波乱含みの「大飯原発再稼働」問題
- 2012年 2月 23日
- 時代をみる
- 「大飯原発再稼働」問題池田龍夫
「大飯原発3・4号機の再稼働に待った!」をスローガンに、参議院議員会館講堂で2月20日午後1時から、緊急院内集会が開かれた。環境保護団体「FоE Japan」と「福島老朽原発を考える会」主催で、全国の市民団体や一般参加者が多数集まり、衆・参国会議員を交えての大集会となった。
事故調査委員会の論議は紛糾
「大飯原発再稼働」の問題点について、後藤政志・芝浦工大非常勤講師(元東芝技術者)井野博満・東大名誉教授(金属材料工学)が講演。両氏は耐震設計の不備、原子炉構造の脆弱性など問題点を具体的に指摘し、「先に発表された原発ストレステストには疑問点が多く、再稼働など認められない」と熱っぽく訴えた。国会での「事故調査委員会」に対する提言も含めたコメントは適切で説得力があった。
両氏は講演のあと退席、通産省で開かれた原子力安全・保安院の「安全評価意見聴取会」に臨んだ。前回の意見聴取会は議論半ばで打ち切られ、大飯3、4号機の第一次ストレステストを「妥当」とする審査書をまとめたものの、最終合意に至っていない。
「院内集会」を伝えない新聞の無関心さに驚く
参院議員会館での後藤、井野両氏が列挙した問題点は極めて重大な意味を持つと感じたが、21日付朝刊に詳報したのは、東京新聞「特報面」だけ。朝日新聞第3社会面ベタ扱い以外には掲載もされなかった。政府・原子力安全委員会側に、4月の「原子力規制庁」発足を前に、「大飯原発再稼働」への道筋をつけておきたいとの思惑が推測されていた時期だけに、メディアが厳しく監視する責務は重い。取材に最適な場所だったのに、「院内集会」を無視するようなメディア側の姿勢は全く理解できない。「国会論戦」だけ伝えて〝事足れり〟とする問題意識の欠如が感じられ、情けない気持ちになった。
国会議員47人が「再稼働急ぐな」との文書提出
また、この会合ではもう一つ重大な提案があった。市民団体の呼びかけに応じた国会議員47人が「原発再稼働に当たっては、事故原因を客観的・徹底的に究明しようとしている、国会の福島原発事故調査委員会の調査・結論を待つべきだ」との文書をまとめ、内閣府と通産省からの出席者に手渡した。福島瑞穂、川内博史、穀田恵二、照屋寛徳、馬渕澄夫議員らが署名した文書。〝超党派〟の動きであり、今後賛同者の拡大を目指すという。〝再稼働の是非〟につながる問題提起を、新聞各紙はなぜ報じないのか、これまた理解に苦しむ。
斑目春樹・原子力安全委員会委員長は20日の記者会見で、ストレステストについて「安全性を高めるための資料として、一次評価では不十分だ」との慎重姿勢を表明した。これに対し、藤村修官房長官は「斑目氏の発言が再稼働の妨げにはならない」と釈明しているが、再稼働論議の行方は、波乱含みである。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1835:120223〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。