大飯原発再稼動、検証委もグラツク?
- 2012年 5月 13日
- 時代をみる
- 池田龍夫
関電の電力不足解消に〝助け舟〟
今月6日に原発50基がストップしたため、電力需給見通しが危ぶまれている。果たして「原発ゼロ」で今夏のピーク時を乗り切れるだろうか。内閣府の「需給検証委員会」(委員長・石田勝之内閣府副大臣)は5月10日の第5回会合で、需給予測の最終報告案を論議した。委員会はこれまで原発ゼロを前提に議論してきたが、前回の会合で大飯原発再稼動の数値を明らかにして欲しいとの提案があり、この日の会合で事務局から「大飯3、4号機(福井県おおい町)を再稼動した場合、電力不足はほぼ解消できる」との試算が提出された。事務局の説明では、同原発2基の出力は236万㌔㍗で、夜間に汲み上げた水を利用する揚水発電量も増加、関西電力では計446万㌔㍗の供給力増が見込まれるという。
要するに、原発再稼動に踏み切れば電力不足は解消できるとの言い分である。藤村修官房長官は「今回の試算が政府の再稼動判断とは結びつかない。地元の判断に関係してくる可能性がある」と記者団に慎重に答えていたが、検証委が「再稼動」を暗に〝後押し〟している印象を受ける。いずれにせよ、12日の次回会合で最終報告書をまとめる予定だが、政府は果たして明快な方針を示せるだろうか。
「再稼働、国の覚悟が見えない」おおい町長苦言
一方、大飯原発再稼働問題をめぐって福井県内の論議が日ごとに高まっている。おおい町の時岡忍町長は5月9日、報道陣に対し「国の覚悟が見えてこない。再稼働の是非を慎重に判断したい」と述べ、国が原発の安全性とエネルギー政策を明確に示さない限り、再稼働を容認しないとの考えを示した。時岡町長はこれまで再稼働に前向きな発言を繰り返してきたが、電力消費地の関西圏で理解が進まない状況を受け、国に一層の対応を促したとみられる。
福井県議会でも厳しい政府批判
福井県議会も9日、全員協議会を開き、国の原子力安全・保安院や資源エネルギー庁などから説明を聞いた。政府が決めた新たな安全基準を基に大飯原発の安全性を確認したことや、この夏の電力需給が厳しいことの説明を受けたあと活発に質疑。議員からは「政府の対応はこれまでブレ続けてきた。技術的な信用というより、政府そのものに信用がない」「枝野大臣は『個人的には運転再開に反対だ』としながらも、再開への理解を要請しに来た。『反対だといっての要請』では福井県の安心は得られない」など、これまでの政府の対応を批判する意見が相次いだ。また、「住民の避難など事故が起きた際の防災対策が不十分ななかでの『運転再開』はおかしい」といった再開に慎重な意見も出たという。
県議会は今後、県の専門家会議による安全性の検証結果や、おおい町の判断を踏まえたうえで、会派ごとに意見を集約し、西川知事に意向を伝えるが、知事自身も京都、滋賀、大阪首長らからの厳しい安全基準の要請もあって対応に苦慮している。
9日付「ウオッチ」でも指摘したが、原子力行政を監督する第三者機関「原子力規制庁」を早急に発足させ、ゼロベースで見直すべきである。姑息な手段で決着を急げば急ぐほど、政治不信は高まる一方である。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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