本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(35)
- 2012年 12月 21日
- 評論・紹介・意見
- マネー本間宗究金融
2012年を振り返って
「2012年の相場」を振り返ると、結局のところは、「嵐の前の静けさ」の状況でもあったようだ。具体的には、「政治の混迷」が加速することにより、「国民の不安感」が高まったものの、まだ、「本格的な金融混乱が起きていない段階」ということだが、この点については、明治維新の時に、勝海舟が強調した「日本の四殺」の順番で、時代が展開しているようである。
つまり、三番目の「政事を以て、民を殺す」の次に来るのが、最後の「学術を以て、天下を殺す」ということだが、このことは、「高等数学を使うことにより、デリバティブを大膨張させた」ということであり、また、「デフレという言葉が誤解されることにより、結果として、国家債務が返済不能な金額にまで大膨張した」ということである。そして、「2013年」は、世界中の人々が、これらの事実に気付かされるとともに、今までの「ツケ」を払わされることが想定されるのだが、「2012年」は、基本的に、「人々に、危機的な状況を知らせるための年だった」とも言えるようである。
具体的には、「ドラギマジック」と呼ばれる「大量の資金供給」や、「日米の政府による無制限の資金供給」などを見ることにより、多くの人が、「このままで、本当に大丈夫なのか?」という疑問を持ち始めた年でもあったようだ。別の言葉では、「金融危機の本質」が理解され始めたことにより、「民間銀行の連鎖倒産」が引き起こす「大恐慌」の懸念が薄れ、一方で、「国家や通貨への信頼感」が激減することが原因となる「大インフレ」に対する危機意識が、急速に高まっているのである。
つまり、現在、我々が保有している金融資産は、単に「絵に描いた餅」にすぎず、この「お金」で、実際に「実物資産」を買おうとしても、見合うだけの「数量」が存在しないのである。そして、結果としては、「単価の上昇」という、本当の「インフレ」が発生することにより、一挙に、「実体経済」と「マネー経済」との「格差」が縮まることになるようだが、現在のような「1:20」という「違い」は「歴史上からも、稀に見るほどの大きさ」とも言えるようである。
そして、このキッカケとなるのが、「12月16日の選挙」だと考えているが、現在の「政治」については、まったく期待できない状況であり、本当の維新が起きるためには、「国民の一人ひとりが、他人のために行動する」という「本当の働き(傍の人を楽にする)」が必要とされているようである。(2012.12.7)
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干支から見る2013年
「2013年」は「癸巳(みずのと み)」という暦になるが、「癸」が意味することは「田畑が枯れて、畦道がはっきりと見える」ということであり、また、「巳」は「今まで地中に潜っていたものが、表に顔を出す」ということを表している。そして、二つを合わせて考えると、「現在の金融混乱の本質が、世界中の人々の目に明らかになる」ということであり、かつ、「今まで隠されていた本当のインフレが、誰の目にも見えてくる」という状況が想定されるようである。
つまり、現在の「最大矛盾」とも言える、「実体経済」に対して「マネー経済」の規模が「約20倍」にまで膨らんだという事実が理解されるとともに、「日米欧の財政破綻」という「歴史上、初めてとも言える非常事態」が発生することが想定されるのである。別の言葉では、「2008年のリーマン・ショック」以降、無理に無理を重ねた「世界の金融政策」が、行き詰まりを見せることが予想されるのだが、このことは、いわゆる「リフレーション政策」という「中央銀行のバランスシートを大膨張させることにより、国債などの金融資産を買い支える」という方法のことである。
その結果として、現在では、目に見えない「二つの金融ツインタワー」が、世界的にそびえたっているのだが、具体的には、「1000兆円を超える日米の国債残高」であり、かつ、「2.8京円と1.8京円の残高にまで膨らんだ英米のデリバティブ」のことである。そして、これから起きることは、「金融のメルトダウン」という「デリバティブや国債の価格崩落」でもあるようだが、現時点で残された政策は、「最後の貸し手」である「世界各国の中央銀行」が、「紙幣の大増刷により、借金をすべて返済する」という方法しか存在しないのである。
つまり、歴史上、頻繁に繰り返されてきた「古典的な解決策」が、今回も、再び、繰り返されようとしているのだが、今回の問題点は、「文明法則史学」が指摘するような「東西文明の交代」であるとともに、「1800年頃から始まった資本主義の終焉」ということである。別の言葉では、「ハイパーインフレにより、現在の『お金』が、急激に価値を失う」という状況が想定されるのだが、「終わりは始まり」という言葉のとおりに、その後から、「お金に頼らない新たな文明が幕を開ける」ということも予想されるのである。そのために、できるだけ多くの人が、これからの「本当の金融混乱期」を無事に乗り切り、その後、「次の時代が発展することに、世界中の人々が力を合わせる」ということを期待する次第である。(2012.12.8)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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