安倍首相、米国に「集団的自衛権見直し」伝達へ
- 2013年 1月 17日
- 時代をみる
- 池田龍夫
安倍晋三氏は第2次内閣組閣後、矢継ぎ早に新政策を発表しているが、「集団的自衛権」容認の動きについて関心が高まってきた。首相は1月13日朝、NHKの番組に出演し、オバマ米大統領との日米首脳会談で、集団的自衛権の行使を禁じている憲法解釈の見直しを加速させる方針を伝える考えを明らかにした。そのうえで「2月以降に開催予定の首脳会談に臨み、集団的自衛権行使で日米同盟がどう変わるのか、地域がどう安定していくのかを議論したい」と意欲を示した。
この番組は毎週日曜朝、「時事問題」について要人を招いて討論する1時間番組。この日は約1時間延長して各党代表から個別に意見を聞くスタイル。最初に登場した安倍首相は経済・防衛・教育改革などについて30分余熱弁を揮った。相変わらず具体策に欠ける内容だったが、「集団的自衛権」についてのみ、確信に満ちた語り口だった。米大統領への〝おみやげ〟に違いなかろうが、こんな国家的大問題を米国の関心をひくために発言するとは、権力の乱用であり、独裁者的姿勢むき出しである。
公明党が難色を示し、国会論議もしない独断
連立を組んでいる公明党との意見調整をしなかったばかりか、国会での議論もせずに米国に提言するとは言語道断。議会制民主主義国家を冒涜するものではないか。
同番組に2番手で登場した公明党・山口那津男代表は、安倍首相が憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使を目指していることに重ねて反対する考えを示した。「領土、領空、領海外で武力行使を認めることにつながる。変えるのであれば歯止めがなくなることについて十分な議論が必要だ。にわかに変えるべきではない」と指摘した。自民党が主張する国防軍創設などの憲法改正に関しても重ねて自重を求めた点が注目される。
安倍首相は、読売・東京(中日)・日経・産経各紙の単独インタビューに応じているが、NHK出演の媒体力は大きかったと思う。安倍首相にとっては、公共放送を通じて自民党をPRする格好の機会ではなかったか。
公共放送を通じてPRとは…
本欄で天野勝文氏が、安部インタビューの過剰さに疑問を投げかけていたが、同感である。日本新聞協会か内閣記者クラブ会見をもっと充実させて、少数党を含めた公平な討論を企画できないだろうか。7月の参院選にらみで躍起な自民党の主張が幅を利かすようでは、政治報道のバランスを欠くことが心配だ。
公海上の米艦支援も検討課題
なお、産経1月15日付朝刊が「政府が集団的自衛権の行使容認について、遠距離の公海上にいる米艦船が攻撃を受けた場合でも自衛艦が防護できるよう検討する方針を固めたことが14日、分かった。安倍晋三首相の方針を受けたもので、米領グアム島などが攻撃を受けた場合の自衛隊による米軍支援なども検討課題に上がっている」と報じていた。看過できない大問題だと思う。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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