大飯現地テントは撤収したが、次の準備は進められている
- 2012年 5月 10日
- 交流の広場
- 9条改憲阻止の会
2012年5月10日 連帯・共同ニュース第254号
■ これは大飯現地からの報告であるが、それにあたってまず、政府の再稼働の動きから確認をしたい。昨年2011年12月16日、突如フクシマ原発過酷事故の収束宣言が野田首相から出されたが、ここから再稼働工作が本格的に開始されたとみるべきである、と思う。憶測をはらむが、事態をわかりやすくするために区切って考えてみる。それまでの無策から一転した陰謀的ともいえる策動が水面下で行われる。フクシマ原発シビアアクシデントの忘却策動である。12年3月11日、福島での県民集会をめぐる陰謀だ。「安心できる復興を」をメインスローガンとしようという策動だ。集会スローガンから反・脱原発を消し去り「復興」に向けての大キャンペーンを行なおうとした。3月11日、郡山集会で大江健三郎さんが、集会冒頭、「この集会は非常に困難な情況をうち破って勝ち取られています」といみじくも述べたように、反動の波が押し寄せていた。これに対して「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の女性たちを先頭にねばり強いたたかいで、集会は反原発のたたかいとして勝ち取られ、加藤登紀子さんほか福島の人々の反原発の声が会場を圧倒し、敵の策動は木っ端みじんに粉砕された。だから、県知事も郡山市長も出席しなかった。しかし、この間、2月には平行して再稼働に向けて、ストレステスト「妥当」工作が経産省、保安院によって続けられた。これらは再稼働に向かっての政府と電力会社の出来レースである。シナリオ書いたのは、仙石政調会長代行といわれている。そして、3、4月は野田政権の「再稼働ありき」のシナリオ、出来レースとの連続したたたかいとなる。枝野発言に翻弄されつつも、確固とした再稼働反対のたたかいが性根を張る過程であった。
■ たたかいを牽引した3つの行動がある。一つは、政府4閣僚会議の「再稼働は政治判断」に対して、首相官邸前で連日1000名をこえる直接行動が執拗にたたかわれた。ツイッターで集まった人々の行動力が遺憾なく発揮された。さらに経産省前テントひろばのハンスト宣言。これまでの半年を越えるオキュパイテントのたたかいに依拠しながら、大きなインパクトを与えた。そこでは福島の女性たちの切実な思いが全国的な影響力を創り出し、諸人士のたたかいを生み出した。二つは、地方自治体への直接行動だ。4月9日夜、突如、設営された大飯原発現地の原発道路沿いのオキュパイテントを皮切りに、14日福井県庁への枝野説明に対する大衆的な抗議闘争。滋賀県庁、京都府庁への経産省の説明に対する連続的たたかい。関電本店、京都支店への直接包囲行動が幾度もたたかわれた。そして4月26日、おおい町住民説明会への原発「疑問、不安」派住民への激励・支援行動がたたかわれた。住民説明会では、不安と疑問、今までは言えなかった反対の声すら出た。柳沢副大臣は「意見は反対の方が出る」とし、「理解は進んだ」と苦しいいいわけをした。時岡忍町長は集会警備費に2600万円をかけて説明会を仕切り、「目的は達成された」と開き直った。これに対して、5月1、2日、時岡町長弾劾の声が町役場前であがったのである。5月1日には6人の地元の住民も参加した。5月1日、小浜でひらかれた住民説明会は、多くの反対の声で原子力安全・保安院はたじたじとなった。「全関西が地元だ」というたたかいが展開された。三つは、1000万人署名運動をはじめとする全国の地道なたたかいが基礎に座っていることである。自分自身ができることにこだわりながら、脱原発を目標に、様々な運動と連帯しようとしている人たちのたたかいだ。20年前、30年前と同じように反原発運動が衰退していくのか、それとも新たな持続的運動と圧倒的高揚を創り出すことができるのか、運動全体の展開とそれぞれ個別の問題が突きつけられているといえよう。この狭い日本に54基もの商用原発が作られたことをかみしめよう。懺悔ではなく、事実に対する反省を、と思う。
■ たたかいはこれからだ。このようなたたかいでひとまず再稼働は阻止され、原発ゼロ化は勝ち取られた。しかし、福島では「避難も、補償も、なにもなされてはいない」このことを絶対忘れるな、である。再稼働を巡るたたかいは、第二ラウンドに入ったといえるのか。ゼロ化はひとまず勝ち取った橋頭堡だ。率直に受け止めよう。だが、たたかいはこれからだ。7、8月に向かって、「電力不足、計画停電と電気料金の値上げキャンペーン」とのたたかいが始まっている。経済と命の問題だが、実は簡単ではない。確信はフクシマを忘却させる敵の攻撃と真っ向からたたかうことである。大衆的な直接行動を徹底的にたたかうことである。運動の基礎としての率直な怒りを行動に転化させることである。この積み重ねの中から運動の論理と指針がわき出てくることに確信をもとう。長いたたかいになるが、「絶対負けない。なぜなら勝つまでやめないから」(日本航空CCU・内田妙子さん)の心意気でたたかおう。<経産省前テントひろば>と連帯してたたかいたい。4月9日から始まった大飯現地のテントは延べ9張り、現在7張りで、一旦、5月6日で完全撤収する。しかし、次の準備は進められている。 (文責 吉岡史朗)
■ 大飯原発3・4号機を対象にした再稼働をさしあたり阻止された。この間の経緯は省くにしても今後に受け継がれるべきは予想以上の動きが出てきた点である。大飯原発の隣接県といわれた、滋賀・京都・大阪などの自治体や首長の再稼働に反対する声と活動が強くでてきたことである。これは従来の地元と言う概念の変更を迫る勢いである。それと現地と言われた地域住民の反応であって、声も上げられないと言われてきた地域住民が声を出しはじめたことである。これらの背後にあるのは国民、あるいは地域住民の原発事故に対する危機感と原発存続に対する疑念である。福島第一原発事故が国民や地域住民に与えた衝撃の深さである。経産省や原子力ムラという原発推進の本丸だけでなく、推進してきた政治家や政党の予想を超えたものだ。彼らは以前の反原発運動の結果や既得権益として現ある原発の存在から、反対運動や声を抑え込めるとふんでいた。彼らは事故の与えた衝動を測りえていない。この意味で彼らの再稼働→原発存続というシナリオは再検討を促されると思う。権力野川の出方はまだ分からない。ただ、僕らの脱原発運動の方向の中で地域住民の登場と言う展望が見えてきた。ここはしっかりふまえたい。 (文責 三上治)
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。