ハシズム批判(2) とんでもない条例が大阪市議会で可決された
- 2012年 7月 31日
- 評論・紹介・意見
- ハシズム青木茂雄
大飯原発再稼働問題で世情は揺れている。チェルノブイリ事故がソビエト政権崩壊に連なったのと同様の事態が日本でも生じるのだろうか?
原発と消費税増税で世情が揺れている間に、メディアではあまり注目されていないが、橋下市政下の大阪市の議会でとんでもない条例が「審議」され、7月27日、市議会本会議で可決された。
その一つが、「大阪市の職員の政治的行為の制限に関する条例」である。どれだけとんでもないかは、以下に紹介する条例案を読めば一目で了解できる。
大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例(案)」
第1条(趣旨)
この条例は、地方公務員法の政治的行為の制限に関し必要な事項を定めるものとする。
第2条(条例で定める政治的行為)
(1)職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。
(2)賦課金、寄付金、会費又はその他の金品を国家公務員又は本市の公務員に与え支払うこと。
(3)政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し編集し又はこれらの行為を支援すること。
(4)多数の人の行進その他の示威行動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること。
(5)集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
(6)政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図書、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、若しくは多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、又はこれらの用に供するために著作し、若しくは編集すること。
(7)政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること。
(8)政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること。
(9)勤務時間中において前号に掲げるものを着用しまたは表示。
(10)何らかの名義又は形式をもってするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること。
第3条(本市の区域外から行う政治的行為)
職員が法36条第2項第1~3号及び前条各号に掲げる政治的行為を、電話をかけ、又はファクシミリ装置を用いて送信する方法その他の方法により、本市の区域外から本市の区域内にあてて行った場合は、当該政治的行為は本市の区域内において行われたとみなす。
第4条(懲戒処分)
任命権者が法36条1~3項の規定に違反して政治的行為を行った場合には、「地方公務員の政治的行為に関する質問趣意書」に対する内閣の答弁の趣旨を踏まえ、当該職員に対し原則として懲戒処分として免職の処分をする等の必要な措置を公正かつ厳格に行うものとする。
第5条(施行細目)
条例の施行に関し必要な事項は任命権者が定める。
4条の「懲戒処分」については、大阪維新の会と公明党との協議の結果、「原則として懲戒処分として免職の処分」の部分を「戒告、減給、停職、免職」としたことで両党が合意した。市議会では維新・公明に加えて自民党も賛成に回った。
「政治的行為」の内容については一切が原案のままである。大阪維新の会は言わずもがな、このような内容で修正に応じた大阪市議会公明党の公党としての存在意義が問われよう。憲法は言わずもがな、法律と条例の違いもわきまえず、数で押せば何でもできると錯覚していたのでは、児戯の域を越えて末恐ろしいものを感じる。
この条例の逐条批判と、今後の情勢分析は次回以降に詳述するが、このような条例を平然と通してしまう政治勢力が国政の中心を担うことがあったならば、この日本は間違いなく暗黒政治に突入することだけは断言できる。
続いて、「大阪市労使関係に関する条例(案)」である。こちらも不当労働行為のオンパレードである。憲法に保障する団結権の侵害にあたることは言うをまたない。要点だけを述べると。
① 「管理運営事項」に関わると当局が考える事項については、一切、交渉、協議・意見交換をしない、行ってはならない。
② 交渉は、全てマスコミ等に公開して行う。
③ 任命権者は、地公法及びこの条例に規定する活動について「抑制するための措置を講ずるよう求めることができる。」
④ 人事委員会は、組合が「登録要件に適しているかどうかを確認する。」そのために「収支報告書その他の必要書類の提出を求めることができる。「登録の要件に適していないと認めるときは」「登録を取り消すことができる」。
⑤ 労組の組合活動に関する便宜の供与は行わない。
大阪の公務員労働者に対する全国からの支援が必須である。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion947:120731〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。