“対シリア「人道的戦争」は第3次世界大戦をもたらすのか?”(M.チョスドフスキー)
- 2012年 1月 1日
- 時代をみる
- M.チョスドフスキー童子丸開
米国・イスラエル・NATOが予定する対シリア・イラン戦争は「人道」にこじつけて開始されることになるだろう。オタワ大学経済学教授ミシェル・チョスドフスキーは、この点について特別に読者の注意を促す。それに関連してマハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ『リビアと大嘘:戦争に利用される人権団体』をご参照いただきたい。
さらに言えば、もし彼らがイランの核施設を攻撃し、特に核兵器を用いて攻撃するならば、それはフクシマとさえも比較にならないほどの破滅的な影響をこの世界にもたらすかもしれない。この意味でも、日本人はこの対シリア・イラン戦争策謀に反対し戦争を防ぐ努力をしなければならない。この点については、次の訳文をぜひご参照いただきたい。
http://chikyuza.net/archives/17529
ミシェル・チョスドフスキー「第三次世界大戦:対イラン先制核戦争の開始」(松元保昭訳):ちきゅう座サイト
ここでご紹介する訳文の原文は次である。
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=25955
A “Humanitarian War” on Syria? Military Escalation. Towards a Broader Middle East-Central Asian War?
by Michel Chossudovsky (August 9, 2011)
書かれたのは2011年8月9日とやや古いのだが、しかしここに書かれている武装反乱を陰から支援してシリアの政治的不安定化を図る米国・NATO(トルコを含む)とイスラエルの企みは、いま(12月)、アラブ連盟による視察およびそれによる「シリアへの有罪判決」へとエスカレートし、リビアと同様の軍事侵略への道を急速に開いているように思える。シリアに軍艦を急派し侵略戦争にストップをかけようとしているロシアでの「プーチン降ろし」の動きもまた、この文脈の中で捉える必要があるだろう。
原文の冒頭でチョスドフスキーはウェズリー・クラーク将軍の言葉を引用している。これは非常に重要な証言と思われるので、ここでもう少し詳しく取り上げてみたい。クラークは1999年のコソボ紛争でNATO軍の司令官となった人物であり、2004年の米国大統領選で民主党の代表候補として臨んだが、ケリー候補に敗れた。
ソースは米国のオールタナティヴ・メディアDemocracy Nowが2007年3月にTV用に作成したインタビュー番組の記録だが、彼はそこで極めて重大な証言を行ったのである。この筆写記録の原文は次のサイトで読むことができる。
またこれはGlobal Research誌によってもコピーされている。
http://globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=20070323&articleId=5166
ここで、クラーク証言の重要部分を取り出して和訳を施しておこう。これは2001年9月、911事件発生の直後についての話である。(太文字強調は訳者から。)
・・・911事件の10日後に私はペンタゴンに赴き、ラムズフェルド長官とウォルフォヴィッツ副長官に会いました。それから私はいつも私のために働いていた参謀本部の人々に挨拶をするために下の階に行きますと、一人の将軍が私を呼びました。「閣下、ちょっとお話があります」。私が「君は忙しいのじゃないかね?」と言いますと、彼は「いえ。実は、私達はイラクと戦争をすることについて議論を行ったのです」と言ったのです。9月20日かそこらのことでした。私は言いました。「イラクと戦争するだって? なぜだ?」彼は答えました。「解りません。たぶんあの人たちは他に何をするべきなのか知らないのでしょう」。そこで私は「ウム、あの人たちはサダムとアル・カイダを結び付ける情報を何か見つけたのか?」彼は言いました。「いいえ、全く。それに関して新たなものは何もありません。あの人たちは単純にイラクと戦争しに行く決定をしただけなのです」。・・・
そして私は2、3週間後に再び彼に会いました。そのときまでにはすでに我国はアフガニスタンを爆撃していました。私は「我々は依然としてイラクと戦争をする予定なのだろうか?」彼は言いました。「もっと悪いことです」。彼は自分の机に戻り、1枚の紙を取り上げました。そして言いました。「私はこれを上の階から持ってきたところです」。上の階とは国防長官のオフィスのことですが、「今日のことです」と彼は続けました。「これは、どうやって5年以内に7つの国々を取り除くのかを述べたものです。それはイラクを皮切りに、次はシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランです」。 ・・・
クラークが妄想を公言する人物とも、またそれが許される立場にあるとも思えない。このインタビューが行われた当時、彼は2008年の大統領選に出馬する可能性を棄てていなかったのだ。他の情報とつき合わせてみても、ペンタゴンが911事件発生の直後にすでにイラク戦争を決定しており、また北アフリカから中央アジアにまたがる幅広い地域で政権転覆と侵略戦争を本気で画策していた可能性が極めて高い。(参照:『アフガン・イラク戦争開戦の大嘘と911事件』)
以下の訳文ではこのクラーク証言を繰り返さないことにするが、我々はすでに、彼らがリビア、ソマリア、スーダンで、時間的なずれや前後はあっても、着々とその野望を実現させてきたことを確認できるだろう。そして2006年にイスラエルが行ったレバノンへの侵攻は、シリア系組織ヒスボラの猛反撃によって退却させられたが、レバノンはいずれ再びイスラエルによる大規模で本格的な軍事侵攻を受けることになるだろう。
そして、クラーク証言にもあるとおり、彼らがはるかに以前から最も重大な戦略目標としてつけねらっているのがシリアとイランである。それはジェイムズ・ペトラスによれば、実際にはイスラエルと米国内イスラエル・ロビーのための戦争である。(米国のイラン侵略意図についてはこちらおよびこちらも参照のこと。)そしてそこで口実となるのが、彼らお得意の「人道」、「人間に対する犯罪」ということになるのだろう。イランに対しては、天野IAEAを使っての「核の脅威」という根拠を明らかにできない難癖付けも待っている。そしてそれは、チョスドフスキーも危惧するように、経済危機にのた打ち回る欧州を道連れにし、中国とロシアを巻き込んで世界を阿鼻叫喚の巷と化する「第3次世界大戦」へとつながっていくことになるのだろうか。
以下に訳文(仮訳)を掲げるが、念のために、英語原文を訳文の後に貼り付けておく。
(2011年12月29日、バルセロナにて、童子丸開) *************************************
対シリア「人道的戦争」?増大する軍事作戦は、
拡大中東・中央アジア戦争に向かうのか?
ミシェル・チョスドフスキー 2011年8月9日
拡大された中東・中央アジア戦争は、ペンタゴンが1990年代半ば以来描き続けてきたものである。
拡大戦争のシナリオの一部として、米国・NATO連合は国連が支持を与える「人道的委任統治」という名の下でシリアに対する軍事攻撃を行う計画を練っている。
漸次的拡大が軍事アジェンダに必須の部分だ。「政権転覆」を通しての主権国家の弱体化は軍事的な計画と緊密に調和しているものである。【小泉内閣以後のめまぐるしい日本の「政権交代」もきっとそうなのだろう:訳注】
ここに、米国・NATOが行う一連の戦争劇によって特徴付けられる軍事ロードマップがある。
シリアとイランを攻撃する戦争準備は、長年にわたる「その準備ができている進歩した国家」の中で行われる。「シリアの責任とレバノンの主権回復法案(仮訳:The Syria Accountability and Lebanese Sovereignty Restoration Act of 2003)」は、シリアを「ならず者国家」に分類し、テロリズムを支える国としている。
シリアに対する戦争はペンタゴンに、イランに対して向かう拡大された戦争の一部とみなされている。ジョージ・W.ブッシュ大統領はその回顧録で、彼が「ペンタゴンにイランの核施設を攻撃するように命じ、さらにシリアに対する隠密の攻撃を考えた」ことを断言している。 (George Bush’s memoirs reveal how he considered attacks on Iran and Syria, The Guardian, November 8, 2010)
この拡大軍事アジェンダは戦略的石油備蓄とパイプライン・ルートに緊密に関連している。それは英米巨大石油企業に支えられている。
2006年のレバノン爆撃は慎重に計画された「軍事ロードマップ」の一部だった。レバノンでの「7月戦争」のシリアへの延長は、米国とイスラエルの軍事計画者たちによって考案されたものだった。それはイスラエル地上軍がヒスボラに敗北したために、諦めざるを得なかった。【このレバノン侵略の際に、イスラエルはいまだに正体の知られない新兵器を用いて、幼児から老人までを含む大虐殺を残して去った:訳注】
イスラエルによる2006年のレバノンでの戦争は、同時にまたイスラエルによる地中海北東海岸の支配を安定させる道を探るものだった。それは、レバノンとパレスチナ領地沖にある石油と天然ガスの海底鉱床の支配も含むものだった。
このレバノンとシリアの両国を侵略する計画は、2006年7月戦争でのイスラエル退却にもかかわらず、ペンタゴンの製図版の上に描かれ続けている。「2008年11月、テルアビブがガザ地域で大虐殺を開始するほぼ1ヶ月前に、イスラエル軍が、Shiluv Zro’ot III (交差する腕III)と呼ばれるレバノンとシリアに対する二面作戦の軍事演習を行った。この演習には、シリアとレバノンの両方に対する大規模な仮想侵略が盛り込まれていた」。(Mahdi Darius Nazemoraya, Israel’s Next War: Today the Gaza Strip, Tomorrow Lebanon?, Global Research、2009年1月17日を見よ)
テヘランへの道はダマスカスを通る。米国・NATOが主導する対イラン戦争は、最初のステップとして、不安定化の戦い(「政権転覆」)として行われるだろうが、それには反乱勢力を援助してシリア政府に立ち向かわせる隠密の諜報作戦を含むものである。
「保護する責任(”Responsibility to Protect”=R2P)」のロゴの下で行われる、シリアに対して向けられる「人道的戦争」は、同時にまた継続中のレバノンの不安定化を推し進めることだろう。
もし軍事作戦がシリアに対して実行されるとすれば、イスラエルが直接・間接的に軍事と諜報の作戦に絡んでいるだろう。
対シリア戦争は軍事的な拡大をもたらすことになる。
現状では4つの異なる戦場が存在する。アフガニスタンからパキスタンにかけて、イラク、パレスチナ、そしてリビアである。【この論文が書かれたのは8月9日である:訳注】
シリアに対する攻撃はこれらの戦場の統合をもたらすことだろう。それは結果として、拡大された中東・中央アジア戦争にまで続くのかもしれない。それには北アフリカと地中海からアフガニスタンとパキスタンまでを呑み込むものとなる。
現在続行中の抵抗運動は、シリアに対する軍事干渉を行う口実と正当化手段として仕えるように意図されている。反対派が武装している事実は否定されている。西側メディアの大合唱は、シリアでの最近の出来事をバシャール・アル・アサド政府に対する「平和的な抗議運動」として描いている。しかしながら同時に、イスラム武装勢力による武装した反乱組織の存在を確認できる証拠があるのだ。【2011年12月24日に起こった「アルカイダ」による爆破テロはその背後に米国とNATOが控えることを示唆する。またこちら、こちら、こちら、こちら、そしてこちらを参照のこと:訳注】
5月半ばのダラーでの抵抗運動の勃発以来ずっと、一方の警察や軍隊と他方の銃を手にした者たちとの間で銃撃戦が行われているのだ。政府の建物に対する放火もまた行われている。6月の終わりごろにハマで、裁判所や農業銀行を含む公共の建物が燃やされた。イスラエルのニュース・ソースは、武力衝突があったことは否定しているにもかかわらず、「抵抗者たちは大型のマシンガンで武装していた」ことを認める。 (DEBKAfile August 1, 2001. Report on Hama, 強調は引用者)
「あらゆる選択肢が存在する」
6月に、米国上院議員のリンゼイ・グラハムは(上院軍事委員会のメンバーだが)、「国民の生命を救うため」という見地から、シリアに対して向けられる「人道的」な軍事介入の可能性を示唆した。 グラハムは、国連安全保障理事会決議1973の下でリビアに適用された「選択肢」が、シリアのケースで考えられるべきであると提案した。
「もしリビア国民がカダフィに対して抵抗することに理があったというのなら、そしてそれは、彼がベンガジに迫っていたときに我々がNATO軍を投入しなかったら彼らが殺されたはずだったからなのだが、世界に問たいことは、我々がシリアでその点に行きつくかどうかということだ。
我々はまだそこまで行ってないのかもしれないが非常に近づきつつある。そこで、シリア国民を虐殺から保護することにみんなが心を配るのなら、今こそアサドに対してあらゆる選択肢が存在することを教えるべきときなのだ。」 (CBS “Face The Nation”, June 12, 2011)
シリアに関する国連安全保障理事会声明(2011年8月3日)の採用に続いて、ホワイトハウスは、間違い様のない表現でだが、シリアの「政権転覆」とバシャール・アル・アサド大統領の追放を呼びかけた。
「我々は安定させる目的で彼がシリアに留まるのを見たいとは思わない。むしろ我々は彼をシリアの不安定の原因であると見なす」。ホワイトハウス報道官ジェイ・カーニーが水曜日にリポーターに語った。
「そして我々は、率直にだが、アサド大統領がいなければシリアはより良い場所になるだろうと言ってよいと思う」。(シリア:米国は政権転覆の呼びかけに近づくように求める:IPS、2011年8月4日の引用)
経済制裁の延長はあからさまな軍事介入に向かう糸口を形作ることが多い。
シリアに対する全面経済制裁を認める目的を持つ法案がリーバーマン上院議員によって米国上院に提示された。さらに、8月早々にオバマ大統領に宛てた書簡があるのだが、これは60人を超える米国上院議員が「追加制裁を遂行し、その一方でまた、言語道断の抑圧に対して膨らむ一方の賠償費用を、シリアの政権が支払わなければならないことを明らかにすること」を呼びかけるものである。
これらの制裁は、銀行の送金と金融取引の停止と同時に、「シリア産石油購入の終了、シリアの石油とガスへの投資の凍結」を要求するものとなるだろう。(2011年8月3日のPressure on Obama to get tougher on Syria coming from all sides – Foreign Policy,を見よ)
その間、米国国務省は亡命中のシリア反体制派とも会っている。秘密の支援が武装反乱勢力に送られているのだ。
危険な十字路:対シリア戦争-イラン攻撃への橋頭堡
8月3日の国連安全保障理事会議長によるシリアに対して向けられた声明の後で、モスクワのNATOへの使節ドミトリー・ロゴジンは軍事的緊張の拡大の危険性を警告した。
「NATOは、イランへの攻撃の橋頭堡を準備するという遠大な目標をもって、バシャール・アル・アサド政権の転覆を補助するために軍事攻撃を計画している。
(この声明が)意味するのは(軍事攻撃の)計画がうまく軌道に乗っていることである。それは軍事的そしてプロパガンダでの作戦の理論的な帰結であろうが、これは特定の西側諸国が北アフリカに対して行ってきたものだ」。このようにロゴジンは、イズベスチア紙とのインタビューで答えた。…このロシアの外交官は、その軍事同盟が「それらの西側諸国と一致する考え方を持たない」政権だけへの干渉を目的とする事実を指摘した。
ロゴジンは、シリアとその後のイエメンがNATOの対イラン攻撃を立ち上げる道の最終ステップになるかもしれないという一部専門家による見解に同意した。
「イランを囲む首縄が絞まろうとしている。イランに対する軍事計画が進行中だ。そして我々は間違いなくこの広い地域での戦争の拡大に関わりを持っている」。ロゴジンはこう言った。
リビアの教訓を学んで、ロシアが「シリアの状態を強制的に解決させることに対して反対し続けるだろう」と彼は言い、北アフリカでの大規模な紛争に続いて起こることが、世界の全てを荒廃させるかもしれないと付け加えた。
“Beachhead for an Attack on Iran”: NATO is planning a Military Campaign against Syria, Novosti、2011年8月5日)
【写真:ドミトリー・ロゴジン、2011年8月】
対シリア攻撃への青写真
ドミトリー・ロゴジンの警告は、軍事サークルの中でよく知られ文書化されている確実な情報に基づくが、それは現在NATOがシリアに対する軍事攻撃を計画中であるというものだ。この点について、対シリア攻撃のシナリオが現在作成中であり、そこにはフランスと英国とイスラエルの軍事専門家が参加している。元フランス空軍司令官(chef d’Etat-Major de l’Armée de l’air)のジャン・ランヌー将軍によれば、「シリア陸軍を無力にするNATOの攻撃は技術的には実行可能である」。
「NATO加入諸国はシリアの防空施設をつきとめるために衛星技術を使うことから始めるだろう。そして数日後に、シリアを上回る爆撃機が、キプロスの英軍基地から離陸して48時間ほどをかけてシリアの地対空ミサイル(SAMs)とジェット機を破壊する。それから同盟国の軍用機がシリアの戦車と地上軍への壊滅作戦を開始するだろう」。
このシナリオはフランス軍の分析に基づいたもので、英国の軍事専門誌Jane’s Defence Weeklyおよびイスラエルのテレビ局チャンネル10からのものである。
シリア空軍はほとんど脅威にならない。それは60機ほどのロシア製ミグ29を持つ。しかしその他、約160機のミグ21、80機のミグ23、60機のミグ23B、30期のSu22、そして20機のSu-24MKは時代遅れだ。
…「私は純軍事的には何の問題も無いと思う。シリアは西側のシステムに対して何の防御もできない。…(だが)それはリビアよりも危険なものだろう。それは大きな軍事作戦になるだろう」。元フランス空軍司令官ジャン・ランヌーはEUオブザーバーに語った。彼は、ロシアが国連の信託統治に拒否権を発動するだろうし、NATO軍がアフガニスタンからリビアにまで広がっていてNATO諸国が経済危機を抱えているため、その行動が極めて起こりにくいことを付け加えた。(Andrew Rettman, Blueprint For NATO Attack On Syria Revealed, Global Research、2011年8月11日)
より拡大された軍事ロードマップ
リビアとシリアとイランがその軍事ロードマップの一部を為すのだが、この戦略的な展開は、もしそれが実行されるならば、中国とロシアをも脅威にさらすことになるだろう。両国とも、シリアとイランに投資し、交易を結び、同様に軍事的な協定を結んでいる。イランは上海協力機構(SCO)のオブザーバーの位置にあるのだ。
拡大はその軍事アジェンダの一部である。2005年以来、米国とその同盟者は、米国のNATOにおけるパートナーおよびイスラエルを含むが、最新鋭兵器システムの膨大な配備と蓄積に精を出してきた。米国とNATOメンバー諸国およびイスラエルは十分にまとまっている。 http://i.infoplease.com/images/msyria.gif
イスラエルとトルコの役割
アンカラとテルアビブはどちらも武装反乱の支持に関わっている。その努力は両国政府と諜報機関の間で調和されている。
報道によれば、イスラエルのモサドは過激なテロ集団サラフィに対して陰で支援を与えている。サラフィは5月中旬にダラーでの抵抗運動が発生した際にシリア南部で動きを活発化させたものだ。報道は、サラフィの反乱への財政的支援がサウジアラビアから来ていることを示唆している。(Syrian army closes in on Damascus suburbs, The Irish Times, May 10, 2011を見よ)
トルコ政府のレセップ・タイビ・エルドガンは、亡命シリア人反対派グループを支援する一方で、北シリアでのムスリム兄弟団の武装反乱を応援する。
シリア・ムスリム兄弟団(MB)(その指導者は英国に亡命中だが)および追放中のヒズブット・タハリール(Hizb ut-Tahrir:解放党)が共に反乱の背後にある。両組織とも英国のMI6に支援されている。このMBとヒズブット・タハリールの公然とした目標はどちらも究極的にはシリアの世俗国家を不安定化させることである。(ミシェル・チョスドフスキー著SYRIA: Who is Behind The Protest Movement? Fabricating a Pretext for a US-NATO “Humanitarian Intervention”, Global Researchを見よ)【ムスリム兄弟団は「ムスリム同胞団」とも翻訳されるが、その本拠地はエジプトにありサウジアラビアと同じスンニ派に属し、英米勢力と裏でつながっていることはよく知られている。2011年11月に行われたエジプト総選挙で傘下の「自由公正党」が第1党となったが、軍政は以前そのままに残っている。ムバラク元大統領がムスリム兄弟団を弾圧していたことを考えると、ムバラクを排除してその勢力を大きく表に出したことが、今後の中東情勢にどのような意味を持つのか、もはや明らかだろう。:訳注】
6月に、トルコの部隊が国境線を越えてシリア北部に侵入したのだが、公式にはシリアの避難民を救援するためであるとされた。バシャール・アル・アサド政権は、シリア北部への反乱勢力の侵入を直接に支援したとして、トルコを非難した。
「6月4日に北部シリアで、500人にのぼる反乱勢力の戦士がシリア陸軍の要地を攻撃した。その標的は軍諜報機関駐屯地であり、そこは、トルコとの国境付近にあるジスル・アル・ショウグホウルで72人の兵士を殺害した36時間の襲撃の最中に、占領されたといわれる。
「我々はその犯罪者たち(反乱戦士たち)がトルコから来た武器を使っているのに気付いた」と一人の軍人が語った。
これは、トルコに対して反乱を援助しているとしてアサド政権が非難した最初だった。…当局者は、反乱勢力がシリア軍をジスル・アル・ショウグホウルから追い出して町を奪ったことを語った。アサド軍の救援部隊が到着する前に、政府の建物が破壊され焼かれたといわれる。
その視察を率いたあるシリア当局者は、ジスル・アル・ショウグホウルでの反乱者がアルカイダ系の戦士で成り立っていたと言った。彼は反乱者たちが多くのトルコ製の武器と軍需物資を使っていたと語ったが、アンカラの政府がその装備を提供したとは非難しなかった。(Syria’s Assad accuses Turkey of arming rebels, TR Defence, Jun 25 2011)
西側のメディアは否定するにもかかわらず、イスラム主義反乱者たちに対する外国からの支援は「抵抗運動に浸透している」もので、西側諜報機関の情報源で確認される。元MI6高官(およびEUの上級顧問)アリステアー・クルークによると次のようなことである:「(シリアでの)出来事の背後にある2つの重要な勢力は、スンニ派過激派勢力と、フランスや米国にある亡命シリア人グループである。過激派たちはアブ・ムサブ・ザルカウイの教えに従うが、彼は最近のヨルダンのイスラム主義者であり、ヨルダンとレバノンとパレスチナとシリアにビラド・ア・シャムと呼ばれるスンニ派の首長国を作り上げることを目標にしていた。彼らにはイラクでの都市ゲリラ戦の経験があり外国からの財政援助を受けている。彼らはアサド軍を攻撃する抵抗者たちに浸透している。6月のジスル・アル・ショウグホウルでのようにだが、そこでは政府軍に多数の死者を与えたのだ。(アンドリュー・レットマン著 Blueprint For NATO Attack On Syria Revealed, Global Research、2011年8月11日、強調は引用者)
【アブ・ムサブ・ザルカウイとそのイラクでの活動についてはこちらを参照のこと。言うまでもないが彼らもスンニ派に属する:訳注】
その元MI6高官は同時に、イスラエルと米国がこのテロリストたちへの支援と財政援助を行っていると断定している。『クルークは、亡命者グループの狙いは反イスラエルの(シリア)政権の転覆であると言った。彼らは米国によって資金を与えられ訓練を受けており、イスラエルとつながっている。彼らはスンニ派の族長たちに金を渡して人々を街頭に出させ複数のNGOと共に働かせているのだ。それは西側メディアによる確認の取れない残虐行為の話のネタを作るためであり、また暴力の拡大がNATOの干渉を正当化させるだろうという希望を持って過激派たちに協力するためである。【2011年12月末に行われたアラブ連盟の「視察」およびそれに関するマスコミ報道の正体が明らかになるだろう。】
レバノン内の政治グループも同様にこれに加わっている。レバノンの諜報機関はサラフィの戦士たちへの攻撃用のライフルと自動火器類の密輸を確認した。サウジアラビアに後援されたレバノンの政治勢力による密輸が行われた。
イスラエル-トルコ軍事協力協定
イスラエルとトルコは、シリアにまさに直接に向かう形で、レバノン-シリア東地中海岸(レバノン沖のガス鉱床とパイプライン・ルートを含む)に関連する軍事的協力の協定を結んでいる。
すでにクリントン政権時代に、米国、イスラエルとトルコの間の三角同盟が明らかになっていた。この「三国同盟」は、米国軍参謀会議によって主導されているのだが、この3国の中東地域国境に関する軍事的な決定を統合し調和させるものである。これはイスラエルとトルコそれぞれが持つ米国との緊密な軍事的結束に基づき、テルアビブと案からの間にある強い軍事的な相互関係につながるものである。
この3国の同盟はまた、テロとの戦いや合同軍事演習といった共通の利害を持つ多くの分野を含む2005年のNATO-イスラエル軍事協力協定とも結びついている。これらのNATOとの軍事協力関係は、イスラエル軍によって「イスラエルを脅かす潜在的な敵、主要にイランとシリアだが、に関するイスラエルの抑止能力を増強する」ための手段とみなされている。(ミシェル・チョスドフスキー、“Triple Alliance”: The US, Turkey, Israel and the War on Lebanonを見よ)
その間に、最近のトルコ上層部での人事異動によって軍の内部で親イスラム勢力が強化されてきた。6月の終わりごろに、陸軍総司令官でトルコ軍参謀総長であるイシク・コサネル将軍が、海軍と空軍の司令官と共に辞任した。
コサネル将軍は軍内部で明確に非宗教的な姿勢を示していた人物だった。ネクデット・オゼル将軍がその代わりとして陸軍司令官と新しい軍参謀総長として指名された。
こういった進展は決定的に重要である。彼らは米国の利益を支持しがちなのだ。彼らは同様に、シリア北部での武装反乱を含むイスラム兄弟団にとって有利なように、軍隊内で権力の潜在的なシフトを行おうとしている。
「新たな指名は、エルドガンとトルコの支配政党に力を与えている。…その軍事力は、この地域でより野心的な計画を実行することが可能である。シリア内でリビア風のシナリオを使用する場合には、トルコが軍事侵攻を目指す可能性があると予測できるのだ。」( New appointments have strengthened Erdogan and the ruling party in Turkey : Public Radio of Armenia, 2011年8月6日、強調は引用者)
【写真:ジスル・アル・ショウグホウルでのイスラム兄弟団反乱者たち:写真はAFP June 16, 2011】
(注意:この写真は多くの点で誤誘導するものだ。大部分の武装反乱者は近代的な武装で高度な訓練を受けている。)
拡張されるNATO軍事同盟
エジプト、(ペルシャ)湾岸諸国そしてサウジアラビア(拡大された軍事同盟に含まれる)はNATOのパートナーである。それらの軍隊がシリアへと向けられる戦争にかりだされる可能性がある。
イスラエルは2005年に調印された合意にしたがって実質的にNATOのメンバーである。
NATOの拡大された同盟内で軍事的計画は、ペンタゴンとNATOとイスラエル国防軍(IDF)との間の協力によって推し進められる。また同様に最前線に立つアラブ諸国の活発な軍事介入によっても推し進められるが、それらの諸国には、サウジアラビア、湾岸の諸国、エジプトが含まれる。それらの全てを含む10のアラブ諸国とイスラエルは、地中海ダイアローグとイスタンブール協力イニシアチブのメンバーである。
我々はいま、危険な岐路に差し掛かっているのだ。地政学的なつながりはずっと遠方にまで拡大する。
シリアはヨルダン、イスラエル、レバノン、トルコそしてイラクと国境を接している。そこはユーフラテス流域を横切って広がり、主要な水路とパイプライン・ルートが交差する場所なのだ。http://www.globalresearch.ca/coverStoryPictures2/25718.jpg シリアはイランの同盟国である。ロシアはシリア北西部に海軍の基地を持っている。(地図を見よ)
タルトゥスに基地を作りダマスカスとの軍事技術協力を急速に拡大したことは、シリアを、ロシアの中東での橋頭堡と城壁に変えた。
ダマスカスはイランの重要な同盟者でありイスラエルにとって妥協できない敵である。言うまでもないが、この地域にロシアの軍事基地ができたことは現存の軍事的な相互関係に修正を間違いなくもたらすものとなるだろう。
ロシアはシリアの政権をその保護下に置こうとしている。それはほぼ間違いなくモスクワとイスラエルの関係を悪化させるだろう。ロシアはイランの政権を近よらせ核開発計画の話題についての取り扱いを難しくさせるようにするかもしれない。(Ivan Safronov, Russia to defend its principal Middle East ally: Moscow takes Syria under its protection, Global Research 2006年7月26日)
第3次世界大戦のシナリオ
過去5年の間、中東と中央アジアの地域は活発な戦争の場であり続ける。
シリアは地上軍と共に相当な防空能力を持つ。
シリアは、その防空システムをロシア製Pantsir S1防空ミサイルを用いて作っている。2010年に、ロシアはシリアにYakhontミサイルシステムを配備した。ロシアのタルトゥス海軍基地からのYakhontの攻撃は「300kmに及ぶ範囲にある敵艦にまで及ぶように設計されている」。(Bastion missile systems to protect Russian naval base in Syria, Ria Novosti, 2010年9月21日)
この二つの軍事同盟は、それぞれ、米国・NATOの側、およびシリア・イラン・SCO(上海協力機構)の側であり、言うまでも無いことだが、イスラエルの軍事的なかかわり、シリアとレバノンの複雑な関係、そしてシリア北部国境に対するトルコによる圧力は、戦火拡大の危険なプロセスを否定しようも無く指し示している。
米国・NATOに後押しされるシリアへの軍事干渉がいかなる形であれ、それは地域全体を不安定化させ、広大な地理的範囲にわたって戦争を拡大させる可能性を持つだろう。それは東地中海からアフガニスタン・パキスタンの中国やウズベキスタンとの国境にまで広がるのかもしれない。
要するに、リビアとの戦争に伴って米国・NATOの軍事作戦はその能力に関して限界を超えて広がっている。短期間での米国・NATOの軍事作戦遂行を我々が予測することはできないが、武装反乱への隠れた支援を通して行われる政治的な不安定化のプロセスがほぼ間違いなく続きそうだ。
【訳出、ここまで】
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http://doujibar.ganriki.net/Today%27s%20World%20of%20Fraud%20&%20Myth/the_way_to_War_on_Syria-1.html
を転載。)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1762:120101〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。