本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(21)
- 2012年 4月 17日
- 評論・紹介・意見
- 文明法則史学本間宗究金融
政事を以て民を殺す
明治維新の際、「勝海舟」が、頻繁に引用した言葉として「政事を以て民を殺す」というものがあるが、現在の政治情勢を見ていると、「まさに、この言葉のとおりである」と実感せざるを得ないようである。つまり、「何も決まらない政治」のことであり、また、「震災からの復興を後回しにして、消費税の議論だけに集中している状態」のことである。そして、このような状況が、今後も継続すると、「国破れて山河あり」の言葉のように、「国民が疲弊して、国債や官僚だけが残る」というような状況も考えられるようだが、「勝海舟」の言葉には、その前後が存在するのである。
つまり、「日本の四殺」のことだが、最初の二つは、「嗜慾(しよく)を以て身を殺し、貨財を以て身を殺す」というものである。具体的には、「過剰な欲望は、身体の健康に良くなく、また、有り余るほどの資産は、心身の状態を不安定にする」というものである。そして、このことは、「戦後の日本」を振り返ってみると、「日本人全体に当てはまる」とも言えるようだが、それは、「史上最大の高度成長」に続く「マネーの大膨張」のことである。
そして、この点が理解できると、「現在の世界的な金融混乱が、なぜ、起きたのか?」ということや、「なぜ、現在、消費税の増税議論が起きているのか?」という理由も見えてくるものと考えている。つまり、「マネー経済の大膨張は、必然的に、国家財政の悪化をもたらす」という歴史的な真実のことだが、この時に起きることは、常に、「権力の暴走」であり、結果としては、「国家の借金が大膨張し、最後には、コントロール不能な状態に陥る」ということである。
また、「日本の四殺」の最後に来るのが、「学術を以て天下を殺す」というものだが、具体的には、「現在の経済学が、ほとんど機能しなくなり、結果として、金融システムや通貨制度の崩壊をもたらす」ということだと考えている。つまり、「マネー理論の欠如により、現在の通貨制度に関する理解が不足している」という状況のことだが、このような結果として、「デリバティブの大膨張」が起き、現在では、「世界的な金融大動乱に繋がっている」とも言えるのである。
そして、間もなく、本当の意味での「金融大混乱」が起き、「通貨の価値が激減する」という状況が訪れるものと考えているが、幸いなことは、「明治維新は、その後の発展に繋がった」というように、「古い時代の終わりは、新たな時代の始まりを意味している」ということであり、今回も、同様の歴史が繰り返されるものと考えている。(4月6日)
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奢れる者は久しからず
現在、放映中の大河ドラマである「平清盛」を見ていると、いろいろな事を考えさせられるが、その一つが「奢れる者は久しからず」ということである。そして、この前提としては、「平清盛が、僅か一代で大きな権力や財力を得た」という点が指摘できるのだが、この理由としては、「中国の宋との貿易」が挙げられるのである。つまり、今からちょうど800年前の時代が、このドラマを見ることにより、はっきりと浮かび上がってくるのだが、当時は、現在とは正反対の「東洋全盛の時代」であり、特に、「中国の宋」が、経済的に大繁栄した時代だったのである。
そして、このような経済力を基盤にして、「平家の繁栄」が繰り広げられたのだが、たいへん興味深い点は、このような経済力の発展が、結局は、平安貴族政治の終焉に繋がったということである。つまり、「平安時代の終焉」と「鎌倉幕府の成立」のきっかけとなったのが、「平家の盛衰」であり、その後は、「武士が支配する時代」へと、大きな転換を遂げたということである。しかも、「平家の繁栄」は「僅か数十年」という期間にすぎず、また、「驕る平家に二代無し」という言葉のとおりに、「あっという間の繁栄と没落を経験した」という状況だったのである。
また、このことを「文明法則史学」で考えると、不思議な共通点が浮かび上がってくるのだが、それは、「平清盛が、日本で行ったこと」が、その800年後に、「アメリカが、世界で行ったこと」を髣髴(ほうふつ)とさせるからである。つまり、「第二次世界大戦後のアメリカによる物質的な繁栄」と「平家の繁栄」とが似たような状況であり、その後の「没落と混乱の過程」が、「1980年から現在までの情勢」と、よく似通っている可能性が高いのである。
つまり、「800年前の宋の没落」と「現在のアメリカの没落」とに、大きな共通点があり、その縮図となっているのが、「平家の盛衰と平安貴族の没落」ということである。そして、「武家と貴族との間での最終決戦」となったのが、「1221年に起きた承久の変」でもあったのだが、実際には、その数年前に、大勢は決していたようである。別の言葉では、この時の変化を深く研究することにより、今回の「世界的な金融大混乱」に関して、「これから、どのような変化をし、今後は、どのような時代になるのか?」が、ある程度見えてくるものと思われるのである。そして、基本的には、「実体経済の成長」が、その後、「マネーの大膨張」を促進し、その時に、「権力」と「財力」を握った人々が、奢り高ぶることにより、「既存の世の中を破壊する力」が発生するという構図になるようである。(4月7日)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0863 :120417〕
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