アジア記者クラブ通信11月号を発行しました
- 2011年 11月 11日
- 交流の広場
アジア記者クラブ通信11月号を発行しましたので、タイトルとリードセンテンスを紹介させていただきます。会員の方は、毎月入手できます。非会員の方は、定例会会場で販売していますので、入手していただければと思います。
米国経済の崩壊を予感させる「米中流階級の死滅」、
“米国の春”になるか、ウォール街占領運動の虚像と実像、ツィンマーマンの「フクシマ真実への闘い」セラーノへのインタビュー「独立したジャーナリズムは存在しない」など読み応えのある記事が並んでいます。オルタナティブメディアの真骨頂を如何なく発揮できているのではと思っています。(11月10日)
<アジア記者クラブ通信11月号・目次>
■定例会リポート(2011年9月22日)
人類は繰り返すのか ベトナム、アメリカから いまだ癒えぬ枯葉剤の傷跡
坂田雅子(映画監督)
ベトナム戦争で米軍が使用した枯葉剤による被害の実態を取材したドキュメンタリー
映画『花はどこへいった』(2007年)を監督した坂田雅子さんがこの秋、二作目と
なる『沈黙の春を生きて』を世に問うた。環境問題の古典『沈黙の春』を著した生物学
者レイチェル・カーソンは50年前、同書でこう警告した。「化学物質は放射能と同じ
様に不吉な物質で、世界のあり方、そして生命そのものを変えてしまいます。いまのう
ちに化学薬品を規制しなければ、大きな災害を引き起こすことになります」。猛毒のダ
イオキシンが含まれる枯葉剤は人体や環境を傷つけ、その影響は世代を超えていまなお
ベトナムの人々や米軍兵士らを苦しめている。カーソンが化学物質と同じく危険視した
放射能でも大事故が繰り返され、日本でも福島原発の事故が起こった。「放射能と化学
薬品。どちらも進歩という名のもとに人間が作り出してしまい、制御できなくなったも
のだ」と指摘する坂田さんに、枯葉剤の問題を中心に語っていただいた。(編集部)
■燃え上がった若者らの怒り
“中流階級の死滅”に見るアメリカンドリームの終焉 (2)
「ウオール街を占拠せよ」をスローガンにしたニューヨークで発生した若者らの反乱
は10月に入るとワシントンをはじめとする全米の主要都市に拡大した。その背後に陰
湿な政治組織が蠢いているにせよ、抑圧された人々がついに立ち上がった。1980年
代初頭のサッチャーリズム、レーガノミクスに端を発する規制緩和と民営化を柱とする
新自由主義の嵐は金融資本の異様な肥大化を促し、それは“巨大な怪物”となって社会
的弱者を襲撃した。一方、“1%”と呼ばれる米国の最富裕層はペテン師と化したウオ
ール街の金融資本と一体となり、ますます肥え太った。今、怒れる若者らが労組と連携
して展開している反格差運動は現代資本主義の根源的な変革を目指す、21世紀型の階
級闘争へと進む可能性を孕んでいる。2回連載となった本稿は彼らの怒りを爆発させた
米国社会の矛盾、病弊を包括的に描写している。前号の(1)と併せて通読すれば、格
差是正を求める彼らの悲痛な叫びを理解するうえでの貴重な資料となるであろう。(編
集部)
■ウオール街占拠運動は“カラー革命”なのか? その虚像と実像(1)
ミチェル・チョスドフスキー(カナダ・オタワ大学)
世界の金融センター・ウオール街を繰り返される経済危機と著しい格差社会を生み出
した元凶とみなし、これに抗議する運動が全米に本格的に広がって約2カ月。世界のオ
ルタナティブメディア界を主導する著者チョスドフスキーはこの運動に2003年のグ
ルジア・バラ革命を端緒とする親米政権樹立を図る「カラー革命」を背後で操作して来
た米国の諸機関が関与していると明白な証拠を挙げて論じている。一方、この運動がこ
れまでに再三指摘されてきた陰の政治組織の操作と資金援助によっていかに爆発的に広
がったとしても、一連の動きに触発されて社会変革を目指し立ち上がった数多の人々の
怒りと志は評価に値する。ただ、今回の抗議運動は米国内の社会矛盾の解消を目指して
おり、明らかに旧ソ連圏での「カラー革命」や“アラブの春”とは異質である。著者は
本稿で米エリート層が米国を含め各国の反体制派の運動の支援を通じ、いかにこれを取
り込んできたかを明示し、次号では米国の運動の背後にいる支援者が誰かを検証すると
予告している。(編集部)
■西欧並み経済水準を誇ったリビア 失った代償の大きさと独裁批判
「独裁42年」、「最後まで支配者に執着」。カダフィ大佐がリンチ同然に殺害され
た映像が世界中を駆け巡った際に、邦字各紙の見出しを飾った言葉の一部だ。植民地状
態の低開発国を自力で解放し、絶えざる妨害行為のなかで、自国の資源を使ってゼロか
ら社会を建設する困難さは想像できないようだ。さらに海外の解放運動にも資金援助し
てきた。こうした資源ナショナリズムは、湾岸の石油を独占するアラブの王族と欧米資
本にとっては禁句であり、カダフィ抹殺の理由になってきた。植民地主義と42年間に
わたって戦い続けたカダフィ大佐が、ジャマヒリーア思想に基づいて建設してきたリビ
ア社会の実像は伝えられることはなかった。アラブの春を装った侵略戦争の欺瞞とリビ
アが失った代償の大きさ、メディアの情報操作を本稿は明らかにしている。(編集部)
■リビアで消滅するであろう16の事柄
※上記リビア2本は、オルタナティブメディアの翻訳記事。
■日本人は先頭に立ち、隠蔽の歴史を断て! フクシマと真実への闘い
ポール・ツインマーマン(ジャーナリスト)
広島、長崎への原爆投下、その後のおびただしい数の原水爆実験、そしてスリーマイ
ル、チェルノブイリなどでの原子力関連施設での事故に続き、フクシマで発生した未曽
有の原発事故。本稿で著者は「放射能被ばくの歴史は当事国の政府と国際機関が共同し
て核兵器開発と原子力産業を重視するあまり、無辜の人々をいかに欺いてきたことを証
明している」と断じて、第2次大戦後の数々の放射能漏洩事故で被災実態が露骨に隠蔽
、改ざんされてきたとことを証拠に基づき告発している。そしてフクシマの事故は過去
の忌まわしい欺瞞の歴史に終止符を打つ好機であるととらえ、「最も原子力の犠牲とな
っている日本人が人類の闘いの先頭に立つべきだ」と訴えている。(編集部)
【パスクアル・セラーノへのインタビュー】
■“独立したジャーナリズムは存在しない”オルタナティブの真の使命は主導権を握る
こと
大手メディアに替わる独立したメディアの創出が可能なのか。日本でも議論されて久
しいが、未だに結論を聞くことはできない。それではジャーナリズムは社会を変えるこ
とができるのか。15年前にレベリオンを立ち上げたスペインのパスクアル・セラーノは
、イベロアメリカと欧州ですでに影響力を行使している。彼は組織内か個人かを問わず
、新しい時代の誠実なプロは、分析と解釈のジャーナリズムを実践すべきだと説く。そ
の上で、オルタナティブの真の使命は、政治においても、社会学的意味においても、メ
ディアコミュニケーションにおいても、主導権を握ることだと強調している。(編集部
)
■沖縄密約文書「廃棄の可能性」 不可解な「無いものは無い」判決
池田龍夫(ジャーナリスト)
■私のTPP反対論 ―オバマの輸出策に危うい日本の主権―
半澤健市(元金融機関勤務)
■書評『権力VS.調査報道』高田昌幸・小黒純編著(旬報社 2000円+税)
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。