南ドイツ新聞:脱原発は予想されたよりも格安―ドイツ人は電力料金を払い過ぎ
- 2012年 8月 28日
- 評論・紹介・意見
- グローガー理恵ドイツ再生可能エネルギー脱原発
現在、ドイツで推進されている再生可能エネルギー促進のシステムは、決して完璧なものではありません。
固定価格買取り制度などを含めて、再生可能エネルギー促進するためのコストは、電力消費者が負担することになっています。しかし実際には、こういった再生可能エネルギー促進コストが、全電力消費者の間で公平にシェアーされてない事が明らかになりました。
例えば、8月26日付の「tagesschau.de」に掲載されていました「グリーン電力の分担金は違憲だろうか?」というオンライン記事です。:
http://www.tagesschau.de/wirtschaft/eeg-kritik100.html
「繊維工業が、再生可能エネルギー法に制定された分担金は違憲であると、地方裁判所に訴えた。繊維工業のような中小企業にとって、分担金を含め高いエネルギーコストは、大変な重荷となってきているからである。」と、記事には報道されています。 一方では、多くのドイツの大企業が、こういった分担金負担を軽減・免除される特権を、連邦政府から与えられているのです。要するに、高い再生可能エネルギー促進コストは、一般消費者と中小企業で負担されているというのがドイツの現状です。
ご紹介させて戴きます南ドイツ新聞の「脱原発は予想されたよりも格安-ドイツ人は電力料金を払い過ぎ」と題された記事にも、大企業が政府から与えられた「送電網料金支払い免除の特権」について述べられています。また、記事は、「電力会社が買い入れる電力価格が安くなったにも拘らず、その事が消費者側の電力料金には反映されていないこと。 一般消費者が2008年以来、20%も上昇した電力料金を支払わされている事実」をリポートしています。
日本でも、再生可能エネルギーを促進すべく「固定価格買取り制度」が一応は制定されたようですが、政府が果たして、大企業などに再生可能エネルギー促進コストの負担免除などの特典を与えているのかどうか、日本市民にとっても知る必要のある重要な事柄なのではないでしょうか。
下が原文へのリンクです。:
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概説:脱原発は予想されたよりも格安―ドイツ人は電力料金を払い過ぎ
南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)オンライン記事-2012年8月24日付
エネルギーコンツェルン/電力会社は、より低下した電力価格を消費者へ廻そうとはしない。:
「今年、ドイツの電力会社の顧客である電力消費者は、総額30億ユーロまでの電力料金を過剰に支払わされていた。」と、ある調査が指摘している。「その一方では、大企業が負担すべき電力料金は軽減されていた。」と、クリティックはコメントしている。そして今秋、また電力料金が値上がりすることになると謂う。
脱原発コストは、電力会社にとって予想されたほど高くつかなかった。しかし、この効果が電力消費者に及ぶことはなかった。:ある調査結果によると、「今年、電力会社は、ドイツの消費者から30億ユーロまでの過剰の電力料金を受け取っていた」と謂う。これは、ドイツ連邦議会・緑の党のコンサルタントであるエネルギー専門家、グンナル・ハルムス(Gunnar Harms)氏の分析から判明されことである。
ハルムス氏によれば、2011年には電力買い入れ価格が、10%から20%までの割で低下したと謂う。「脱原発は、恐れられていたような価格の上昇を導かなかった。」と調査には述べられてある。もし、このような価格低下の効果が、電力供給の末端にいる消費者まで、そのままきちんと廻されていったのだとしたら- 電力料金は、毎キロワット時あたり約2セントの割りで、引き下げられるべきだったと謂う。
しかしながら、プライベート世帯用の電力料金が近いうちに下がるというような事は、恐らくなさそうだ。むしろその逆に、ペーター・アルトマイヤー(Peter Altmeier)連邦環境大臣は、この秋には電力料金が5%値上がりするであろうと予測しているのである。「この価格(5%の値上がり)は電力会社が確定したことである」と、環境大臣はライニシェ・ポスト(Reinische Post)新聞で述べている。
これは、ソーラーエネルギーが余りにも速く拡張された結果であると謂う。そのため、アルトマイヤー環境大臣(CDU党)は高くつくソーラーエネルギー促進を、これまで計画していたよりも早く終らせたい。「ソーラー電力促進は、目標の最大出力容量である52ギガワットに達したら、全て終了されることになるであろう。目標の52ギガワット最大出力容量に達するのは、2020年と計画されているが、もし2020年よりも早く目標が達せられた場合には、予定より早く、ソーラーエネルギー促進が打ち切られることになる。」と、環境大臣は述べる。
一般消費者は産業のために支払っている。
エネルギー専門家であるハルムス氏は、「過去5年の間に、電力の買い入れ価格が上昇すると、いつも即座に、それが取り次がれていったのだが、反対に価格が低下した場合には、そういった事はなかった。少なくとも、(買い入れ価格引下げの影響が)一般世帯消費者の部分までには廻ってこなかったという事が明らかになっている。」と批判する。2008年以来、一般プライベート世帯は20%上昇した電力料金を支払ってこなければならなかったのだが、一方では、近年における産業用電力料金は、3%値下げされているのである。
緑の党はずっと前から、「送電網料金や再生可能エネルギー促進費用負担に関して、エネルギー集約型産業における特別除外ケースが余りにも多くありすぎるため、その分、一般消費者がそれを補うため、相当な金額の追加費用を肩に担わなければならなくなってしまった。」と、批判している。年間3500キロワット時の電力を消費する一世帯がグリーン(再生可能)電力のために支払う金額は年に125ユーロであるが、その内の31ユーロは、産業の料金負担軽減/免除が生じたコストを埋め合わせするために使われているのである。
連邦政府は、特にエネルギーを大量消費する企業に対して、送電網料金の支払い負担免除を与えている。送電網料金は、消費者が送電網を利用するために支払わなければならない料金である。- 送電網料金は総電力料金の約1/5を占めている。- 送電網料金支払い免除を受けた企業特権者たちが負担すべきだった金額は、一般消費者と中小企業によって分担され清算されているのである。
連邦議会・緑の党議員団の副リーダーであるバェーベル・ホゥーン(Bärbel Höhn)女史は、ザァールブリュッカー新聞(Saarbrücker Zeitung)とのインタヴューで、「間断ない電力料金の上昇は、結局は連邦政府の責任である。政府は、企業の料金負担を全般にわたって軽減/免除することによって、エネルギー転換のコストを消費者に押しつけていっている。」と語っている。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion968:120828〕
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