熊本訪問記 (1)~ゲスト講義とレンタサイクルで市内巡り~
- 2012年 9月 28日
- 評論・紹介・意見
- 熊本醍醐聡
熊本学園大学でゲスト講義
9月20日、1日ゲスト講義ということで熊本学園大学へ出かけ、「会計と実体経済~レトリック会計学を超えて~」というテーマで講義をした。同大学の会計専門職大学院生向けの講義だったが、同研究科科長の藤田昌也教授はじめ、会計・租税法担当の末永英男教授、工藤栄一郎教授、成宮哲也教授にも聴講していただいた。年来の私の会計研究の中間(?)決算的な話をする機会を得たのはありがたかった。
そのうえ、私の東大時代のゼミ卒業生で熊本でも屈指の税理士法人・公認会計事務所の熊本事務所の所長を務めている吉永賢一郎君、そして吉永君の御父君で同事務所会長の吉永茂氏まで聴講していただき恐縮した。吉永茂氏は熊本学園大学の会計専門職大学院で管理会計分野・監査分野・実践分野の講義を担当されている。
講義用レジメ
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/kumamotogakuen_gest_lecture.pdf
講義用資料
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/kumamotogakuen_gest_lecture.data.pdf
講義のあと、懇親会を準備していただき、熊本学園大学の教授各氏、吉永父子、それとこの日の講義の事を聞きつけて小樽から遠路出かけてくれたゼミOBで小樽商大教員(監査論担当)の坂柳明君も参加して、話がはずんだ。
同大学の会計専門職大学院は九州地区の公認会計士養成の拠点大学をめざしているとのこと。教員各氏の話しぶりからもその意気込みと自負が伝わってきた。教室でも40名ほどの受講者の目線が終始、こちらに集中し、さわやかな緊張感を感じながら講義を進めることができた。
隣に座られた吉永茂氏に伺うと、50名もの職員を雇う今の税理士法人・公認会計士事務所を一代で築きあげられたとのこと。その間、職員を叱責されたことはほとんどなく、離職する職員もほとんどなかったという。
今度は吉永賢一郎君に、どうしてお父さんの仕事を継ぐ気になったのか尋ねると、「おやじが張り合いのある様子で仕事をしているのを小さい頃から見て来たこともあるが、それ以上に、母親が楽しそうにしているのを見て、この仕事はやってみていいかなと感じたんですよ」という返事だった。普通に聞くと優等生の答えだが、そうではない実感――吉永家の和やかな雰囲気が伝わってくる一言だった。
レンタクルで熊本城へ~荘重な宇土櫓を堪能~
翌21日は市内巡りをする予定だったが、ホテルの部屋で見かけた一日レンタサイクルをフロントで申し込む。遅めの朝食を済ませ、自転車の手配をしてもらったフロントの女性に「いってらっしゃい。お気をつけて」と後ろから声をかけられ、さっそうと熊本城めざしてスタート。
広大な城内をくまなく回るゆとりはなかったのでホテルのフロントで勧められた宇土櫓(うどやぐら)を中心に回ることにした。城内の駐輪場に自転車を止めて、二の丸駐車場の東側にあった無料案内ボランティアという看板の部屋に立ち寄り話を聞くと、1人でも1時間制で案内をしてもらえるとのこと。
そこで私と同年輩くらいの男性ボランティアに道案内してもらうことになった。「それなら宇土櫓を案内しますよ。その後は簡単に道順を説明して失礼しますので、ゆっくり回ってください」ということに。
ボランティア氏の案内を聴きながら頬当御門(ほおあてごもん)に近づくと左手に深い空堀に挟まれた宇土櫓がそびえ立つ。本丸の西北隅に位置し、20mの石垣の上に3層5階地下1階、地上約19mに立つ櫓は、天守並みの威容だ。ここが尊ばれるのは西南戦争の戦火にも唯一、耐えた、慶長年間(1596~1614年)の多層櫓だからである。空堀にそびえる分だけ、城壁が高く石垣は美しい。石垣は下の方は緩やかな勾配だが、上へ行くにつれて急角度になり、天端では75度の反りになっている。
宇土櫓は国指定の重要文化財になっているが、中は一般公開されている。一部は耐震補強されているが、それ以外は建築当時のままという。廊下は薄暗く、時々、ひんやりとした風が頬をなでる。いかにも由緒ある古城の城内という雰囲気だ。
ボランティア氏の後について急な階段を上り、最上階へ。広大な城内の眺望を楽しんだあと、階段を下って天守閣前の広場へ出る。そこで、向かって左手にある本丸御殿と天守閣の順路を説明してもらって別れた。分かれる間際に本丸御殿の手前左手に生い茂った銀杏の樹の由来を教えてもらった。
この銀杏の樹は加藤清正が築城を記念して植えたといわれる。西南戦争の時、天守閣や本丸御殿とともに、この樹も焼失したが、幸い、残った根元から脇芽が成長し、このように生い茂ったのである。ちなみに熊本城は別名、「銀杏城」とも呼ばれ、毎年晩秋には黄金色に色づくこの銀杏の樹を観賞するため、多くの人が訪れるという。
その後、本丸御殿に入って、大御台所、大広間、鮮やかな障壁画で彩られた昭君之間などを見て回り、最後に天守閣に上って城内めぐりを終えた。
他にも、二の丸広場の一角にある時習館跡や熊本城から少し離れた横井小南記念館(四時軒)にも出かけたかったが、午後に予定していた熊本近代文学館とその隣の熊本県立図書館へ向かう時刻が気になり、これで熊本城を離れることにした(この稿、続く)。
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1010:120928〕
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