「大飯原発」など原発立地の断層、再点検を急げ
- 2012年 7月 3日
- 時代をみる
- 池田龍夫
全国で「大飯原発再稼動反対」デモが吹き荒れる中、福井県おおい町の原発3号機は7月1日午後9時、1年3カ月ぶりに起動。4日から発電開始、8日フル稼働に移るという。野田佳彦政権が強引に再稼動に踏み切ったものの、安全性を危惧する声は高まっている。政府は4号機、さらに伊方、柏崎刈羽原発再稼動も目論んでおり、「脱原発」とは逆の政策に後退してしまった姿勢は、憂慮に堪えない。
保安院が専門家会合を開いて点検へ
再稼動をめぐって世論が真っ二つに割れている局面で、断層論議がまたまた浮上してきた。毎日新聞は29日付夕刊1面で「経済産業省原子力安全・保安院が6月29日、全国の原発の敷地内にある断層の活動性について、国による安全審査の議論を専門家に再点検してもらう方針を固めた」と特報した。保安院が7月3日開く会合で専門家から意見聴取を始めるという。
福島原発事故後、断層が近接する活断層と連動して動くと指摘する声が高まっていたが、政府は十分な対策を打ち出さないまま時間を空費してきた。若狭湾の断層には大飯原発も立地しており、不安感が増幅している。
保安院専門部会では先ず、関西電力美浜・高浜(福井県)、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(同)について、これまでの安全審査の資料や議事録を点検し、現地での再調査が必要かを検討。このほか日本原子力発電敦賀(同)と東北電力東通(青森県)、さらに大飯原発についても議論するという。
変動地形学者らが危険を警告
大飯原発敷地内を走る軟弱な断層(破砕帯)が近くの活断層と連動して動き、地表がずれる可能性があるとの分析結果を、渡辺満久東洋大教授(変動地形学)と鈴木康弘名古屋大教授(同)が6月6日に発表、「原子炉直下を通る破砕帯もあり、早急に現地調査すべきだ」と警告していた。渡辺教授らが指摘したのは「F―6断層」と呼ばれる破砕帯。1985年に関電が国に提出した大飯3、4号機の増設申請書によると、F―6断層は1、2号機と3、4号機の間の地下をほぼ南北に走っているというから、危険きわまりない。原子炉直下の破砕帯が動いて地表がずれると、安全上重要な設備を損傷させる恐れがあるため、原発の立地場所として不適格となる可能性もあるのだ。
枝野幸男経済産業相6月29日の記者会見で「既に活断層ではないと判断しているが、専門家会合で新たな知見があるか不断の検討はしていく」と述べ「新たな知見が判明すれば再稼働に影響するが、そうでないというのが現時点での認識だ」と強調した。
大飯原発再稼動にブレーキをかけるような難題だが、原発災害を未然に防止するため、原発立地県の断層調査を徹底的に進めてもらいたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1987:120703〕
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