規制庁準備室との会合報告
- 2012年 9月 7日
- 評論・紹介・意見
- 原子力原発満田夏花
先方:森本英香・原子力安全規制組織等改革準備室長
黒木慶英・同副室長
小沼信之・同室員
当方:服部良一・衆議院議員、 宇佐美秘書
阪上武、長谷川克己、森園和重、高木章次、七戸わこ、小川幸子、氏家雅仁、
杉原浩司、小島俊郎、木村雅英、佐藤幸子、佐藤茂伸、満田夏花
冒頭、服部良一議員より挨拶。
阪上さんより:3度にわたって政府交渉を申し入れてきたのに、拒否されたこと
は遺憾。保安院ですら交渉には応じてきた。国会議員に対する説明だけでなく、
市民に対する説明を果たしていない。やっと実現した今回の会合も、少人数で、
メディアの取材を入れないなど、問題が多い。
その後、事前に提出した質問書に沿ってやりとりを行いました。
1.原子力規制委員会設置法および政府ガイドラインとの関係について
<先方の説明>
・日本原子力研究開発機構(以下JAEA)は、原子力規制委員会設置法7条7項3
号で欠格とされている「原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄の
事業を行う者、原子炉を設置する者」に該当する。
・JAEAは、原子炉規制法でいう「原子力事業者」である。
・しかし、JAEAは、7月3日付け政府ガイドライン(平成24年7月3日付内閣
官房原子力安全規制組織等改革準備室「原子力規制委員会委員長及び委員の要件
について」、以下政府ガイドライン)「要件」(※)にある「原子力事業者等」
に該当しない。
※政府ガイドラインでは、法律上の欠格要件に加えて、「就任前直近3年間に、
原子力事業者等及びその団体の役員、従業員等であった者」を欠格要件としてい
る。
・7月3日付け政府ガイドラインでいう「原子力事業者」は法律でいう「原子力
事業者」とは異なる。電力事業者、その子会社、原子力関連メーカー、その子会
社を言う。
・「原子力事業者」という用語を使いながら、法律と違う定義にしたことで混乱
を招いたことは申し訳ない。
・JAEAは原子力規制委員会設置法7条7項3号に該当するが、委員就任時にやめ
ていれば法律上差し支えはない。これは、他の法律でもよくある話。
・第11条第3項の規定は、また別物。やめていても金銭上の利益をうることはあ
るので、これを禁止するものである。
・政府ガイドラインの「原子力事業者」を、法律と同義にしてしまえば、東大や
京大の研究者も採用できなくなってしまう。
<当方>
・設置法の提案議員たちは、何度も、過去にさかのぼって原子力事業者の関係者
でないことを要件とすると説明してきており、これが立法者の意思であるし、設
置法の趣旨。
(参院環境委員会6月18日、水野議員の質問に対する生方幸夫議員の答弁、6月19
日、水野議員の質問に対する近藤昭一議員の答弁を読み上げ)
・政府ガイドラインは法律を補完するためのもの。法律と異なる定義を用い、そ
れを狭めるのはおかしい。後付で、現在の人事案を通すために、定義をかえたと
しか思えない。
・法律やガイドラインの適用は、委員の資質云々以前の問題。
・政府ガイドラインを策定したときに「原子力事業者」をそのように狭く定義す
ることは、近藤議員などに説明し、先方は納得しているのか? →(先方)説明
していない。
II. 現在の候補者の資質について
阪上さんより、田中俊一氏の事故後の言動に照らし、規制委員会委員長としては
問題があることを指摘。
・除染の限界を認めず、さらなる除染が必要だと繰り返し述べている。
・原子力損害賠償紛争審査会では、自主的避難者への賠償に反対し続けた。
・帰還基準を避難基準と同じ年間20ミリシーベルトとした。これを下回れば、1
ヶ月程度で賠償を打ち切り、帰還を促すよう主張。
・2011年8月23日第32回原子力委員会で「100mSvというのは健康に大きな影響が
ないということ。このあたりをどう今後住民に、折り合いをつけていただくかと
いうことが大変大事」と述べている。
・低線量被ばくのリスクをきちんと認識している人を委員とするべき。
長谷川さん、森園さん、佐藤幸子さんから、下記の発言。
・田中俊一氏の起用は、避難を強いられた福島の親たちの気持ちに真っ向から反
するもの。受け入れがたい。
・みんな、除染など信じていない。田中俊一氏は、除染の幻想をふりまいた人。
・子どもでもわかるように説明してほしい。法律を捻じ曲げてまで、人事案を通
そうとするのは、なぜか。
<先方>
・田中俊一氏は経験も豊富であり、JCOの事故後の処理なども経験しており、適
任。
・田中俊一氏が、除染に一生懸命になったからといってそれを批判することはど
うか。
・田中俊一氏は、20ミリでよいといっているわけではない。まずは20mSvとし、
そのあと、1mSvをめざすと言っている。⇒当方、田中氏の原子力委員会での発言
を読み上げ反論。
・自主的避難の賠償についても、反対したわけではなく、賠償だけでは不適切と
言っている。
⇒当方:参加者の多くが、原子力損害賠償紛争審査会を傍聴していた。田中氏は、
避難の合理性を認めず、自主的避難の傍聴に反対し続けたことは、私たち自身が
きいてきたこと。
<当方>
・田中俊一氏の秘密会合への出席については調査したのか?
<先方>
・秘密会合というより、打ち合わせだったときいている。原子力大綱策定よりあと。
<服部議員>
・その答弁は、自分の質問に対するお答えだったが、納得していない。
<当方>
・原子力委員会は、ずっと秘密会合を重ねてきた。田中俊一氏がまったくそれに
参加してこなかったとは思えない。調査をすべき。
III.野田総理による任命について
<当方>
・設置法の附則第二条第5項でいう「国会の閉会又は衆議院の解散のために両議
院の同意を得ることができない」こととは異なる状況であると考える
・現在のように、人事案が議運にかかっているのにも関わらず、本会議にかけら
れていないのは、議運における野党側の質問および要請に政府側が十分な回答をし
ていないこと、および与党・民主党からも現在の人事案に対する懸念や反対があ
がっていることによる。
・9月1日付日経新聞で、「法律上は、原発事故に伴う原子力緊急事態宣言が出て
いる現状が続くなら、国会の同意がなくても人事の撤回は迫られない」と報道さ
れているが、これは事実か。事実とすれば、その法的根拠は何か。
<先方>
・準備室としては、国会で同意してもらいたいと思っている。
・9月1日付日経新聞の原子力緊急事態宣言に関する記事は、設置法附則第2条第
6項に基づくもの。
・ただしこの場合は、両院への通知が必要。また、国会による事後の承認が必要
である。
・国会はあと3日。(首相任命もいかんというのであれば)いったいどうしたら
よいのか。
<当方>
私たちとしてはあくまで、現在の人事案を撤回してもらいたいと思い、1か月も
前から問題提起してきた。
最後に、森本室長から、「みなさんの意見は真摯に受け止める。しかし、現在の
福島原発の状況を考えても、早急に規制委員会を発足させることが必要。田中俊
一さんは適任だと考えている」との発言。
<当方>
・かたくなに人事案を差し換えないその姿勢が問題
・規制委員会が遅れるよりも、法律上も問題のある人事案を通すことの方が、よっ
ぽど問題。
・準備室の信頼が失墜する上に、のちのち訴訟リスクをかかえることになる。そ
れでもよいのか。
・準備室は、もっと市民との対話をすべき。改革の対象である保安院にも劣ると
いうのはいかがなものか。
などと発言。
所感:ようやく実現した会合ですが、問題があらためて浮き彫りになりました。
法律論では、先方の説明の苦しさと矛盾が明らかになったと思います。
田中俊一氏の資質については、先方が田中俊一氏が原子力学会で何を言ってきた
のか、原子力損害賠償審査会で何をしたのか、まったくわかっていないという印
象をうけました。こういう批判的観点の評価はまったく気にならないのでしょう
か。
人事案ありき、で、法律や自ら定めたルールも捻じ曲げ、深刻で具体的な批判の
声にいっさい耳をふさいで、国会も通せず、野田首相による強行任命とは、呆れ
て物も言えません。政府は、ただちに現在の人事案を撤回、差し換えすべきです。
(文責:満田夏花)
原発監視はや「骨抜き」 事後同意も不要論 規制委人事 国会素通り
(東京新聞、9月6日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012090602000131.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion983:120907〕
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