脱原発にかかわらずドイツは、今迄になかったような多量の電力を輸出
- 2013年 1月 14日
- 評論・紹介・意見
- グローガー理恵ドイツ脱原発電力
2012年、完全脱原発への途上にあるドイツでの電力輸出量が記録的な量に達しました。これはドイツにおける再生可能エネルギーのブームに起因するものと、シュピーゲル・オンライン(Spiegel Online)の記事「脱原発にもかかわらずドイツは、これまでになかったような多量の電力を輸出」は述べています。
また、ミュンヘン環境研究所(Umweltinstitut München)によりますと、今日、ドイツで生産される総電力量の25%を再生可能エネルギーが占めているそうです。これは、大変なスピードで再生可能エネルギーが促進されていっていることを示しています。
私が住んでいる小さなコミュニティーでも、地域レベルでの再生可能エネルギー開発が進められています。これは昨秋の話なのですが、土地の人々が協同で、この地域にあるゴミ捨て場を再生可能エネルギー発電所に変えるとの企画を発表しました。そして、一人当たりの最高投資額5000ユーロまでという条件で地域市民からの投資者を募集しました。そこで、このようなポジティヴな企画にぜひ自分も関わりたいと思った主人が、直ぐに「投資したい」との申し込みを提出したのです。しかし残念な事 に、「もう既に投資者が満員のためこれ以上の申し込みを受け入れることが出来ない」との返答を貰いました。結局は、次の企画が出るまで「Waiting List」に名前を登録して待機することとなり、一先ずは一件落着となりました。
電力生産・供給の地域化は大手電力会社が一番恐れていることです。このような変革が進んでいけば、電力会社は自分達がこれまで独占してきた市場を失っていく事になるのですから...。
日本でも地域の人々が協力し合って自分達のためのエネルギーを生産・供給しようという動きが高まっていくことを願っています。反原発を掲げる政党も、ただ単に脱原発を唱えるだけではなく、(飯田哲也氏のようなエネルギー専門家がいるのですから)具体的な代替エネルギー政策 ・ロードマップを呈示していって、堂々と「脱原発は絶対に可能なのだ!」と確信をもって国民にアピールしていってほしいものです。そうすれば、もっと多数の日本市民からの信頼・支持を勝ち得ることが出来るのではないでしょうか?
原文へのリンクです。:
概説:脱原発にもかかわらずドイツは、これまでになかったような多量の電力を輸出
Spiegel Online記事(2012年11月9日付)
筆者:「manager-magazin.de 」編集者ニルス-ヴィクトル・ゾルゲ(Nils-Viktor Sorge)
脱原発にもかかわらず、2012年におけるドイツの電力輸出量が記録的な量に達した。この原因はエコエネルギーのブームにある。しかし冬における電力供給状況は違ってくる可能性があり、電力不足が生じ得る恐れもある。
ハンブルグ - ドイツはこれまでになかったような多量の電力を近隣諸国に輸出した。「manager magazinオンライン」に掲載された記事は、*連邦エネルギー産業・水道業協会(Bundesverband der Energie-und Wasserwirtschaft)から出た数値を基にしたものである。
2012年の最初の9月間に、ドイツから12.3兆ワット時の余剰電力量が国境を越え輸出された。この電力量は、現在持続的に電力供給している大規模な発電所の2基分の出力容量に相応する。
その前の年、2011年での同期間においては、連邦統計庁によればドイツは実質量で電力を輸入していて、電力残量がマイナス0.2兆ワット時となっている。また同じ連邦統計庁のデータによれば、脱原発した年、2010年の1月から9月までの余剰電力輸出量は8.8兆ワット時である。
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ドイツにおける電力の輸入/輸出量(1月~9月)
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (年) 輸入(-)
(資料:BDEW,連邦統計庁)
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専門家達は、ドイツにおけるこのような進展は急速な再生可能エネルギー拡張に起因するものとしている。多量の電力が風力やソーラーによって発電されるため、電力取引市場での電力価格が低下する。「電力価格が低下することは、ドイツから近隣諸国への電力輸出量がより増えていくことに繋がっていく。」とBloomberg New Energy Financeの情報サービス、エネルギー市場アナリストのBrian Potsokowski氏は述べる。
冬の警告解除はない
連邦エネルギー産業・水道業協会(BDEW)の報告は、特にオランダへの輸出がドラスティックに増えたことを示している。BDEWの査定によれば、オランダにとってはドイツから輸出した電力価格の方が安かったため、度々、自国のガス発電所の稼動を停止させることがあるという。また電力供給者である**RWEも「マネジャー・マガツィン・オンライン」に、このような進展があることを認めている。RWEはオランダとドイツの両国において発電所を運営している。
RWEのスポークスマンは「我々はヨーロッパ市場の結びつきが益々密接になってきていることを観察している。」と報告した。この事はとりわけフランス、オランダ、ベルギー、ドイツに当てはまる。「関与している国々にある発電所がお互いの間で競争し合い、最も格安の価格を提供した発電所で電力が生産されることになる。」そして、低価格の電力を提供するのは、風力やソーラーパワー設備が増えてきており、ガス発電所よりも格安に電力生産する石炭火力発電所であったりすることもある。
BDEWは輸出過剰の主な原因として、ドイツの発電所施設の規模の大きさを挙げている。「ドイツの発電所運営者は供給を確実にするために、十分な出力容量を提供しなければならない。」とBDEWのスポークスマンは述べた。電力消費ピークタイムに供給の確実性を保証することになっている発電施設は、その時の市況に応じて、電力需要が少ないときも電力を生産し、そのような場合には電力が輸出されることになる。「これは何年もの間の周知の事象です。」とスポークスマンは言う。
しかし輸出過剰が多いからといって、冬季に起こり得る電力不足への警告解除に繋がることにはならない。ドイツ連邦ネットワーク庁によると、太陽が照らなかったり風が吹かなかったりする特に寒い日々には、電力供給を所謂「***コールド・リザーブ(待機予備力)」に依存することになると謂う。オーストリアにある発電所(複数)も、この「コールド・リザーブ」に含まれる。
以上
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*連邦エネルギー産業・水道業協会(Bundesverband der Energie-und Wasserwirtschaft)は仮訳です。
**RWE:RWE AG(アール・ヴェー・エー電力会社)は大手エネルギー会社。E.ONに次ぐドイツ第2位の電力会社。ドイツ国外では中欧、イギリス、米国で電力・ガス・水道会社の大型買収を進め世界有数の公益事業会社となった。
***コールド・リザーブ(待機予備力):突発的な事象(設備故障による急な発電量低下や、急激な気温変化による需要変化など)に対応できるように、すべての発電所をフル出力にせず、いくつかの発 電所で出力に余裕のある状態にしておいたり、いつでも起動できる発電所を決めて、これを待機予備力として確保しておくこと。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1140:130114〕
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