大津波対策に「地下シェルター」計画も
- 2012年 4月 12日
- 時代をみる
- 池田龍夫
「南海トラフ地震」について4月6日付本欄で取り上げたが、紀伊半島や四国の自治体・住民に防災対策強化の動きが高まっている。地元の対応ぶりを伝える高知・愛媛・和歌山の県紙を参考に、問題点を探ってみた。
従来の「避難タワー」では危険
毎日新聞6日付高知版は、高知県は太平洋沿岸部の住民を津波から守るため、「地下シェルター」計画の検討会を発足させる方針を決めたと報じた。内閣府の有識者委員会の津波予測によると、同県黒潮町で最大34・3㍍の恐怖。尾崎正直知事は「確実に逃げるためには、これまでの津波避難タワーでは対処できない」として、首相官邸で野田佳彦首相と6日に会って、地下シェルター計画を紹介した。高知県内の想定最大津波高は黒潮町のほか、土佐清水市で31・8㍍、四万十市26・7㍍などで、そんな津波に襲われたら、海抜12~15㍍の避難タワーでは対処できない。30㍍超のタワー建設などは現実的に難しく、高台やビルのない沿岸部では「地下シェルター」が有効と判断。「産学官連携の検討会を発足させ、1年以内には結論を出したい」としている。
紀伊新報も4月10日付朝刊も「巨大地震への対処 官民の力が試される」と題して警鐘を鳴らす。紀南地方の地震は上富田町と北山村が震度6強、ほかはすべて震度7と予測された。紀南地域の沿岸自治体の津波高は、最大18・3㍍。2003年の中央防災会議の想定では、どこも10㍍を超えなかったが、新しい想定ではすべて10㍍を超えた。
「田辺市は2008年、文里地区の標高2㍍余りの土地に高さ8㍍近くの津波避難タワーを建設した。従来の想定では市内の最大波高は約6㍍だったから、これで対処できるはずだった。だが、新想定で示された12㍍の津波には及ばない。避難タワーは、安全基準が崩れたほんの1例で、今まで整備してきた一時避難所や避難路の見直しも必要だ。和歌山県は今月中に安全度が最も高い避難所から見直しに入る。安全な高台を緊急避難先に指定し、避難路整備の補助金の交付先も5月中に決定する」と述べ、県独自の検証作業を要請していた。
実効ある「防災対策」に取り組め
愛媛新聞4月6日付社説は、「自治体財政が厳しい中、巨額の予算を防災事業に注ぎ込むのは現実的ではない。地域ごとに被害を予想し事業実施に優先順位をつけるなど、選択と集中を徹底したい。ことに宇和海沿岸は、想定津波への物理的対策の難しさに直面している。今後は『いかに逃げるか』の検討に重点を移さねばなるまい。新しい避難経路と避難所の設置、津波の規模、到達時間を速やかに伝える手段などを充実させることで、被害の軽減は可能になるはずだ。検討会は今後、詳細な地形に基づいた津波の高さや浸水域などを予想し、中央防災会議が6月をめどに犠牲者数などを算出。秋に経済被害などを公表するという。そのシナリオに合わせ、地域に応じた減災計画の立案が必要だ。地震の発生は明日かもしれない。100年後かもしれない。しかし必ず来る。今回の数値は衝撃的だが、いたずらに神経質になる必要はない。恐れず侮らず、綿密な対策と冷静な行動を心がけたい」との指摘しており、地震列島・日本の防災対策見直しを急がねばならない。
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