世界を震撼させた北朝鮮ミサイル発射
- 2012年 12月 14日
- 時代をみる
- 池田龍夫
北朝鮮のミサイル発射・人工衛星打ち上げ技術の精度は、あなどれないレベルに達したようだ。日本政府は「北朝鮮は12月12日朝、西海衛星発射場から発射されたミサイルがフィリピン東方300㌔沖に落下した」と発表。北朝鮮メディアは「人工衛星の打ち上げに成功した」と伝えた。北米航空宇宙防衛司令部(NORD)も「人工衛星の軌道に乗ったとみられる」と発表、日韓両国も同趣旨の見解を出した。
安保理が非難決議を出したが…
北朝鮮の発射前日、不具合が見つかり修理中だとの情報に続き延期説まで流れたが、突然の打ち上げ強行は、日米韓をはじめ各国の意表を突くものだった。国連安保理は直ちに「過去の安保理決議に照らして明確な違反」との声明を出した。北朝鮮の情報戦術に各国が騙されてしまったのである。
北朝鮮は今回の発射を人工衛星打ち上げとしているが、報道向け安保理声明は「弾道ミサイル技術を使った発射」と明記。この報道向け声明は、安保理の総意として出されるが、決議や議長声明の下位に位置づけられている。二つとは異なって公式記録に残らず、安保理の意思表示としては最も軽い形式とされている。安保理理事国15カ国のうち9カ国以上が賛成し、常任理事国5カ国が拒否権を行使しない場合に採択できる制度になっていることが、背景にあるようだ。
大陸間弾道ミサイルの恐怖
毎日新聞12月13日付社説が「人工衛星を打ち上げる技術は原理的に、核兵器を搭載する大陸間弾道ミサイル(ICBM)と同種だ。北朝鮮は既にプルトニウム型の核実験を行った。ウラン濃縮も推進中だ。これらを使ったICBM開発が進めば北朝鮮の国際的脅威は飛躍的に拡大する。深刻な事態である。北朝鮮をかばうことの多い中国でさえ、今回の発射について北朝鮮の宇宙利用は『安保理決議などの制限』を受けると明言した」との分析は、的を射ている。
ミサイルの射程は1万㌔に伸びたと推定されている。東は米国ロサンゼルスに、西はヨーロッパ全土が射程内に入るというから怖ろしい。
東京新聞同日付社説は「金正恩第一書記は権威を高め外交でも強硬姿勢で臨むだろうが、国民が飢えているのに『発射費用でトウモロコシ250万㌧が買える』という愚行をいつまで続けるつもりなのか。北朝鮮が平和利用だと主張しても、打ち上げ自体が国連安全保障理事会決議に違反する。4月の発射が失敗したこともあり、中国の主張が通って安保理議長の非難声明でまとまったが、国際社会の制止を無視して強行した以上、金融制裁を含めた強い対応が必要だ」述べていた。
核パワーゲームに陥らせないよう、国際的安全保障の構築を急がなければならない。オバマ米大統領は「核なき世界を」と訴えていたが、その実践こそ平和の道である。
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