とは、1949年の停戦ラインとは事実上異なる境界線による分割を示唆するものと言えます。同じ広さの土地と交換とベン=アミは言いますが、同じ価値とは言っていません。ユダヤ人入植地が建っているパレスチナ人の土地の下には、きわめて貴重な帯水層があります。パレスチナ人にとって唯一の水資源を完全に支配することが前提の二国家分割なのです。
パレスチナ人弁護士のノウラ・エレカットは、二国家分割を前提に将来の国境を議論する2人とは違う視点を提供します。土地を分割しパレスチナ国家が樹立されても、パレスチナ人が奪われた民族自決権や自由や尊厳が保障されるわけではない、国家の樹立だけを取り上げることがパレスチナ人の民族自決、自立への道をはばんできたのだという主張です。
また2011年4月28日の放送で、カリフォルニア大学の比較英文学教授サリー・マクディシは、「パレスチナ人の闘争は占領に対してだけではなく、パレスチナ人全部の集合的な権利、民族的な権利です。占領地に残ったつぎはぎの領土に小パレスチナ国家を建てても、大半のパレスチナ人の権利は無視される。闘いの本質は60年前の難民の帰還権なのです」と語り、国際社会が支持する二国家解決に疑問を投げかけました。
ノウラ・エレカットやサリー・マクディシに呼応するかのように、パレスチナ人の若い活動家の代表たちはこう言いました。「国連の場でのパレスチナ国家承認は、国境紛争を加速させ、パレスチナ難民の帰還権問題を葬り去り、パレスチナ人の分断をさらに推し進め、イスラエルの占領を継続させるだけです」。 (桜井まり子)
つづきはこちら→ http://democracynow.jp/video/20110520-1 (動画 32分)
英語スクリプトはこちら
ゲスト
*ノーマン・フィンケルスタイン(Norman Finkelstein) 政治学者。イスラエルはホロコースト犠牲者の立場を濫用していると批判してヨーロッパで話題になった『ホロコースト産業』のほか、『イスラエル擁護論批判』、Image and Reality of the Israel-Palestine Conflict (『イスラエル=パレスチナ紛争のイメージと現実』)などの著書がある。新著はガザ攻撃開始から一年後に発表されたThis Time We Went Too Far: Truth and Consequences of the Gaza Invasion(『今度はやりすぎた:ガザ侵攻の真実と結果』
*ノウラ・エレカット(Noura Erakat), パレスチナ人人権擁護派の弁護士で活動家。ジョージタウン大学の中東国際人権法専門の非常勤教授。中東に関するウェブ情報誌「ジャダリーヤ」Jadaliyya 共同設立者。パレスチナ難民支援組織バディル・
センターの権利擁護コーディネイターも務める。
*ジェレミー・ベン=アミ(Jeremy Ben-Ami)イスラエル=パレスチナ紛争の2国家解決を提唱する米国の非営利団体Jストリート代表。
字幕翻訳:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗
(以上、転載終わり)
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。