「核燃料サイクル」問題の見直しを
- 2012年 3月 22日
- 時代をみる
- 池田龍夫
大飯原発の第一次ストレスト結果を受け、野田佳彦政権が再稼動を決めるのではないかと取り沙汰されているが、核燃料サイクル稼動へ向けた動きも気がかりである。
MOX燃料を100%使う原発計画
朝日新聞3月19日付夕刊が「核燃料サイクル認可進む」と特報した記事によると、経済産業省原子力安全・保安院がMOX燃料を100%使う原発にゴーサインを出すというのだ。
MOX燃料とは、ウラン・プルトニウム混合酸化物のことで、使用済み核燃料の再利用が検討されてきた。青森県・大間原発で建設が進んでいた施設だが、東日本大地震で工事が中断されていた。保安院が3月15日、技術的変更計画の申請につき「技術上の基準に適合している」などとして認可する姿勢を示したため、論議を呼んでいる。それは、4月に組織が消える保安院の「駆け込み認可ではないか」との疑念からで、NPO原子力資料室の伴英幸共同代表は「事故の新しい安全規制体制が始まっていないうえ、核燃料サイクルが見直されている途中だ。駆け込みで決めるべきではない」と批判している。
「原子力規制庁」発足を前にして…
電力会社はプルトニウムをMOX燃料に加工し、既設の原子炉の燃料とする計画を推進中だが、トラブル続きで実用化が危ぶまれている。六ケ所村再処理工場や高速増殖炉「もんじゅ」の相次ぐ事故によって、「撤退論」が高まってきており、欧米でも見直し論が上がっている。福島原発事故収束の見通しが全く立っていない今、原発再稼動や核燃サイクル始動を画策する野田政権の姿勢は危険極まりない。「原子力規制庁」発足を目前に、拙速決定だけはやめてもらいたい。
核燃料再処理路線から撤退を
毎日新聞3月19日付朝刊(『核心』欄)で、プリンストン大学フランク・フォン・ヒッペル教授は「もし、日本が早期に再処理路線を放棄すれば、それは国際的な(核の)安全保障にも貢献するだろう。日本は現在、唯一、核兵器を持たずに再処理を行っている国であるが、韓国は米国との原子力協定交渉の中で、日本と同じ権利を認めるよう求めている。他の国がこれに倣えば、分離されたプルトニウムが、核兵器製造に転用されるリスクを高めることになる。米国は再処理をすでに中止し、英国もやめる計画だ。日本が再処理路線を放棄すれば、世界の核不拡散の取り組みを強化し、無駄な支出をなくすことにつながる」と指摘していたが、傾聴に値する提言である。
使用済み核燃料は貯まる一方で、その再使用を目指した「核燃料サイクル」は完全に行き詰まってしまった。この現状に早く気づき、ヒッペル教授提案のように大胆な政策転換を打ち出すべきだと考える。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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