フクシマで本当は何が起こったのか?
- 2012年 1月 21日
- 時代をみる
- グローガー理恵
今日ご紹介したいと思っております「フクシマで本当は何が起こったのか?(What really happened at Fukushima?)」というタイトルの記事は、1週間ほど前に、アメリカに住む息子がメールに添付して送ってきてくれたものです。記事の日付が2011年7月2日とフレッシュではありませんが、記事は、3.11震災時、福島原発所に居合わせた作業員たちが目撃・体験した事を基に展開していき、原発が抱える(多くの問題の中で)一つの問題にスポットライトを当てながら、私たちに大きな疑問を投げかけています。
下が原文へのリンクです。
http://www.theatlanticwire.com/global/2011/07/meltdown-what-really-happened-fukushima/39541/
なお、記事に出てきますケイ・スズオカ氏の告発については、2003年にTBSの「ニュース23」が特報しています。下が動画へのリンクです。
http://www.youtube.com/watch?v=fBjiLaVOsI4
スズオカ氏はフクシマ原発事故の後、福島を訪れました。「9年前の内部告発者が見た今の原発」動画へのリンク
http://www.dailymotion.com/video/xlxdvt_yyyyyyyyyyyy-yyyy_news
概説:フクシマで本当は何が起こったのか?
The Atlantic Wire オンラインニュース-2011年7月2日付
(*ジェイク・エーデルシュタイン、*ディヴィッド・マクニール寄稿)
3.11に起こった地震そして津波。今も進行中である日本の原子力災害。津波が押し寄せてくる40分前に起こった地震が、福島第一原発所にもたらしたダメージどは、実際どれぐらいのものだったのだろうか?
もし地震のみが、福島原発の構造的破壊を招来させ、原発所の核燃料の安全性を危うくする招来因となったのだとしたら、日本にある福島原発の原子炉と似通った構造の原子炉の全てが危険にさらされている事になる。
何ヶ月にも渡って告げられてきた政府の虚言・誤報の中で、ある一つの話が印象に残る。:3月15日、東京、記者会見で、(当時の)枝野幸男官房長官は、「地震が福島第一原発の電源を破壊したために、原子炉の冷却装置が停止している」と述べた。
そして、何度も何度も繰り返された言葉がある。それを要約すれば: 「地震の後、「想定外」の出来事、津波が起こった。-津波は原発のバックアップ発電機を洗い流してしまったために、全ての冷却装置が停止し、それから一連の出来事が起こり、世界初のトリプル・メルトダウンが起こった。...」
しかし、もし、津波のために電力源が失われた以前に、地震の揺れが、再循環パイプや冷却パイプを破裂させ、破損させ、破れさせ、漏れさせ、完全に破壊したのだったとしたら...?
筆者は、3.11地震・津波が起こった時、福島原発所に居合わせた数人の作業員たちと話をした。そして、彼等は同じ内容の話を繰り返し告げたのだった。-それは、津波が原発に到達する前に、既に配管や原子炉に重大な損害が生じていたということであった。 -以下が彼等の話である。彼等は、未だ福島の現場で働いており東電とも関係があるため、各々の名前は伏せておく。
1)作業員No.1-整備エンジニア(20代後半)-3.11震災の時、福島原発所にいた。-: 「私自身、パイプが壊れたのを見た。恐らく原発内の至る所でもっと沢山のパイプが破損されたものと推察している。パイプの漏れも確実にあった筈だ。でも、どのパイプが漏れていたのかは、はっきりしない。-この事は調査されるべき事だと思う。第一号原子炉のタービン建屋の壁が剥ぎ取られ崩れてしまった所もあった。」
原子炉建屋の壁は壊れやすいと、彼は述べる。:「原子炉建屋の壁が強固だと、内部からのほんの僅かの圧力だけで、ひび割れが出来てしまうので、原子炉建屋の壁はもろくて壊れやすくなければならない。原子炉建屋内で圧力があって圧力が蓄積されると、建屋の壁内の装置を損壊させてしまう可能性があるから、圧力は建屋から容易に逃げ出せるようにしなければならない。だから、緊急事態の場合には、壁が圧力に撓み崩れるようにデザインされている。他の人々にとってはショックな事かもしれないが、これは我々にとっては常識なのだ。」
2)作業員 No.2、技術士(30代後半)-地震が起こった時、現場にいた。-: 「地震には、二つの波があったように思われた。一番最初の波は、衝撃がとても強烈で建物を烈しく揺さぶった。壁が裂けたり崩れ落ちたりする所があった。自分はそれを見たわけではないが、現場に備えてあった幾つかの酸素タンクが爆発したのは確かだと思う。誰かが『皆、避難しなくては!』と、大声で叫んだ。私はその叫びに反応し、すぐさま逃げ出した。
現場を逃げ去る時、数本のパイプが亀裂し開口してしまっているのを見て、私はぎょっとした。確か冷水供給パイプも含めて裂けて壊れてしまっていたと思う。という事は、冷却材が原子炉の炉心に届かないということを意味していた。冷却材を炉心に供給できないのだったら、メルトダウンが起こるという事だ。原子力科学者でなくたって、こんな事は分かる。」
避難するために自分の車に向かっていた時、彼は第一号原子炉建屋の壁が既に崩れ始まっているのを見た。「最初の数分間は、誰も津波のことなんて考えていなかった。我々は唯、生き延びることしか頭になかった。」と彼は言う。
3)作業員No.3-彼は地震が起こった時、ちょうど出勤したところだった。彼が出勤した5分か15分後に、監督者が作業者全員に避難命令を出した。.監督者は、「第一号原子炉にあるガスタンクが爆発した。おそらく酸素タンクらしい。その他にも構造損傷があり、パイプが破裂しメルトダウンの可能性がある。すぐに避難してくれ。」と説明した。-: 「地震で大揺れがあった時、私は近くの建物の中に居た。二番目の震動があった後、耳をつんざく様な大爆音を聞いた。窓の外を覗いてみると、第一号原子炉から白い煙が出ているのが見えた。私は、これが最後だと思った。」
そして、作業員たちが避難しようと準備している時に津波警報があった。多くの従業員は現場の近くにある建物の最上階に上がり、救助されるのを待ったのだった。
福島第一原発で働いた経験があるエンジニアー、**ケイ・スズオカ氏は、「地震の後にメルトダウンがあったということに、私は驚いていない」と語った。GE(General Electric)社の原発保守点検作業者だったケイ・スガオカ氏は、2000年6月、原子力安全保安院に、フクシマ原発のトラブル隠しを内部告発した人である。
スガオカ氏の内部告発から2年後の2002年9月、東電は終に、他にも暴露された偽造データも含めて重大な循環配管にひび割れがあるというデータを隠蔽していたということを認めた。その結果、東電は全ての原子炉の稼動を停止し、福島第一原発を含めた原子炉を点検する事を強いられることになった。
5月23日、インタヴューを受けたスガオカ氏は、「フクシマ原発には沢山の問題があるのだが、問題への取り組み方が一度にちょっとだけというやり方で断片的だった。建設作業、検査作業、溶接作業といった殆どの重要な作業が、経験や技術を持たず放射線に対する知識も殆どない下請け業者の従業員に任されていた。私が覚えている限りでは、防災訓練なんてなかった。TEPCOの従業員は決して手を汚さなかった。」と述べた。
「東京電力・暗黒の帝国」の著者、恩田勝亘氏は、「私は何十年間という時間を費やし、東京電力とその原発所について調査してきた。そして分かった事は、原発の最大の弱点は配管にあるということだ」と語る。
調査中、恩田氏は東電の原発所で働いた数人の技術者と話した。その中の一人の技術者は、「配管でパイプとパイプが、設計図通りに、きちんとつなぎ合わせられない事が度々あった。そういった場合におけるたった一つの解決法は、重機械を使ってパイプを出来るだけ近づけさせるように引っ張って、それから溶接する事だった。配管の点検は粗略で、点検しにくい配管の裏側などは点検されないことが多かった。点検自体が大体ぞんざいな目視点検だったので、シリアスな問題が 容易に見逃される事もあった。修理の仕事も、誰も必要以上に放射線には曝されたくなかったので、急いで行われた」と述べていた。
恩田氏は更に、「私が一番最初に福島原発に行った時、原発の内部はまるで配管の「蜘蛛の巣」のようだった。壁には配管が、天井には配管が、地面にも配管があった。配管の上を歩き、配管の下を頭を屈めていって潜り、時には配管にドンと突き当たったりしたこともあった。まるで配管の迷路のようだった。」と語った。
恩田氏は、第一号原子炉や他の原子炉で何が起こったのかと説明することは難しくはないと考える。: 「パイプは原子炉熱を制御し冷却材を運ぶ。それは、原発所の静脈と動脈で炉心は心臓となる。もしパイプが破裂したら、命にかかわる成分が心臓に届かないという事で、心臓発作を起こすと言うことになる。原子力の用語では、メルトダウンという事だ。簡単に言えば、熱破裂を統制するための冷却材が炉心に到達しないのだったら、炉心を冷やすことができないという事だ。」
メルトダウンが起こった9日前の3月2日、原子力安全保安院は東電に対して、「東電は福島原発にある再循環ポンプなどの重要な装置の検査を怠っている」と、警告を出していた。東電は装置を点検をする事、修理が必要な場合は修理をする事、それを原子力安全保安院に報告する事を命じられていたのだった。
中日新聞や他の情報源によると、地震の後、原子炉建屋内で非常に高レベルの放射能が測定された。それだけの放射能量を丸一日被曝したとしたら致命的であるというほどの高レベルであった。原子炉の水位はもう既に下がり続けていた。5月19日付の***Bloombergリポートは、「3月11日、午後3時29分、津波が原発所に到達する以前に、第一号原子炉から1.5キロ離れた所で放射線警報が鳴った」と述べている。
それに対して東電は、津波によって電力が失われる以前に、かなりのレベルの放射線漏出があったという可能性を否定はしていない。しかし、東電は、警報が鳴ったことに関しては、警報機が機能不全だったと主張している。3月11日、午後9時51分、CEOの命令のもと、原子炉建屋内は立ち入り禁止区域と宣言された。午後11時ごろ、原子炉の隣にあったタービン建屋内の放射線量が、毎時0.5から1.2ミリシーベルトに達した。メルトダウンは既に進行中であった。
地震によって実際に、福島原発にどのぐらいの破損がなされたのか、誰も知る由がない。また、地震によってもたされたダメージがメルトダウンの原因となったかも知れないという事も分からない。しかし、作業員たちの言葉と東電のデータが、地震によるダメージが著しいものであったことを示している事は明らかである。
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(注) *ジェイク・エーデルシュタイン(Jake Adelstein):米国出身のジャーナリスト。19歳当時の1988年に来日し上智大学で日本文学を専攻。1992年から12年間、読売新聞の記者として働く。その後アメリカに帰国。
*デイヴィッド・マクニール(David Mcneill):アイルランド出身のジャーナリストで2000年から日本に在住。「The Independent新聞」、「Irish Times新聞」、「週刊Chronicle of Higher Education」などに寄稿している。また、マク二ール氏は社会学博士、上智大学講師でもある。
**ケイ・スガオカ氏: 日本の原発の保守点検作業に従事していたGE(ゼネラル・エレクトリック)社の日系米人技術者。彼が2000年に福島原発のトラブル隠しを内部告発したことが、02年の福島・新潟の原発17基すべての停止という前代未聞の事態のきっか けとなった。ところが、内部告発を受けた原子力安全・保安院は、内部告発者を保護するどころか、ケイ・スガオカ氏の実名を東電側に通報。彼は命の危険を感じるほどの圧力にさらされることになった。
***Bloombergの Report
http://www.bloomberg.com/news/print/2011-05-19/fukushima-may-have-leaked-radiation-before-quake.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1792:120121〕
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