国の震災復興資金から出た捕鯨支援資金
- 2011年 12月 12日
- 交流の広場
- 理恵グローガー
12月10日の「がんばろう!さよなら原発1000万署名」集会に5000人もの方々が集まったそうで、素晴らしいことだと思います。本当にご苦労さまでした!私は今日、1000万署名運動にオンライン署名させて頂きました。
ちきゅう座に掲載されていました松本保昭さんの12月7日付の記事「東京電力への 9000 億円「贈与」は許せません」にもありましたように、日本政府は9000億円を名目は「被災者への賠償金を払うためのみの目的」として、東電に支払う事になりました。「それだったら、何も東電を通さなくても、国が直接、被災者に賠償金を払えばよいのでは?」といった単純な疑問が私には湧いてきます。そして、或るネットの情報によれば、この冬、東電社員が受け取ったボーナス平均支給額は374000円となっています。国から(国民の税金から)、9000億円という莫大な援助金を貰っておきながら、なぜ彼らはしゃーしゃーとボーナスを貰える図々しさがあるのでしょうか?
そして一昨日、ABC Newsの「日本の捕鯨船が得た23億円の支援金は、国の震災復興資金から出た」と書かれたヘッドラインが、私の目に留まりました。
愕然とした思いで、私は記事に目を通しました。確かに日本人の中には、原発には反対するが捕鯨制限には同意できないという人が多いようです。
しかし、一般的に言って、こちらのヨーロッパ人は、鯨を殺しそれを食用にする事は、(捕鯨者が乱獲したが故に)絶滅の危機にさらされた鯨を保護することを無視した、バーバリックな行為であると、眉をひそめ ています。いずれにしても、被災者の方たちに支払われるための資金財源の一部が、捕鯨業の支援資金として使われたという事は、国の政策が、被災者を救うことを何よりのプライオリティーとしていない事、そして政府には日本復興への具体的なヴィジョンが全くないのだということを明らかに示していると思います。
これと同じテーマを扱った記事は、BBC NewsやThe Sydney Morning Heraldにもあったのですが、ABC Newsの報道内容が最もインフォーマティヴな内容だと感じましたので、これをご紹介させて頂くことにしました。ただ、勝手ながら、BBC News および The Sydney Morning Heraldの記事から抜粋した文を付け加えさせて頂いたところが二箇所ありますので、その旨ご了承下さい。
概説:ABC(Australian Broadcasting Corporation) News (12月9日付)
アダム・ハーヴィー(Adam Harvey)氏の記事
日本の捕鯨船が得た*23億円の支援金は、国の震災復興資金から出た。
日本政府が、捕鯨船団に23億円の支援金を、国の震災復興財源から支払っていた。日本の捕鯨船団は、国の震災復興資金の一部を支援金として頂戴するという特別待遇を受けたわけである。
そして、日本の捕鯨船3隻が、石巻港を出港し南極海へ向かった。 捕鯨船団は、この3ヶ月間に900頭の鯨を捕らえる計画だという。
日本の捕鯨船団は、先の捕鯨シーズンに、反捕鯨グループ、「**シーシェパード」に捕鯨を妨害されたため、捕鯨を途中で放棄しなければならなかった。そのために今回は、捕鯨船の警備態勢・護衛をずっと強化した。
しかし、この捕鯨船団への支援資金の出所が国の震災復興資金ということで、日本国内では抗議の声が上がっている。(***日本では、日本環境法律家連盟や消費者組合を含めた合計18のNGO(非政府組織)が、野田総理大臣宛の抗議書に署名した。)
日本水産庁は、「3月の地震・津波によって破壊された町のひとつが捕鯨船港であるから、震災復興資金から捕鯨船団のために23億円が支払われるのは正当な事である」と主張している。
グリーンピース・ジャパンの事務局長、佐藤潤一氏は、「捕鯨と地震を結びつけるなんて、かなり極度で無理な解釈の仕方であるし、復興とは全く関係のない事だ。捕鯨業自体が深刻な財政問題を抱えているために、この援助資金は、捕鯨業の債務を払うために使われているのだ。」と言っている。
一方では、「シーシェパード」の三隻の船が、この日本の捕鯨船を妨害しようと、Albany港とHobart港を出港するための準備を進めている。シーシェパード・グループの設立者、ポール・ワトソン氏は、「日本の震災復興のための資金が、捕鯨支援金として使われているということに、多くの人々は憤慨すべきだ。『日本の被災者を助けようと思って寄付した自分のお金が、鯨を殺すために使われるなんて!』と怒っている人が沢山いるのを僕は知っている。」と言う。
更にワトソン氏は、「我々は、オーストラリア政府にも我々の反捕鯨活動を支援してくれるように頼んである」と述べた。
それに対して、オーストラリアのトニー・バーク環境大臣は、「南極海での捕鯨は間違っているし違法行為でもあるが、オーストラリアは捕鯨現場に税関や海軍艦船を送り出すプランはない。オーストラリアは捕鯨を阻止しようと、国際司法裁判所に訴えている。これは、世界のどの国よりも、我々が強硬路線を取っていることを示している。南極海は捕鯨サンクチュアリであり、そこで捕鯨する事は間違いである。」と言った。
日本水産庁が出した声明書には「我々が目指す捕鯨航海の目的は、科学的データを得る事にある」と述べられている。(****しかし、批判者は、こういった主張は単に商業捕鯨の隠れ蓑であると言っている。そして、鯨が絶滅寸前の動物であるという事を無視し、食用のために捕鯨を続けている日本人を非難している。)
今月末までには最初の鯨が捕獲されるはずである。そして、捕鯨シーズンは来年の3月まで続く。
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(注)*この23億円という数字は、(原文の金額がオーストラリア・ドルになっていたため)BBC Newsからとりました。
**シーシェパード環境保護団体(Sea Shepherd Conservation Society):通称シーシェパード、SSは、海洋生物保護のために直接行動を戦術として用いる国際非営利組織の海洋環境保護団体。本部はアメリカ合衆国ワシントン、フライデーハーバー。国際環境保護団体グリーンピースを脱退したカナダ人、ポール・ワトソンが1977年に設立した。アイスランドやノルウェーの捕鯨船を体当たりで沈没させるなど過激な行動で知られ、2005年からは南極海での日本の調査捕鯨を妨害するようになった。―ウィキベディアより
***「The Sydney Morning Herald 」記事から。
http://www.smh.com.au/environment/whale-watch/japan-uses-285m-in-disaster-funds-for-whaling-claim-20111207-1ohzc.html
****「BBC News 」記事から。
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-16064002
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