神山伸弘ほか著『ヘーゲルとオリエント』(跡見学園女子大学・神山伸弘、2012.03)紹介
- 2012年 4月 2日
- 評論・紹介・意見
- オリエントヘーゲル世界史
B5判で754ページというボリュームで刊行された本書は、当代のヘーゲル哲学(研究)者
の看板をなしている執筆陣を擁している。本書は哲学専門書であり、市販本でなく非売品(科学研究費による研究成果報告書)であり広く江湖に行きわたるデータでもなかろうから、せめてここにはしがきの一部と目次の一部を転記しておくとしよう。
ただし、本書を一般読書界に紹介する意義はとても大きい。アーノルド・トインビーに傾倒する者が表現するならば、世界史はアジアから始まってユーロアジアを迂回し、しかるのち再びアジアに向かうからである。先ごろヘーゲル哲学研究者2名と南方熊楠研究者と私とで『「裏日本」文化ルネッサンス』(社会評論社、2011年)を刊行したが、歴史の裏(オリエント)を知らぬものはしばしば表(オクシデント)を裏に反(かえ)して生きることになる。
「ヘーゲルがオリエントをどう見たか、これを、オリエント極東の日本にいる哲学研究者自身が直視し検討することは、本来的な意義がある。オリエントに投げかけられたヘーゲルの理解は、我々自身の哲学的思索に大きな課題となっていることだけは間違いない。我々の現在の生き方は、オリエントの実体性の呪縛から脱しえているかどうか、ということである。・・・我々の研究は、ベルリン期のヘーゲルが「世界史哲学講義」を中心として展開した歴史像のうちその最初の世界である「オリエント世界」の議論構造を検討するもので、このさい、ヘーゲルが用いた資料源泉を究明することを通じてその構造を哲学的に解明することを目的として取り組まれた。また、それとともに、当時の文化接触のなかでの議論状況や影響関係においてヘーゲルが抱いた「オリエント」観を哲学的に評価することもこの研究の目的とした。」(5頁から引用)
もくじ(一部)
「ヘーゲルとオリエント」のあけぼの
1.1822/23年の「世界史の哲学」講義における中国の取り扱いについて(石川伊織)
2.ヘーゲルの「世界史の哲学」におけるオリエント世界とそのインド世界の位置づけ(神山伸弘)
3.ヘーゲルのインド論―理論と実証―(柴田隆行)
4.1822/23年「世界史哲学講義」におけるヘーゲルの仏教理解(久間泰賢)
5.1822/23年世界史哲学講義ペルシア論に於けるユダヤ教評価の転回(早瀬 明)
6.ヘーゲルのイスラーム理解(東長 靖)
7.ヘーゲルのエジプト論―特殊な主体性から普遍者の自覚へ―(権佐武志)
8.ヘーゲルとヘロドトス―哲学と歴史の邂逅―(栗原裕次)
9.ヘーゲルとオリエンタリズム―西洋思想からの一考察―(田中智彦)
10.ヘーゲル「世界哲学講義」と西田幾太郎のインド論―Abstraktionと絶対否定―(板橋勇仁)
ほかに以下のような目次となっている。
II 公開講演会
III 資料A
IV 資料B
V 文献目録
VI 研究会記録
ほかの執筆者は以下のとおり。赤石憲昭、赤松明彦、井川義次、小井沼広嗣、小島優子、酒井智宏、色摩泰匡、滝口清榮、橋本敬司、三重野清顕。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0840 :120402〕
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